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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase06:Play the myself , as the melody of Fortissimum
55/62

Stage54:2063/01/26/21:00:16【-0002:59:44】

From:レイモンド・アイファルマ

Sb:全同士達へ

───────────────────────

 こんばんは、同士諸君。いや、まだ同士ではな

かったな、失礼した。宴の開催の前に余興を用意

したのだが、楽しんで頂けたであろうか。運悪く

死んでしまったプレイヤーの方々には、死という

ものを体験してもらっている最中だ。命というの

は、たった一つしかない大切な物だからね、それ

をわかって欲しい。

 それでは三時間後にまた。君達を宴の会場たる

真なる楽園(エデン)へと招待できるよう、準備を整えてお

く。君達も、存分に楽しんでくれ。

───────────────────────




 ある意味、予想通りと言えば予想通りの展開だ。

 なるほど、死んで真っ暗な空間に放り出された連中が、電話は使えないのにメールだけは使えたのは、このメールを配信したかったからか。

 しかも今度は前と違って、ホログラスに向けてメールを……。

 ユニコーンスタジオのVR空間にある個人情報管理区域に侵入して、登録データを引っこ抜いて来たってか。

「くそっ! どうにかできないのか!」

「でも、どうやって繋いでる連中を一気にやるんだ?」

「いくらでもあるだろ。脳の許容範囲を超えた電気信号を送るとか」

「どこの映画だよそれ」

「そういや、最近リメイクされた昔の創作物に、そんなのあったなぁ」

 現実味がなさすぎて、みんな呆然となっている。まるで、他人事みたいだ。

 俺だってそうだ。残り三時間で脳を焼かれて死ぬとか言われたって、イマイチ実感が湧かない。

 ただ、どうにかしなきゃって気持ちだけはある。

 現実(リアル)だとただのダメ学生の俺だけど、仮想(ネット)の中ならやれる事もあるはずだ…………たぶんだけど。

「このままやと、明日にはブレゴスユーザー、大量死亡の記事が出回る事になりそうやね」

「そうさせないためにも、どうにかしねぇと」

「俺なんか就職決まったばっかりだから、頑張らねぇとな」

「いいなぁ。こっちはこれからだってのに」

 本当に、どうにかしないとな。

「あの、いいですか?」

 これまでほぼ無言を貫いていたラピスが、ちょこんと手を挙げている。

 何か、良い案でもあるのか?

「ええよ。なんかええ考えでも浮かんだん?」

「いいえ、そうではないですが。外の人達、どうにかしませんか?」

 ラピスが扉を開けた途端、阿鼻叫喚のって言葉がぴったり合うような怒号と悲鳴が聞こえてきた。

 確かにこれは、とんでもないパニックになってるな……。

「まず、これからの方針と対処法を、残ってるプレイヤー全員に伝える必要がありますね」

 苦笑を浮かべ、職員の人は肩をすくめて見せた。




 全員の集まっている広場に到着すると、まあ予想通りの光景が広がっていた。

 暴動まで発展していないところが、日本人らしいと言えばらしいかも。

 登録ユーザー人数は約三〇万人だから、一サーバー辺りのユーザー数は約三万人。その内常に四割から五割の人が活動中らしいから、イベントに参加していたのは最低でも一二〇〇〇人。一国辺りなら三〇〇〇人はいる計算になる。

 だが、接続情報を盗み見したところ、既に半数近くはブラックアウトの状態らしい。

 って事は、さっき広場にいた人達は、千人くらいはいるって事か。そんな多くは見えなかったけど。

「それでは、最終確認を行います。各国の代表者は、送信したメール内容を生き残ったプレイヤー達に伝えてください」

 他の三国のプレイヤー達とも回線を繋ぎ、職員の人が全員に向かって話し始めた。

 各国上位陣のプレイヤー全てに、ホログラスからメールが送られる。

「我々職員を含めて、SE(システム・エンジニア)の方やプログラムに詳しい人が居て助かりました。外部へ助けを求められない以上、自分達でどうにかするしかありません。目標は内部からシステム中枢にアクセスして、接続されているプレイヤーを全員強制ログアウトさせる事。そのための算段も既に立てています。後でメールで送りますから、各自で確認してください」

 そう言うと、職員の人は広場から来たプレイヤー──最強プレイヤーフォルティッシモ・ディエチの人達と、そのパーティーメンバーを加えて、パニックを起こしているユーザー達をなだめに向かった。

