Stage38:2063/01/19/20:00:37【-0171:59:23】
一昨日の夜になって、俺達はようやっと木材の伐採から解放された。
あのくそぶりっ子め、後から後から本数増やしていきやがって。お陰でなんか、高速伐採のスキルまで開眼しちゃってるじゃねえかよ。
効果、伐採用のオノ装備時に、伐採効率が十パーセントアップ。ヤメテ、もうしばらく木のあるフィールドにはイキタクナイ。
だから昨日は憂さ晴らしに砂漠系のフィールドでアホほど暴れて、他のプレイヤーからメッチャ引かれてたよ。
いやぁ、いいねぇ、HP自動回復スキル。レベル帯にもよるけど、上手く立ち回れば回復ポーションいらねぇし。
おかげでC荒稼ぎできた。経験値はそこそこだったけど、久々に戦闘で身体動かせたぜ。
“《眞鍋咲希》さんから入室の許可が求められています。許可しますか?”
“《三枝美夏》さんから入室の許可が求められています。許可しますか?”
“《柏木琢磨》さんから入室の許可が求められています。許可しますか?”
っと、きたきた。
「全員入室を許可」
三枚のダイアログに許可を出すと、電子の海を見渡せる窓際に、三つのアバターが構成された。
「先輩、眠いです」
「やっぱ眞鍋のアバター、全然慣れねぇわ」
「あははははぁ。でも、ゲーム内のアバターと似てるから、私はそうでもないかな」
残念お嬢様アバターの咲希に、ブレゴス内のアバターデータを使ってる柏木と三枝さんだ。
なぜこんな風にパソ研のメンバーが俺の仮想の部屋にいるのかと言うと、松井先輩からそういうメールが来たからなんだけ……ん?
「あ、松井先輩からメールが」
「私にも」
「お、オレにもだ」
「こっちも来ました」
視界の右上に表示された新着メールのアイコンをタップ。
すると、
From:松井泰範
Sb:すまん
家の件なんだが、もう少しかかりそうだから、適当に時間を潰しててくれ。
おい、自分で呼び出しといてどういう意味だよこれ。
他の三人も、呆れたような、見放したような表情になっている。そりゃ、こんだけ待たされてこれじゃあなぁ……。
「とりあえず、一狩り行きましょう。今朝、絶好の穴場スポット見つけたんです」
咲希の提案により、俺達はブレゴスを起動させた。
咲希こと、ラピスに案内されて到着したのは、怨霊の沼とかいう、見た事も聞いた事もないフィールドだった。
ネットに繋いで攻略Wikiを見てみたけど、やっぱりない。
「どうも、出現には特定の条件が必要っぽいんですけど、それがわかんないんですよねぇ。それに、村とかからけっこう離れた場所にあるんで、見つかりにくかったみたいです」
自慢気なラピスは鼻息むんむんで仁王立ち。可愛いやつめ。
でも確かに、穴場的なフィールドなら、何か特殊なものがあってもおかしくないな。
「それではぁ、みなさん行きましょう!」
その後俺達は、ラピスがなぜこんなにニヤニヤしていたのかを知った。
「バスタースラァァァアアアアアッシュ!」
「ブラストスラッシャー!」
「チェインスピアー!」
俺達は視界を埋め尽くす勢いで向かってくるモンスターに向かって、範囲攻撃の必殺技スキルを連発していた。
ライトフォーゼのバスタースラッシュは、大剣を打ち下ろした場所を基点に、前方に斬撃を飛ばす技。
同じく、俺のブラストスラッシャーは放射状に斬撃を、ユイさんのチェインスピアーは連続した突きを飛ばす技だ。
三人の一斉射で二〇体はまとめて吹き飛ばしたはずなんだけど、
「あの、ラピス! これどうなってんのよ!」
とまぁ、悲鳴を上げちゃうライトフォーゼの気持ちも、わからなくはない。
なにせ相手は、沼の中から無限増殖して出てくる泥の腕なんだぜ。
マッドハンド。ごっつい人の手を三倍にしたようなサイズの手が、またまたうねうねしながら近付いて来る。
「なら、これならどうだ、シルフブレード!」
新たに取得した必殺技スキル、シルフブレードで俺は近付いてくるマッドハンドをまとめて斬り伏せた。
シルフブレードは、剣の先に風の刃を作る必殺技。発動中は常時MPが消費されるけど、その分威力も折り紙付き。
近づいて来るマッドハンドを、根こそぎ薙ぎ払った。
「すっげぇぇ…………。お前どんだけやりこんでんだよ」
「悪かったな、リアルでやる事なくて暇なんだよ、お前と違って」
「あれよりちょっと小さいのなら、私もできるんだけど」
「え!? 嘘!! ユイさんもできるの!!」
ちなみにレベルは、レヴィたんも含めた五人の中だと、ライトフォーゼが一番低かったりする。
ユイさんは最近俺といる事が多いせいで、いつの間にかけっこうレベル差できてるんだよなぁ。
「ラシャールバレット!」
とか言ってたら、頭上を超えて風の弾丸が近付いて来ていたマッドハンドを、根こそぎ消し飛ばした。
俺も一応魔法使えるけど、本業の魔法使いはやっぱすげぇなおい。何千発あったんだよ、今の弾。
「う~ん、やっぱり魔法でまとめてぶっ飛ばすのって気持ちいいですね。弾数無限大で二丁マシンガンぶっ放してるみたいです」
「ラピス、これってお前一人でも大丈夫なんじゃないのか? MP自動回復スキル出てんだろ?」
「それはそうなんですけど、必殺技スキルの魔法だと消費量の方が多いのと、あと精神的に疲れるので」
二つ目のは後でしばくとして……。あんな魔法使ってたら、確かにMPはすぐ切れるよな。
おっと、俺もMP回復ポーション飲んどかねぇと。
「んぐんぐ。ぷはぁ~っ! ふぅ。ま、経験値稼ぐにはいいか」
ラピスが魔法で向こうのHP削ってくれてるから、こっちが一撃で倒せる。
まあ、それがパーティーの意味なんだけど。
「それはそうと、撃破ボーナスで手に入る、この『滑らかな泥』って何に使うんだ? 泥パックか?」
「さぁ、私に聞かれても。ラーシャルストリーム」
あぁ、近寄って来てたマッドハンドが、また皆殺しに。そして運良く残ったのも、ユイさんとライトフォーゼにやられてる。
経験値はみんなに入るからいいとして。
「おぉ、なんか『超滑らかな泥』出た」
「よかったね、ライトくん」
「頭悪そうな名前だな」
「ですね、まるでネカマ先輩みたいです」
そして、噂をすれば何とやら。
「そのネカマ先輩から、たった今呼び出し来たぞ。家できたってさ」
「じゃあ、撤収しましょう」
「ユイさん、ライト、レヴィたんから召集令きたぞー」
「わかった~! 今行くね~! チェインスピアー!」
「……みんなスゲェ」
ラピスがHPを削っていたマッドハンドをユイさんが殲滅したところで、俺達は怨霊の森を脱出した。
「ふふふ。待たせたな、野郎共」
マジで待たせすぎじゃボケ。もうすぐ日付が変わりそうじゃねぇかよ。
「先輩、私野郎じゃないんですが」
「ネカマ野郎には言われたくないですけど、バカなの死ぬの」
とまぁ、出オチ乙なレヴィたんがラピスに精神的にぬっ殺されたところで、見に行きますか。我等パソ研の、マイホームとやらを。




