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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase06:Play the myself , as the melody of Fortissimum
53/62

Stage52:2063/01/26/20:17:46【-0003:42:14】

『どうした瑛太?』

 意外にも、レヴィたんはワンコール目で電話に出てくれた。

 てか、もう普通に名前で呼んじゃってるよ。

 まあ、今はそんな事言ってられる場合でもないか。

「先輩、さっき運営から変なメールが届いたんですけど」

『どんなメールなんだ?』

 メールを視界スクショで撮影し、P2P接続で画像データを送りつけ、そして一言添える。

「それたぶん、俺の叔父さんの、ブレゴスのIDとPASSです」

『…………なんでそんなものが運営から……いや、だからなのか』

「あの、先輩?」

 何やら、他にもプレイヤーがいるらしく、ちょくちょく誰かの声が入ってくる。

『悪い。今情報を整理してる最中でな、それが済み次第他のプレイヤーにも状況説明をするつもりだ』

「すんごい悪いのだけは、なんとなくわかりますよ」

『よし、お前もこっち来い。確か、開発にも多少携わったんだろ。俺達の知らないような情報も、持ってるかもしれんしな』

「あの、来いって言われても……」

『俺が迎えに行ってやる。ついでに、他の三人も一緒にな。さすがに、咲希に二人を任せるのは気が引ける』

「わかりました」

 松井先輩に一方的に連絡を切られ、俺は三人を見やった。

「なんか、一部のプレイヤーの人達が集まって、情報交換してるらしい。俺も一応、バイトで開発に参加してたから来いってさ」

 深刻な事態を察して、三人とも表情が険しくなる。

「一部のプレイヤーって、関係者でもいるんですか? 瑛士さんもそうですし」

「さぁ。そこまでは。向こうに行ってみないとな」

「そう、ですよね」

 あぁ、さっきから一人だけラピスの雰囲気が違うと思ってたけど。

「そう焦るなって。お前の頭には、俺達も期待してんだから」

 こいつ、なんだかんだて役に立ちたいのか。

 いつもの感じから言うと、俺がインフェルスの過激派に襲われていたのに、何にも手助けできなかったのが悔しかったのかな。

 なんか知らんけど、尊敬されてるみたいだし。

 知らず知らずの内に、ぽんぽんとラピスの頭を撫でていた。

「速水……先輩」

「よーし、全員そろってるな」

 なんだかちょっとラピスが感激気味にうるうるしているところに、声音だけは幼女の先輩がやって来た。

 アバターの見た目のせいで、全然場が締まらないけど。

 でも、俺達らしいと言えば、俺達らしいかもしれない。

「待たせちゃ悪い。遅れるなよ」

 そう言うと、レヴィたんはけっこうな勢いで走り始めた。

 魔法使い特化のくせに、なかなか移動性能は高いのな。

 俺達はレヴィたんに遅れないよう、その場を移動した。




 レヴィたんに案内されたのは、すぐ近くの宿屋だった。

 宿屋と言っても、数十人の団体さんがお泊まりできる規模の施設で、会議室のような場所もある。

 三人がレヴィたんに案内されたのは、まさにそんな場所だでた。

 中には十数人のプレイヤーがいて、壁やら床やらを引っ剥がし、そこから伸びたコードがホロウィンドウに繋がっている。

「すいません、ちょっと人数が増えてしまいましたけど、コイツがブレゴスの開発にバイトで参加した後輩です。瑛太、学生証。お前らも」

「は、はい」

 言われて俺達は、ホログラスに保存してある学生証のデータを見せた。

「速水瑛太といいます」

「柏木琢磨です」

「三枝美夏です、よろしくお願いします」

「真鍋咲希」

 視界共有モードで全員に繋ぎ、データを送りつけた。

 すると他のプレイヤーからも、電子名刺やら、学生証のデータが送られてくる。

 松井先輩のような趣味でプログラムを勉強している高校生、情報を専攻している高専生や大学生、本職のSE(システム・エンジニア)なんかもいる。その中にはなんと、ユニコーンスタジオの職員も混じっていた。

「今は、どうにかして外部との連絡手段を確保しているところだ。内部からも修正ができるよう、見えない場所に端末が用意されてるらしい。この会議室も、その内の一つなんだと」

