Stage39:2063/01/19/23:32:16【-0168:27:44】
レヴィたんに案内してもらいながら住宅街を歩いているわけなんだけど、どういうわけか前来た時とは完全に別物になってんですが。これっていったい……。
「ライトくん、前来た時ってさ、こんなに家建ってなかったよね?」
「あ、あぁ。骨組みだけが、三つか四つくらいだったはず……なんだけど」
まあ、それが職人ってやつで。昔からいるんですよ、こんな風に一日で家建てちゃうような、最強プレイヤーみたいなのとはベクトルの違う廃人の方々が。
道の両端の土地には個性と色彩が豊かな、でも不思議と統一感のとれた街並みが広がっていた。
一つとして同じ形の家はないけど、どれもアホみたいにセンスの塊なのは共通している。
そしてこういうアホみたいなセンスにかけては、うちの部長ことレヴィたんも相当なレベルだ。
それは、パソ研での活動を見ていてもわかる。一昔前のコントローラーで操作するゲームではあっても、それを自作できる人間なんてそんなに多くない。
本当にすごいわ、クリエイター系の人って。
「で、レヴィたんは、どんな家作ったんですか?」
「腐っ腐っ腐~、それは見てからのお楽しみなのにゃ~、エイジお兄ちゃん」
期待八割、不安二割くらいの割合で、俺達は道を進んで行く。
住宅密集地となっているSサイズの土地やMサイズの土地を抜けると、ようやく我等がパーティーの本拠地予定地のあるLサイズの土地が見えてきた。
「確か、あの辺でしたよね。私らの買った土地って」
ユイさんの指差す先には、けっこうな規模の家が六つほど見える。
あの中に俺達の家があるとか、未だに信じられねぇ。
「腐っ腐っ腐~、平伏すがいい、愚民共! これがあたしの建てた家じゃあ、ぼけぇ!」
そしてついに、家の前に到着した。
仁王立ちでナイムネ張ってふんぞり返ってるのは演出だから置いとくとして、マジでヤベェな、このできは……。
ジフの樹海の木材は色白で、それだけでも見た目に綺麗だ。
二階建てのログハウス風。一階部分には庭に張り出す形でテラスが付いていて、その庭には小さいながらプールも完備されている。
もういっそ、廃人から俳人に昇格してもいいくらいのできだ。
「愚民は納得いかないけど、すごいなレヴィたん」
「ありがと、エイジお兄ちゃん! 来て来て、中も案内するから」
玄関前まで続く階段も、ジフの樹海の木材製。清涼な木の香りが、鼻の中をすっと通っていく。
その階段をステップするように登り、少し色目の違う玄関に到着した。こっちは、他のプレイヤーにもらった素材かな。色々と、互いに融通してた感じだったし。
外がこれなら、中も期待できる。俺達は自分でも気付かない内に早歩きするほど、期待に胸を膨らませていた。
そしてここで予想を裏切らないのが、このネカマ野郎──もといレヴィたんのすげぇところ。
「一階は共用スペースになってるんだ。リビングダイニングにぃ、キッチンにぃ、お風呂も完備しておりま~っす。共用のアイテムボックスもあるから、荷物とか邪魔になったらみんな使ってねぇ。ソファーとかは、知り合いに受注してるからもうちょい待ってくだちゃい」
もうね、絶句ですよ。絶っ句。
他にも、レンガ造りの暖炉があったり、床にはカーペット敷いてあるし、観葉植物っぽい鉢植えなんかもある。
地柄入りのライムグリーンのカーテンもセンス良いし、むしろ文句の付けようがない。
てか、この家に文句の言える人がいたら、むしろ紹介してください。
「あの、これマジで先輩が作ったんですか?」
「大マジだって、ライトお兄ちゃん。伊達に木工スキル上げてないんだぞ。まぁ、職人系スキルの仲間同士で、色々作り合ったんだけどね。他には、個室用のベッドとテーブル、あとチェアーは明日納入予定」
あぁ、仲間同士で作り合ってたから、この短い時間で家が出来たのか。
今日のお披露目が遅れたのも、それ関連だったんだろうな。
「すごいですね。これは絶賛せざるを得ないクォリティーです」