 やる事のない俺達や残りのメンバーは、それぞれのできる事をやっている。と言っても、俺達パソ件にできるのは、待ってる事だけだけど。

 あ、いや、レヴィたんは違ったか。

「美夏、ちょっと手伝ってくれ」

「は、はい!」

 なんか、そうでもなかったらしい。

 何もしてないのは、俺とライトフォーゼとラピスの三人だけだ。

 ユイさんはレヴィたんに説明を受けて、ホロウィンドウをにらみながらホロキーボードを素早く打ち込んでいく。

「なんか、俺達にもできる事ないのかな」

「こんな事なら、オレ、プログラミングの勉強してたらよかった」

「大丈夫ですよ。ライトさんの頭で理解できるような、簡単なものでもないので」

「ラピスちゃん、こんな時まで辛口なのね。オレ悲しい」

 そんな風に、周りのプレイヤー達が真剣に作業を行っている中、バカやってる俺達三人。

 あんま大声で話すなよな、迷惑になるから。

 そう注意しようとしたら、視界の端に新着メールのアイコンが点滅した。

「さっさとメール見とこうぜ。気になるしな」

 二人に促しながら、メールを開く。

 するとメールに付随して、実行型ファイルが一つ添付されていた。

 ファイル名は、“Master ID Addition patch.exe”。マスターIDをなんかするパッチか。

「なんか、マスターID追加パッチ? 瑛士さん、これってなんですかね?」

 あぁ、“Addition(これ)”って追加って意味なのね。

「読めばわかるだろ」

 咲希の英語力に打ちひしがれながらも、本文に目を通す。

 そこにはシステム中枢に至るまでの手順が、事細かに記されていた。

 通常のユーザーIDだと、まず管理区域やその近くのフィードには入れないらしい。

 それを誤魔化すのが、叔父さんのIDとPASSを使って作ったこのパッチみたいだ。

 これでまず、システム中枢近くまで侵入。その奥のセキュリティーの突破は、SEの方々が総掛かりで行う。

 そのために、残っているプレイヤー全員のホログラスとNoVAを並列接続して、解析に使うって……そんな事できるのかよ。

「なあなあ、この、全プレイヤーのホログラスとNoVAを並列接続って…………」

「原理は簡単ですよ、ライトさん。一回の計算による処理量が増えるんで、演算が早くなるっていう。ホログラスもそれなりの処理能力がありますし、大容量の計算が必要なVRゲームハードは、並列処理能力が一般的なデスクトップPCより圧倒的に高いですから。しかもNoVAは、歴代VRゲームハードの中で最強スペックを持つハードです。それが数千個集まれば、下手なスパコンより高スペックの演算装置になります」

 処理能力の暴力と、SEの方々のテクニックに任せるしかないわけね。

 並列接続のためのプログラムは、もうすぐ接続している全ユーザーに配布するようだ。

 方法は原始的だけど、P2Pで繋いで配布。全員繋ぐとさすがにホログラスの処理がやばくなるから、説明に行ってる人が近くの人に渡して、渡された人がまた近くの人に渡してを繰り返すみたい。

 そして、ブラックアウトしてる友人がいる人は、そこからホログラスのメールで送信。

 もしかしたら、インストーラーが起動しないかもしれないけど…………。

「セキュリティーを突破後、システム中枢区画に侵入。システムの内側から、全プレイヤーの強制ログアウトを行う。シンプルでいいですね」

「ただし、インフェルス過激派が潜伏している可能性も考慮して、SE達に護衛をつけるってあるな。プレイヤーズランキング上位百名と、そのパーティーに所属する者に任せたい、かぁ」

「そりゃ、強制はできないだろ。ランキング上位だからって、全員が戦い慣れしてるわけじゃないしな。ライトみたいに」

「お前に言われると言い返せねえじゃんか」

 それに、単にレベルが高いだけじゃ、上位にはなれない。回復支援とか、非戦闘系スキルの習得や向上とかで入ったプレイヤーだっているだろうから、そのための措置でもあるんだろう。

 それに、待ち構えているのがインフェルス過激派だってわかっていたら、尚更やりたくないプレイヤーだっているだろうし。

 俺は前回の借りがあるから、例えいたとしても行くつもりだ。楽しむためのゲームで、人を苦しませやがって。絶対に許さねぇ。

 それから、もう一通のメールが届いた。

 システム中枢へクラッキングをかけるSE班と護衛のプレイヤーは、“Master ID Addition patch.exe”をインストールした状態で、指定の座標までただちに移動を開始しろ、か。

 “Master ID Addition patch.exe”が配布されたプレイヤーが、SEと護衛係なわけね。

「美夏、残りの作業はポイントについてからだ。急ぐぞ」

「わかりました」

「うっし、オレ達も出発だ」

「ライトさんより役立ちますから、大丈夫です」

「途中で死んだりするなよ。笑えないから」

 レヴィたんの移動魔法で、俺達は指定座標に一番近い村まで飛んだ。

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