Stage55:2063/01/26/21:48:35【-0002:11:25】
指定座標は、大きな岩のごろごろした荒野だった。そこには既に別の国家のメンバーが到着していて、作業を進めている。
その中には、最強プレイヤー一位のプレイヤーもいる。って事は、鉱物資源が豊富な【グランノーム】のプレイヤーとSEの人達か。
【シルフィーダ】のSE組みとプログラミングのできる人達が合流して、さっそく打ち合わせに入る。一応、俺も邪魔にならない範囲でのぞいてみよう。
それにしても、ここに来るまでがなかなか大変だった。
地味にモンスターのレベル帯が高いせいで、死なずに来るのに一苦労で。アイアンゴーレムでも、あんな面倒じゃなかったぜ?
もしかして、割と何もない僻地にいる高レベル帯のモンスターって、こういうシステム管理関連のフィールドがあるのかも。
「並列接続されたホログラスとNoVAを制御する端末を、VR空間上に構成してる最中です。四ヶ国との回線はもう繋がっていますけど、向こうの準備はまだみたいです」
「うちは、こんなものを作ってました」
「……構造情報を書き換えて、情報端末への入力ポートを。この短時間でよく」
「優秀な後輩のお陰ですよ」
なんか、レヴィたんはユイさん連れて何かしてる。
「ユイさん、それって何?」
「あぁ、うん。フィールドデータの一部に干渉して、セキュリティーかけてる場所にアクセスする回線作ってるの。端末を呼び出す機能も、潰されてるらしくて」
その割には、ゲーム内でこっちが好き勝手やるのは想定してないのかね。
いや、そもそも、叔父さんのIDとPASSがないと、こんなに早く深層まで来られなかったんだから、これはこっちが完全に向こうの裏をかいた形なのか。
気付かれなければいいけど。
「そういえば先輩」
「なんだ、瑛太」
「ここの奥って行けないんですか? 何もないように見えますけど」
周囲は見渡す限りの荒野。俺達は数値で示された指定座標にいるわけなんだけど、システム中枢に続く通路なんて全然見えない。
「なら、行ってみろ」
レヴィたんがそう言うなら……。
SEの人達が向いてる方角に向かって、数歩あるいてみ、
「痛っ!?」
……なんかぶつかった。ナニコレ。
「そこがフィールドの端なんだよ。向こう側が続いて見えるだけで、もう壁なの」
おー鼻が……。
リアルなら鼻血が出てるとこだ。
恐る恐る手を伸ばしてみると、おぉ、確かに壁がある。
そんな風に俺が勝手に色々やってる間にも、作業は着々と進んでいく。
そういえばさっきからモンスターの姿が見えないけど、ここって湧かない場所だったりするのかな。
「よし、制御端末のオブジェクト化、完了」
「こっちも、あとちょっとでフィールドの書き換えが完了します。美夏、急ぐぞ」
「もうやってますよ! だから急かさないでください」
他のSEの人達も、忙しそうに何やってんだろ。とか思ってホロウィンドウをちらっと見てみたけど、凄まじい量のソースコードが開いてあるだけで、全然わからん。
「あぁ、ここからシステム中枢にアクセスできへんかなぁとか、それがあかんかったとしてもセキュリティーにアクセスできへんかなぁとか、あと外部との回線が確保できひんかなぁとか、色々試しとるんよ」
同じ【シルフィーダ】から来たプレイヤーが、頭をひねらせてる俺に説明してくれた。
「すいません、邪魔しちゃって」
「えぇって。気分転換も必要やろ。いい加減、頭疲れてきたしな。お話ししながらやろうや」
まあ、本人がそう言ってくれるなら……。
にしても、みんなタイピング速いなぁ。SEって、あれくらいできなきゃ務まんないのかなぁ。
「自分、ディレクターさんの甥っ子なんやって?」
「はい、まぁ。それで、バイトって事でけっこう最初の内から。必殺技スキルのモーションとかも、俺の案がけっこうあるんですよ」
「へぇぇ、そらすごいなぁ」
「でも、バグ取りは大変でしたよ」
でもまさか、またログアウトできなくなるとは思わなかったけど。
あの時は、外からログアウトさせてもらってなんとかなったけど、今回はそうもいかない。
しかも、タイムリミットは残り二時間。
システム中枢のエリアはこの壁のすぐ向こう側にあるから、時間的に見ればまだ余裕があるけど、悠長に構えていられる時間でもない。
それに話によれば、一番時間のかかるのがこのセキュリティー突破。
一日ごとに十六桁のパスワードがランダム生成されるらしく、それを出力するには仮想と現実の両方からアクセスしないといけないんだとか。
ここ最近、迷惑行為やチート行為に加えて、ゲームデータ以外にも社内データまでクラックされて流出させられる事件が増えてるからって、これは厳重すぎだろ。
使うなら、社内データの方に使うべきだって、これ。
「お、他んところも来たみたいやね」
言われて俺は、背後を振り返る…………んだけど、見えない。
「自分、夜間戦闘とか、長距離支援ばっかしとったけ、索敵スキルが高いんよ」
「あぁ、そうですか」
索敵スキルって事は、ものすごく遠くまで見えるのか。
目を細めて、そのままじぃぃっと地平線の向こう側を注意して見ていると、土煙が上がったように見えた。
そして、
「【サラマンデール】? それとも、【ウェンディーヌ】のか?」
「いや。人数から考えて、二国一緒やろ。とりあえず、これで全員や」
恐らく、このサーバーでは空前絶後となる、最強の複合パーティーが形成された瞬間だった。




