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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase06:Play the myself , as the melody of Fortissimum
51/62

Stage50:2063/01/26/19:42:40【-0004:17:20】

 必殺技スキルと魔法でバイルゴーレムにヒットアンドアウェイを繰り返している間に、説明は終わったらしい。

 ちらりと見やると、頷くラピスの姿がある。

 本当ならライトフォーゼと俺がやればいいんだけど、こればっかりは別のゲームで磨いた技だけに、やっぱラピスとじゃないと。

「ダンナーシュティーツ!」

 最後に一発、雷を纏った突きを股関節辺りにぶちこんで、ひとまず退却。

 あれだけ必殺技スキルと魔法使って、やっと二、三割くらいか。やっぱ、頭狙わないと無理だな。

 下がった俺と入れ替わり、左右から挟み込むように攻撃。でも、それまでに入れたダメージ量や盾的な役割を果たす装甲値を削ったのもあって、標的はまだ俺みたい。攻撃する二人を無視して、俺の方に突っかかってくる。

 でも、それだと二人が攻撃しやすいだけで、こっちとしてはありがたい。

 ライトフォーゼがバイルゴーレムの頭を殴ってくれるのが一番手っ取り早いんだけど、見た目の割に機敏な動きができるモンスターだけに、期待はできない。下手したら、即死でこっちが危うくなる。

 ラピスと立ててる作戦も相当アレだけど、そこはなぜか信用できるんだよなぁ。やっぱ、長年培ってきた信頼関係ってすごいんだなぁ。

「おらおら! こっちだこっち!」

「スプラッシュザンバー!」

 それから散々俺に攻撃を回避され、ユイさんとライトフォーゼからメッタ切りにされたバイルゴーレムは、ようやく標的を俺からユイさんに向けた。

 武器的にみればライトフォーゼの方がダメージが大きそうだけど、ユイさんの方がレベルも高ければ必殺技スキルや魔法を多用している分、与えているダメージは大きいってわけ。

 これでようやく、例の作戦に移れる。

 バイルゴーレムの目が向こうに逸れている内に、MPを回復しとかないと。

 周囲の敵にも注意しつつ、俺はアイテム一覧からMP回復ポーションを取り出して、一気に飲み干した。

 一本じゃ足りなかったか。なら、もう一本。

「瑛士さん、お疲れ様です。アンビレル」

「ありがと、ラピス。でも、本当に疲れるのはこれからだぜ」

 ラピスに攻撃による反動の痺れを回復してもらい、これで俺の準備は完了だ。ラピスの方も、MP回復ポーションを飲んで万全の態勢。

「ユイさん! ライト!」

 前で注意を引く二人に向かって叫ぶと、ギリギリで攻撃を回避しながらこっちを見た。そして同時に頷く。

 二人はバイルゴーレムが俺とラピスの方を向くように。向きを誘導する。

「ブーステッドザンバー!」

「トライスピアー!」

 そしてついに正面を向いたところで、ライトフォーゼが右足に超重量の大剣を振り降ろし、ユイさんは突きの三連撃を胴体に入れ、斜め後方にバックジャンプ。

 そのギリギリ内側の地面を、バイルゴーレムのスパイク付きハンマーが押し潰す。

 今だ!

「ラピス!」

「はい!」

 俺の少し後ろから、法衣を翻すラピスが尋常じゃない速度で突っ込んできた。

 俺からバイルゴーレムまでの距離は、目測で十メートル弱。普通なら届く距離じゃないけど、そこはゲーム。上手くかみ合えば、どんなことだってできる。

「いっくぇぇええええええええええッ!!」

 俺が指を組んで作った足場に、ラピスが右足を乗せた。そのドンピシャのタイミングで、力の限りラピスをバイルゴーレムに向かって放り投げた。

「どりゃぁぁああああああああああッ!」

 補正の入った筋力じゃなきゃできないけど、だからゲームの世界って楽しいんだよな。

「ライトニングフィンガァァアアアアアアアアアアアアアァァァァァアアアアッ!!」

 バイルゴーレムの頭部に向かって真っすぐ飛んでいくラピス。その手は直視するのができないくらい、赤く爛々(らんらん)と輝いていた。

「ふっ、私の右手に貫けないものはない!」

 そしてその右手は、深々とバイルゴーレムの顔面に食い込んでいた。

「────────────!!」

 バイルゴーレムが、声にならない悲鳴を上げた。

 HPバーが一気に一割以上も削れて、よろよろと足下もおぼつかなくなる。

 ここで追撃を加えれば!

