Stage46:2063/01/26/18:17:38【-0005:42:22】
ついに、全サーバーを挙げての大規模イベントの日がやってきた。
三四時間にも及ぶ大規模アップデートも終わり、俺達パソ研のメンバー五人は、【シルフィーダ】郊外の住宅街エリアの自宅で、イベントの開始される時間を、今か今かと待ち構えている。
情報も全て公開され、その内容に全員が目を通していた。
魔城攻略クエスト。一言で言えば、全十サーバー、四〇国対抗で行われるタイムトライアル戦だ。
各国ごとに、魔城へ通じるゲートがある洞窟へと侵攻。そのゲートを通って、魔城のある共用サーバーへとジャンプ。
最奥の魔王、ストラトメフィウスを倒すと終了となる。
ちなみに、この場合は四〇の国のプレイヤーが入り乱れての大混戦となる。その中で一番の報酬がもらえるのは、魔王を倒したプレイヤーパーティー、次はその国に所属するプレイヤー達。
あとは、対ボス戦の貢献度順に、報酬のアイテムが配布されるようになっている。
つまり、ボス戦までたどり着けない国があれば、その国は自動的に最下位になるってわけだ。
今週から二月いっぱいまで、毎週金曜日に開催されるらしい。
「ふぅぅ、ようやくだな。腕が鳴るぜ」
「ライトくん、レベル上げかなり頑張ってたもんね」
「おうよ! 魔王を倒すのは、このオレに任せとけ!」
「でも、私よりレベル低いんだけどね」
「いや、まあそうなんだけどね。てか三枝さ……じゃなかった。ユイさんどんだけやり込んでんの?」
「大丈夫だって。レヴィちゃんほどじゃないから」
ちなみにストラトメフィウスの画像が公開されてんだけど、これがかなりでかい。
全身が黄金の鎧に覆われていて、腕がなんと六本もあって、二本は魔法の杖、一本は盾、残り三本はそれぞれ青竜刀みたいな剣を持っている。
エンシェントドラゴンの時も思ったけど、こんなんどうやって倒すんだよ。フィールドからだいたいの大きさわかるけど、けっこうでかいぞ。
まさかとは思うけど、昔の名作ゲームみたいによじ登ったりしないよな?
「そういや瑛士、そっちはテスト勉強とかしてるのか?」
「メンテだったから、昨日ちょっとしたくらい」
「ウソだろ、ゲームバカのお前がか?」
「さすがに、もう追試は嫌だ。特に三角関数とか」
「お前も、苦労してんだな」
あれ、今華麗にスルーしちゃったけど、こいつ全然テスト勉強してないのか?
まあ、古典はまだ時間あるし、大丈夫なのかもしれないけどさぁ。
「ユイさんはどうなの?」
「私も瑛士くんと一緒で、昨日はちゃんと勉強したよ、英語の」
「マジ? ほんとにやってないのオレだけ? だったら瑛士の部屋で、集まってやってもよかったんじゃねぇの?」
「先輩、集まってやるのはいいですけど、せめて教える役が一人くらいいないとキツイですよ」
と、リアルでは高校二年生の俺達の会話に割って入ってくる、リアルでは高校一年のラピス。
手厳しいと言うか、心をポッキリと折りに来るようなお言葉を。
まあ、確かに三人とも、成績そんなよくないけど。
「あはははぁ……。ラピスちゃんに言われると、説得力あるよねぇ」
「ちなみに、ラピスはテスト勉強とかしてるのか?」
「やめてくださいよ。ただでさえ週二回も塾に行ってるのに、これ以上勉強とか嫌ですよ。あんなもんに時間を費やすほど、私は暇じゃないんです。ゲームに忙しいんですから」
えーっとつまり、偉大なるラピス様はテスト勉強などしていないと。
やべぇよ、かっこよすぎて濡れるわこれ。
「なんなら、みなさんのテスト勉強にもお付き合いしましょうか? 恐らく、お役に立てると思うのですが」
「「「いえ、遠慮しておきます」」」
一瞬、ラピスの口がニヤッて笑った気がしたけど、気のせいだよな? 気のせいで合ってますよね? 誰か気のせいだって言ってください!!
さすがに後輩に勉強教えられるのは、精神的に来るものがある。いや、向こうのが頭良いのはわかってんだよ?
わかってるけど、納得できない事ってあるんだよ。だって人間だもの!
「まぁ、ネカマ先輩にはちょくちょく教えてたんですけどね。今回は無事卒業できそうで、私も教えた甲斐があります」
あぁ、もうなりふり構わなかったんだ、松井先輩。
だから今回は、赤点が一つもなかったんですね。
そりゃ、就職先が決まってるのにまた落第とかしたら、全然笑えねぇもんなぁ。
「松井先輩、三個下の後輩に聞くなんて……。なぜ先にオレ達を頼ってくれなかった」
「いや、その判断は正しいだろ」
「そうそう。私らじゃ、五十歩百歩もいいとこで、教えるなんて無理だもんねぇ」
ですよねー。
咲希と同い年だったら、間違いなく教えてもらってるなこりゃ。
「ハロハロー、みんな来てるかにゃー?」
と、テスト勉強の話をしていたら、色々な意味でレヴィたんがナイスなタイミングでご登場。
「先輩、ラピスに勉強教えてもらってたって、マジなんですか」
「でっへへ~。実はそうなのだよ、ライトお兄ちゃん。あたし恥ずかしっ。てへ☆」
てへちゃうわい。
「それで赤点全部回避できたんですね。どうやって先生口説き落としたのかって思ってましたけど、ちゃんと正攻法で点突端ですね」
「もぉぉ、エイジお兄ちゃんもヒドイ! ってのはまぁ、ちょっと置いといてぇ……。四人とも、ちょっと来てくれないかなぁ?」
俺の意見にもおちゃらけて返してくると思ったら、いきなり雰囲気がガラッと変わった。
まるで、これから獲物を狩りに行く狩人みたい。
「ちょっくら、上の方々と一緒に、作戦会議だっちゃ☆」
上の方々ってのに俺達四人が戦慄する中、中身は野郎の幼女アバターが、今までで最上級の可愛らしい笑顔を見せた。