「でしょでしょ! もっと誉めてぇ、ラピスお姉ちゃん!」
「だが断る!」
「ヒドィ!!」
おぉ、ラピスからもお墨付きが出た。
だいぶ気に入ったらしい。
コイツ、めったな事じゃないと褒めないのに。
「それじゃあさ、次は二階行こうよ! 私早く見てみたい!」
「おkおk。ユイお姉ちゃん、そんなに興奮しなくても大丈夫だから。二階の階段はこっちねぇ」
いったんリビングダイニングから廊下に出ると、玄関を入った時に見た階段から上の階へと登っていく。
この階段は、ちょっと素材が違うみたいだ。いや、階段も含めた二階全体が、違うコンセプトで組まれたみたいな感じなのか。
一階が白を基調とした清潔で新しい感じだとしたら、二階はもう少し茶系のリラックスできる空間かな。木の香りが少し弱いけどほどよい感じで、不思議と気分が落ち着く。
「二階は、個室スペースになってま~っす。と言ってもぉ、個人用のアイテムボックス以外は、まだ何もないんだけどね」
と言いつつ、レヴィたんは一番手近な部屋を開けた。
畳なら八畳分くらいかな。家具がないのもあるせいで、リアルの俺の部屋よかだいぶ広く感じる。
「あたしの部屋がちょっと大きい以外は、全部一緒ね」
「すごいなぁ……。なんか、私も作ってみたくなってきたかも」
「いいよいいよ、ユイお姉ちゃん。職人さん大募集中だから!」
ユイさん、空間デザイナーの血でも騒いだのかな。
まあ、楽しんでるならいい事だけど。
「私、みんなの家具とか作ってみたい」
「なら、オレと瑛士は材料厚めだな」
「そうだな。あ、材料と言えば……」
俺はアイテム画面を開いて、下の方にスクロールすると、それをレヴィたんに見せた。
「さっきラピスの見つけた穴場でモンスター狩ってた時に出てきたアイテムなんどすけど、これ何かわかりますか?」
「お兄ちゃん、それじゃ見えない」
おっと、背丈が足りなかったか。
中腰に屈んでやると、横からレヴィたんがのぞき込んできた。
「『滑らかな泥』?」
「ライトの方は『超滑らかな泥』も出てきたみたいですよ」
「ふむふむ。こっちでも確認してみるから、ちょっとちょうだい」
「わかりました」
滑らかな泥を選択、項目は譲渡、相手はレヴィアーナ・メルクルスト、個数一個。ぽちっとな。
「ほい」
「どもども」
アイテムストレージ間での譲渡は完了。
レヴィたんも自分でアイテム画面を開いて、色々確認し始めた。
そしたら、
「うぉ、これスゲェ!?」
あんまりびっくりし過ぎてつい素が出ちゃってます。
「な、なにがすごいんですか?」
「い、いや、それがね、ユイお姉ちゃん。これって激レアな壁材みたいなやつでさ、塗ると大理石みたいなピカピカになるやつみたいなの。新アイテムだよ、まだどの攻略Wikiにも載ってない。しかも、防諜効果付き」
うん、とりあえず、俺みたいなプレイヤーには関係ない事だけはわかった。
でも家とか作ってる職人の方々には、垂涎物のアイテムらしい。
そう思うと、名前に泥って書いてあっても、ありがたく見えてくる。
「ぐへへ。転売すれば大儲けも」
おい。
「って冗談は置いといて、どれくらいあるの? お世話になった人で、欲しい人に配布とかしたいんだけど」
「一スタック九九個で、二スタックと三個」
「私は一スタックと七二個」
「オレは九七個」
「ふふふ。私は八スタックありますよ。キリッ!」
ラピスー、お前は前から行ってたからだろうが。
でも、相当な量だな。合計で十二スタック以上あるのか。
「うん、それなら配布しても十分手元に残るね。また別の土地買った時は、石材系の家でも作ってみようかな」
うん、それはそれでよさそう。
今回の家も相当なものだし、次が楽しみだ。
ここが本部なら、次は別荘とかになるのか?
そんな話をしながら、俺達は例の泥系アイテムを、全てレヴィたんに譲渡した。
「それじゃ、あたしはその辺回ってくるから、みんなは先に行ってて」
それじゃあ、と手を振って別れようとする俺達。
その瞬間、どこからともなく激しい怒声が飛んできた。