「「ブーステッドザンバー!」」

 俺と同じ事を考えていたライトフォーゼと一緒に、正面から大威力の斬撃を叩きこんだ。

 すると完全にバランスを書いたバイルゴーレムは、驚くくらいあっさり倒れる。

 ラピスは飛びのきながら、穴の開いて弱点が丸見えになったバイルゴーレムの頭部に、ありったけの魔法攻撃を撃ちこんだ。

 今度は、俺達の番だ。

「ヴォーパルボルテッカー!」

「ヘビードラッツェ!」

「ウォースティッドシュティーツ!」

 それぞれが持つ最大威力の必殺技スキルを、容赦なく連続して叩き込む。

 二人の余波で入るダメージは。ラピスが回復魔法で回復してくれている。

 だが、体力とは別に、ガリガリと減っていくMPバー。本来は一瞬しか出さない必殺技スキルを継続し続けているのだから、反動の方もキツい。

 それでも、

「やったぁあああ!」

「はぁぁ、終わったぁ」

 バイルゴーレムを倒すのには成功した。

 ライトフォーゼとユイさんが、歓声を上げる。

 だけど、それはまだまだ早い。

 最終ゴールは洞窟の奥のゲートの、また更に向こう側にある魔城の最奥。しかもそこで、魔王を倒さなきゃならないんだから。

 ここはまだ、中間地点にすぎない。

「さて。残りをすり潰すぞ、ラピス」

「任せてください」

 バイルゴーレムをやったのなら、次に狙うのはもう一種類のゴーレムしかいないだろう。

「ラピス、フルメタルゴーレムって、どんくらい固いと思う?」

「少なくとも、うち塾の先生ほどじゃないと思います」

 二位のプレーヤーがいるパーティーが相手してるだけに、何か言われないか緊張はするけど。好奇心は抑えられない。

 まあ、いざという時は一番近くだったんで、とか言って乗り切ろう。

 というわけで、次の目標はフルメタルゴーレムだ。




 絶妙なタイミングを見計らいつつ、俺とラピスはフルメタルゴーレムに背後から襲いかかった。

「ライトニング・ジャベリン!」

「ブーステッドザンバー!」

 光の槍が背中から殺到したところへ、俺の一撃が加わる。

 ただ、バイルゴーレムとは何もかもが格が違う。今の攻撃だけじゃ、HPバーに変化があったようには見えない。

 ただ、自分でも思っていた以上に、歓迎ムードの感じだ。

「もう一パーティー加わった! 一気に畳みかけるぞ!」

 既に二つのパーティーが、フルメタルゴーレムの撃破に参加しているような感じだ。HPは残り二割を切っている。

 真っ先に斬りかかったのは、やっぱり二位の人だ。

 複数の刃をワイヤーで繋いだ特殊な剣を二本持ち、必殺技スキルの連撃が放たれる。雷光を帯びた刃が、これでもかと言うほどフルメタルゴーレムを傷付けた。

「────────!!」

 しかしフルメタルゴーレムも最後の抵抗だと言わんばかりに、全身を傷付けながら第二位へとタックルを見舞った。

 そちらはサイドステップでかわしたのだが、続いて放たれたストレートパンチへの反応が遅れてしまい、弾け飛んだ岩石がもろに入ってしまう。

「アレクス」

「ダンナースティーツ!」

 ラピスに移動補助の魔法をかけてもらい、俺は全力で飛び出した。

 バチバチと激しく雷光を放つエンシェントブレードを、フルメタルゴーレムの膝関節めがけて思いっ切り突き込む。

 魔法で増強された速度のせいで、腕の痺れはいつもの倍以上。でもそのおかげで、フルメタルゴーレムがよろよろとふらついた。

 そこへさっきの俺とラピスのアレを見ていたのか、新しく増えたパーティーの二人が、勢いよく走ってくる片方をもう片方が放り投げる。

 やや大きめのダガーが灼熱の炎を放ち、赤い放物線は見事にフルメタルゴーレムの頭部を直撃した。

 フルメタルゴーレムのHPが更にがくっと減って、ついに一割を割り、バランスを失ったフルメタルゴーレムの巨体がゆっくりと上を向いてゆく。

「やれぇぇえええええッ!!」

 ダガーを突き刺していたプレイヤーが、フルメタルゴーレムから飛び退きながら叫ぶ。

 地震のような震動を引き起こして倒れたフルメタルゴーレムの頭部に、無数の魔法攻撃が殺到した。

 その密度はと言えば、今までのプレイで一回も処理落ちした事のないNoVAでさえ、やや映像がカクツクレベルだ。一体どれだけの人が攻撃しているのか、想像もつかない。

 でもそのお陰で、

「よし、いよいよ魔城だ。遅れるなよ!」

 全てのゴーレムが一掃された。

 フルメタルゴーレムとバイルゴーレムが全て倒された瞬間、アイアンゴーレムも全てポリゴンになって消失した。

 これで、ようやっと本番の魔城フィールドに行ける。

 付近にモンスターがいないのを確認して、アイテム一覧を開いた。

 ポーション類はまだ余裕があるけど、せめてHP回復ポーションくらいは節約しておこう。そういうわけで、MP回復ポーションを出す。

 すると画面にいきなり、ホログラス経由で松井先輩(レヴィたん)から電話が入った。

 電話に出ると、いつものパソ研のメンバー以外にも十人ちょっと、他のアバターの顔が映し出される。

 何だ? 全体に通知するような事態でもあったのか?

『みなさん、進軍は一時停止してください。なんかヤバい事になってるっぽいので、全員すぐに【シルフィーダ】まで戻って。また、これを近くのプレイヤー全員に知らせてください。できるだけ早く。それから、絶対に死なないでください』

 謎の連絡はすぐに消えると、パーティーの一部が反転して、来た道を逆走し始める。

 いったい何が?

「瑛士くん、どうする」

「どうしますか、瑛士さん」

「どうするよ、瑛士」

 レヴィたん以外の三人がすぐに集まってきて、俺に聞いてくる。

 これはアレか。俺が決めちゃってもいいのか?

「なら、戻ろう。絶対に死んじゃだめなら、絶対に死なない場所で待ってよう。無視して進んで、変な目に遭いたくない」

 そう言って、俺はペガサスの靴を取り出した。

 それにレヴィたんは逆走したメンバーの中にいたみたいだし、【シルフィーダ】で待機していれば詳細を聞けるだろう。

 それにレヴィたんと言うか──松井先輩のあんな切羽詰まった声なんて、初めて聞いた。

 言い知れぬ不安が、俺の中でだんだん大きくなっていた。

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