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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase05:Growing vernal feelings
44/62

Stage43:2063/01/24/19:48:26【-0053:12:34】

 例の謎の一斉送信メールから二日経った月曜日の正午から、ブレゴスのサービスは再開された。

 緊急メンテのお詫びとして、全ユーザーに武器や防具の強化パーツやポーション等の消費アイテムが支給された。苦情はかなり来たものの、公式サイトが炎上したりサーバーがダウンするような事はなかったようで、叔父さんは一安心だと。

 でも、まだ完全には安心しきれない。

 それは今日の深夜、もうちょい正確に言うと明日の午前二時から、サーバーを落として二六日の昼頃まで新イベントのための大型アップデートを行うからだ。

 俺も超楽しみにしてるから、叔父さんには是非とも頑張っていただきたい。

「レジャーフィールドでスキーかぁ~。なんで俺を誘ってくんなかったわけ?」

「知るか。俺の部屋いなかったからだろ。いいじゃん、どうせ暇じゃなかったんだろうから」

 ちなみに今日はイベント直前の最終調整も兼ねて、一日一回しかスボーンしないモンスター、エンシェントドラゴンの討伐クエストに来ている。

 先頭は俺とライトフォーゼ、少し後ろに残りの三人の、いつも通りのパーティーメンバーだ。

 他にも、五人パーティーが三つ一緒にいる。

 ようは、これから挑むエンシェントドラゴンは、単独パーティーじゃ攻略不能なくらい強いってわけで。どんなのが出てくるのか、今からワクワクが止まらない。

 ただ残念なのは、もっとネーミングセンスあるスタッフはいなかったのかっていう……。

「残念ながら、暇だったから近くの中古ゲーム屋行ってたわ!!」

「へぇぇ、いいのあったのか?」

「いや、お前や眞鍋に借りたのばっかだったから、一緒に置いてあった紙本のマンガ見てた」

 なんだ、面白そうなのあったらやろうと思ったのに。あ、もちろん、ブレゴスに飽きてきたらの話だぜ。

「でもアレだろ? 紙の本って高級品なんだろ?」

「あぁ、オレらの親父達の世代じゃ普通だったみたいだけどな。マンガ一冊で、電子書籍の倍くらいする」

「中古なのに?」

「中古なのに」

 一般書籍どころか、手紙や広告、教科書やノートまで電子化してる俺ら世代からすりゃ、全然信じらんねぇ感覚だな。

 とか思いつつ、手元に表示されてる地図で道を確認。

 同時に開いてる攻略Wikiの地図も見ながら、ルートを確認する。

 エンシェントドラゴンが最初に確認されたのが二週間前、最初に狩られたのはつい十日前。そのせいもあって、情報はやや少なめだ。

 ダンジョンマップはランダム生成されるらしいが、これにもいくつかパターンがあるらしい事は判明している。

 今回は似たような地図が攻略Wikiにあるから、まずはこれに沿って歩いてみるか。

「それにしても、いよいよもうすぐイベントだな。瑛士はどんな感じなんだ?」

「試験勉強しなきゃなーって焦りながら、冷静にゲームしてる自分が不安でしょうがない」

「やめてくれ、せっかく忘れてたのに」

「数学とか絶対追試だって。二πが三六〇度ってなんだよ」

「だよな~。πが二つならおっぱいだよな~」

「もうお前黙ってろよ」

 俺はお前と漫才するために並んでんじゃねぇんだからな。

 とか心の中で愚痴っていると、

「お、モンスター発見」

 グロリアスドラゴンがぞろぞろ現れた。全長十メートル以上。色は周囲に合わせた土色。高さはそんなないけど、ぶっとい二本の足で地上を走り回るモンスターらしい。

 合計八体。でも、こちとら二〇人もいるんだから、負けるわけがない。

 総勢二〇人のパーティーは、即座に戦闘状態に移った。

 剣士十人、魔法使いの盾役四人、攻撃系魔法使い四人、回復系魔法使い二人。

 攻撃系魔法使いがグロリアスドラゴンを攻撃。グロリアスドラゴンのターゲットが魔法使いを向いている間に、剣士が集中砲火を喰らわせて、基本はこの繰り返しだ。

 俺とライトフォーゼ、ユイさんの三人は即座に剣を抜き、グロリアスドラゴンに向かって走った。

