Stage49:2063/01/26/19:31:38【-0004:28:22】
最前列に戻ると、俺は十位の人と入れ替わるように、引き付けていたモンスターを必殺技スキルでぶっ飛ばした。
これも、ギリギリまでHPを削ってくれていたお陰だな。
「HPはまだ大丈夫ですか?」
「まだなんとか。ただ、MPがあと少ししかなかったから、ちょうどよかったです。ありがとうございます」
それを聞き終わると、俺は前の方で苦戦中のグループに助太刀に入る。
スカーレットアント。クリムゾンアントよりも上の、凶暴なアリのモンスター。
そいつの顎を思いっきり蹴り上げ、一番手前の足を両方とも斬り伏せた。
スカーレットアントの体が前に倒れたところで、別のプレイヤーが頭を貫いて倒す。
だが、まだ五体残っている。
「エレクトルボゥ!」
「グランアイシクル!」
「ウォンディーナ・ジャベリン!」
俺が麻痺効果のある雷撃、他の一人が足元から氷柱を突き出して動きを封じ、完全に動きが止まったところへ水の槍がこれでもかというくらいにスカーレットアントを穿った。
「どうも」
「サンキュー」
「いえいえ」
さて、これで付近のモンスターは一掃できたはずだ。
振り返ると、追い上げてきたラピスが、前衛陣のプレイヤーを回復して回っているのが見える。
他の国の状態も気になるところだけど、どうにかして見る方法ってないもんかねぇ。
「よしよし。それじゃ、本丸に乗り込もうじゃないの」
前衛陣の一人が大剣を握り直し、洞窟に向かって走り始めた。その他の前衛陣も、HPを回復し次第走り出す。
俺も大きく背伸びして全身の筋肉をほぐし、最前列を目指して駆け出した。
だんだんと近付いてくる洞窟の穴。
しかし先頭のプレイヤーがそこへ踏み込む直前、いきなり地面が揺れ始める。
そして次の瞬間、地面からいきなり生えてきた腕に、先頭プレイヤーが押しつぶされた。死亡を知らせるマーカーが一瞬だけ浮かび上がって、即座に消える。
レベル上げでかなりお世話になったマッドハンドみたいな、腕のモンスターってわけでもなさそうだ。
「ふふ、腕が鳴る」
二位のプレイヤーが、剣を二本構えてほくそ笑む。
その視界の先で、腕から下がもりもりと地面から這い出った。
表示された名前は、フルメタルゴーレム。全長三メートル以上、金属光沢が特徴の、いかにも固そうなゴーレムだ。
しかも、
「これ、あかんやつやん……」
他のプレイヤーも、苦笑い。
なにせ、フルメタルゴーレム以外にも、バイルゴーレム──ブリガンゴーレム系モンスターが計八体もご登場ときたものだ。
しかも更に俺達を包囲するように、プレイヤーサイズのフルメタルゴーレム──アイアンゴーレムがワラワラ地面から生えてきた。
「ラピッド・シューター!」
「ブリーズ・ハンダリー!」
「バーニング・バルグ!」
だが、悠長にその様子を見ているプレイヤーはいない。魔法使い達は容赦なく、姿も現していないゴーレム達に向かって魔法砲撃を放った。
今までよりはるかに近い着弾に、前衛陣は爆風にあおられる。
でもさすが、通常クエストのボスクラス。多少HPは減っていても、あれくらいじゃびくともしない。
「魔法砲撃班を除いて、一時各人のパーティーに復帰しろ!」
「了解! ケツはうちのパーティーが受け持つ!」
「なら、うちらは側面や!」
「最前列! デカブツは任せたぞ!」
各所で飛び交う怒号と叱咤のかけ声。
第二位を擁するパーティーはフルメタルゴーレムへ。
そして、俺はと言えば、
「今度はキッチリ決めてやるぜ!」
「ライトくん、出過ぎると死ぬからね。レベルも考えて」
「まあ、ライトさんには元から期待してないです。瑛士さん、補佐は私に任せて、思う存分暴れてください」
ライトフォーゼ、ユイさん、ラピスの三人と一緒に、バイルゴーレムを一体担当っと……。
「注意は俺とラピスで引きつける。二人は周辺の警戒と、側面からゴーレムを攻撃してくれ」
「しゃあ、任せろ!」
「わかった」
「了解です」
と、その時、ブレゴスの方からメール着信を知らせる音が。
こんな時にどこのバカだよ、見られるわけないだろうが。
「ボルトストライカー!」