 手短に説明を終えたレヴィたんは、近くのホロウィンドウに付き、作業を再開した。

「君、速水くんでいいんだよね?」

「確か、ユニコーンスタジオの」

 さっき電子名刺をくれた人が、俺に話しかけてきた。

「君の叔父さんって、もしかしてディレクターの速水裕三さんかい?」

「はい、そうですけど」

「送られてきたIDとPASSっぽいってやつ、もう一度見せてもらっていいかい?」

「はい、どうぞ」

 視界共有で、さっきレヴィたんに送った視界スクショを見せる。

 すると職員の人は、いきなりホロキーボードをカタカタと打ち始め、

「このIDとPASSで試してくれ」

「おぉ!」

 テキストデータを即座に別の作業をしていたメンバーに送った。

 すると、

「よっしゃあ! セキュリティー突破したぞ!」

「でも、通信量がかなり少ないな」

「せっかく繋がったんだから、そう言うなって」

「バカ。まだユニコーンスタジオのローカル回線に繋がっただけだ。外部との回線は繋がってない」

 ところどころで、歓声と注意を促す言葉が上がる。

 ようするに、外部との通信は不能な状態から、ユニコーンスタジオ内に限り、通信が回復したらしいけど。

「まず、社内の状況を調べます。こちらは接続状況を調べるので、みなさんは監視カメラの情報を吸い出してください。あと、一人は外部との回線回復もお願いします」

 職員の人は作業中の人に次々と指示を出し、レヴィたんも含めた全員がホロウィンドウに目を走らせ、ホロキーボードを連打する。

 来たのはいいけど、全然する事がない。

 まあ、居づらさで言えば、さっきまでよりかなりマシだけど。

「なあなあ、速水クン? ちょっとええ?」

「なんですか?」

 おっと、お呼びがかかった。

「うちら今、館内のカメラ映像の情報中抜きしてきてるんやけど、この映像どこかわかる?」

 四人の人が、リアルタイムの監視カメラ映像を大量のホロウィンドウで表示してきた。

 強引な手段で映像データを盗み見しているからか、けっこうノイズがひどいけど、見えないレベルでもない。

 確か、前にもらった会社パンフレットのデータに、オマケで建物内の見取り図を付けてくれてたっけ。

 ホログラスのデータフォルダに検索をかけ、ファイルをサルベージ。ゴミ箱の中に残っててよかったよかった。

 その見取り図を切り取り、視界共有モードで拡大表示。

 更に描画ソフトも起動させ、拡大した見取り図に何十本も線を追加。その先にぶっこ抜いてきた監視カメラの映像を置いていくと……、

「これはなかなか」

「おぉ、見やすくなった」

「ありがとね、速水くん」

「ほんま、おおきに」

 なかなか立派な監視地図的なものが完成した。カメラの向きや死角、部屋などの配置もよくわかる。

 ただまあ、どこかおかしい。というか、どこもかしこもおかしい。

「こらぁ、どないなっとんねん」

「人、誰も通ってませんよね」

 今映っている映像は、全て通路のものなんだけど、その全ての映像に人が映っていない。

 営業時間は確かに過ぎているけど、いつ不具合が起きてもいいように夜勤の人もいるはずなのに。

 しかも今日は初めての大規模イベント。普段よりメンバーを増員して、対処に当たるのが普通だよな。

 だったら、夜勤の人達ってどこにいるんだ?

「すいません、室内の映像ってありませんか?」

「あぁ、それなら回線がちょっと違うっぽいから、別のやつらがやってる。ほれ、あそこ」

「セキュリティーガチガチに組んでるから、別の回線からの接続を誤魔化すプログラム作ってたんだよ。どこかはわからんが、今まわす」

 見取り図と廊下の監視カメラ映像の上に一枚、大きなホロウィンドウが形成される。

 映っているのは…………消灯されて真っ暗な部屋。

 カメラの番号は右下に表示されてるけど、これだけじゃどこの部屋かもわからん。

「待ってろ。順番に出していく」

 カチッ、カチッと映像が切り替わる度に、光の加減がちょっとずつ変わるけど、どの部屋も真っ暗なのには変わりない。

 だけど不意に、映像の明度がパッと明るくなる。

 そこには俺のよく知る、でもなんかすごく悔しそうな叔父さんの姿だった。

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