 魔法使い達が一ヶ所に集まってるグロリアスドラゴンを攻撃。

 風や炎、雷がこれでもかと言うくらい降り注いだ。

 その大半が、現在判明している魔法の中でも、最上級のものだ。

 それでもグロリアスドラゴンの上に表示されたHPバーは、数ドットしか減ってない。

 さすが、この辺のレベル帯になると、雑魚モンスターでも強い。

「おらぁぁぁああああああああ!!」

 雄叫びを上げながら、十人の剣士は一番近くにいたグロリアスドラゴンに斬りかかった。

 各人の最大威力の必殺技スキルに、さすがのグロリアスドラゴンも悲鳴を上げる。

 でも、ここで深追いはしない。

 長期戦を見越して、すぐさま離脱。そこへ後方から魔法攻撃が、大ダメージを受けたばかりのグロリアスドラゴンを襲った。

 その間に、剣士達は他のグロリアスドラゴンに近付きすぎないよう、注意を払う。

 八体のグロリアスドラゴンのターゲットは今、魔法使いの一団に向いている。

「ふはははははは! 喰らうがいい、我が奥義!」

 うわー、レヴィたん超いい笑顔。てか、一人だけ火力がおかしいような。

「そぅらっ!!」

 っとと、あんなエセ幼女なんか見てる場合じゃない。

 魔法砲撃がやんだところで、俺は再びグロリアスドラゴン──その右足に斬りかかった。

 ブレゴスは各部位へのダメージも組み込まれているから、片足を攻撃し続けていれば倒れる。

「ダブルクォーター!!」

 風を纏った、二四連撃の突き攻撃。わずかに怯んだ隙を見逃さず、全員が一斉攻撃にかかった。

「ヴァッサートレイト!!」

「ブレイクブレイド!!」

「ラディクル・アロース」

「フィアムント・ハンドリー☆」

 ユイさんは渦巻く水を突き出し、ライトフォーゼは重さを生かした大振りで足を押し潰し、回復役のラピスも光の矢を降らせ、レヴィたんは最強の炎魔法を放つ。

 魔法は顔面に、剣士達は足をメッタ斬り。七割ほどあったHPは、一瞬にして溶けてなくなった。

「よっしゃあ!」

「まず一匹!」

「後続に注意しろ!」

「来るぞ!」

 だが、その間に七体のグロリアスドラゴンはかなり近付いてきていた。

 フィールドがやや狭いのもあって、あまり逃げ回る事もできない。

 ここからは、俺達剣士がモンスターの注意を引きつつ、魔法使い達に殲滅してもらわないと。

「っし、やってやる」

 残りMPに注意しつつ、手始めに魔法使いに一番近い奴に向かって、全力疾走した。




 その後こっちの全体的なHPが半分くらい削られる中、二体のグロリアスドラゴンを仕留めた。

 こりゃ長引きそうだと思ったところに、更に四人パーティーと三人パーティーが一組ずつ加わってくれたお陰で、こっちが一気に優勢になってあっさり撃破できた。

 パーティーメンバーは全部で二七人にまでなって、なかなか心強い。

 単体のグロリアスドラゴンなら一瞬、二、三体でも一、二分で決着がつく。

 数の多い団体さんは隠れてやり過ごしつつ、そんなこんなを繰り返すこと四〇分少々。

 ようやくエンシェントドラゴンの待つ、封印の谷までやってきた。

 谷とか言いつつ、視界の先には不気味な紫の空と足場の悪そうな巨大な岩場が広がっている。

 一応フィールドの端から端まで数百メートルあって、両側は山になっている。

「おぉ、それっぽいなぁ」

「紫の雲が出てるって事は、前回討伐から二四時間は経ってるな」

 フィールドにモンスターの姿もないし、今回のグループでは一番乗りだな。

「てめーら、死ぬんじゃねぇぞ!」

 別のグループのごっついおっさんアバターが武器を掲げ、他の二六人に向かって(げき)を飛ばす。

 ────オォォオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 俺達も同じように剣や杖を掲げて、力一杯叫ぶ。

 一応フィールド内で死んでも、すぐに蘇生してもらえば大丈夫。ただその代わり、戦闘への貢献度なんかに影響して、獲得アイテムは当然ランクダウンしてしまう。

 だから、絶対に死ぬわけにはいかない。

「あんますげぇからって、びびんじゃねぇぞ」

「はん、瑛士こそ」

 ライトフォーゼに軽口を叩くと、俺は封印の谷に向かって真っ先に駆け下りた。

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