装甲貫通の効果がある雷系の魔法の呪文を唱え、俺はバイルゴーレムに突撃した。
バイルゴーレムとの戦闘経験はあまりないけど、動き自体は他のブリガンゴーレム系と共通している。巨体故に動きが緩慢で、攻撃自体は当てやすい。ただし、その体はバカみたいに防御力が高いときている。
特徴としては、防御力はもちろんだけど、手がスパイク付きハンマーになっていて、攻撃力も高く即死もあり得る事。
進軍してきた距離も考えれば、絶対に死ねない。
「はッ!」
雷撃を一発受けて注意が向いたところへ、すれ違い際にエンシェントブレードを振るう。
手応えは固いが、確かに今までとは違う、削れてる感覚があった。
さすが、激レアドロップアイテムだけある。
「トライスピアー!」
のっそりとした動きで振り返ってくるバイルゴーレムの背中へと、更に三連撃の突きを見舞い、大きくバックジャンプ。直前まで俺の居た位置に、スパイク付きのハンマーが突き刺さる。
「ブーステッドザンバー!」
「スプラッシュザンバー!」
背中が、がら空きになったところへ、ライトフォーゼとユイさんの攻撃が加わった。
ただでさえ威力の高い大剣の攻撃力が更に増幅された斬撃と、刃から超高密の水流を吹き出して敵を斬り裂く二つの必殺技スキル。
そして二人がすぐにその場から退いたところへ、
「ライトニング・ジャベリン!」
ラピスの魔法が炸裂した。視界を埋め尽くすほどの光の槍が、バイルゴーレムを撃ち貫……いてはいないな。
それでも、ダメージはかなりのものだ。
今の一連の攻撃だけで、数ドット減った。先日のエンシェントドラゴンの事を思えば、軽い軽い。
バイルゴーレムの頭部がぐるりと回って、三人の方を攻撃しようと体の向きを変える。
させるかよ!
「ブーステッドドライバー!」
今まさに攻撃目標を変えようとしていたバイルゴーレムの腹めがけて、超高威力の突きを放つ。
腕への反動もすごいけど、ゴーレムも大きくバランスを崩した。
「ヴォーパルボルテッカー!」
そこへエンシェントブレードを突きつけたまま、取得している中では最大級の雷系攻撃を使う。
零距離から雷を纏った強烈な突き攻撃に、バイルゴーレムのHPはガクッと減った。
ただし、俺の方も攻撃の余波で後方へと吹き飛ばされてしまう。
一瞬、腕がもげるかと思った。
「アンビレル」
いつの間にか近くまで来ていたラピスが、回復魔法を使ってくれる。すると不思議な事に、腕の痺れはきれいさっぱりなくなった。
「攻撃の余波とか、攻撃を防いだ時の痺れは、表記されないだけで数値化されてるみたいですね。こんな魔法があるって事は」
「らしいな。ありがと、助かった」
それなら、ラピスと一緒の時は多少の無茶はしても平気かもな。
あと今さらだけど、余波を受けて俺のHPもちょっとだけ削れてる。うん、HPが少ない時は、こっちも気を付けよう。
「それはそうと、さっさと転ばせて頭叩きたいな」
「そうですね。ずっとこれは、さすがに精神的に疲れますから」
腕を振り上げて突進してきたバイルゴーレムを、左右にわかれてかわす。
いくらなんでも、前みたいに大剣が偶然頭部を直撃する、ってのは無理だろう。
ブリガンゴーレム系のモンスターは、頭部には直接攻撃を加えなければスタン効果は望めない。
そもそも魔法攻撃でもいいなら、既に俺やラピスがやっている。
となると、どうやればあの位置を攻撃できるか、だけど……。
「ラピス、お前のスキルで、あの頭に攻撃通せるか?」
「ふっふっふっ。瑛士さん、この私がただの魔法使いに仕上げると本気で思ってるんですか? あんまりにも新しいスキル出ないんで、もちろん別のスキルにも手を出してますよ」
まあ、普通ならよくない事なんだけどね。
ただ、レベルも上がりにくくなってる状態を考えれば、わからなくもない。俺だって割と前から魔法系スキル育ててるし、そのおかげで、普通の必殺技系と魔法系の混合スキルも獲得できている。
もしかしたら、ラピスもそういうスキル持ってるのかも。
「なら、やるぞ」
「はい」
俺が適度な攻撃でバイルゴーレムの注意を引いている間に、ラピスは二人の元へ急いだ。




