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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase04:Spring bloom in winter
30/62

Stage29:2063/01/08/14:21:32【-0455:38:28】

 あの後、俺は気が付いたら病院に運ばれていた。

 やっぱり、脳への過剰な痛みのフィードバックが原因らしい。

 脳波異常を察知したNoVAがネットへの接続を強制的に解除したせいで、俺はプライベートスペースからいきなりいなくなったそうだ。

 例の仮面野郎が消えてからすぐに諸々の回線が復活して、三枝さんは叔父さんに内線で連絡してくれたんだそうな。

 だから目が覚めた時には、叔父さんがいた。叔父さんは、父さんは出張中だから母さんに電話してくれたらしいけど、やっぱり来てはくれなかった。

 息子が襲われたってのに。薄情なもんだぜ、ったく。

 元々外傷はなかったんだから、入院はその日の夜だけで翌日の昼には退院。カプセルタイプの痛み止めは処方されたけど、左肩にもう痛みは残っていない。念のため、二、三日な仮想空間に没入(ダイブ)するのを禁止されたけど。

 それも終わって、冬休み開けの月曜日。

 久し振りの学校は、すげぇ寒かった。室内は冷暖房完備なんだけど、道中が寒いのなんのって、ねぇ?

 そして面倒な始業式も終了して、現在は教室で待機中。

 ブレゴスの追加情報がないか、攻略Wikiのページを広げて眺めていた。

 でも、内容は全然頭の中に入ってこない。

 そりゃそうだ。今は別の事で頭が一杯なんだから、入ってくるわけがない。

「ったく、何だったんだよあれ」

 周りの声に溶け込んで、誰にも聞こえなかったろう。

 真ん中を陣取っている攻略Wikiの端の方に、小さなホロがある。

 ユニコーンスタジオのプライベートスペースに侵入してきた、インフェルスの仮面野郎。そいつの事を調べたホロだ。

 過激派が色々と問題をやらかす時、どんな手段を使っているのか。授業中に色々調べてみたけど、具体的な物は一つもわからなかった。

 でも、もしあれが本当に過激派の仕業だとしたら、あれはとんでもない脅威だぞ。

 通信回線を一方的にハックしたり、仮想空間に科せられているルールに反して武器を出現させたり。

 外部の通信回線だけならまだ納得もできるけど、内部の回線すら使えないってどんな事やりゃできるんだよ。

 警察に通報しようって話も出たんだけど、あまりに証拠が少なすぎるってんでそっちもお流れになった。でも、映像データにも音声データにも相手の姿や声が残ってないんじゃ、しゃあないか。叔父さんは、会社で色々調べてくれるって言ってくれてるけど。

「よっ、速水。相変わらず暗い顔してんな~。ブレゴスの中だと、だいぶイケメンなのに」

「うっせぇよ。で、そっちはレベル上げどうなってんだ?」

「あぁ、それなりにな。お前や眞鍋に体の使い方とか教えてもらったおかげで、野良パーティー組んでもけっこう重宝されてるぜ?」

 こいつのコミュニケーション能力は、リアルだけじゃなく仮想の世界でも有効なわけか。

 こちとら仮想の世界でも四苦八苦してるのに。声かけるのとか怖いし。羨ましい。

「あっそ。まぁ、がんばってくれや」

「ちぇっ。さすが、生粋のゲーマーは違うねぇ」

「ほっとけ」

 でもまあ、柏木がいくらレベルを上げても、追い付かれるような事はないだろうけど。これでも、地味にハイランカーの一つ下辺りをうろちょろしてんだから。

 あ、でも最近ログインできてないから、もう二つ三つ下がってるかも。

 上の連中のプレイっておかしすぎて、どう考えても付いていけん。あいつら人間やめてるぜ。いや、プレイ時間的な意味で。

「それで、レベルどれくらいになったんだ」

「やめとけ。聞くと自信なくすか呆れる」

「いいだろ、ケチ」

「わかったから。じゃあ、そっちも言えよ」

「わかってるってぇ~、大統領~」

 ため息をつきつつ、俺はブレゴス公式サイトにホログラスのデータでログインして、プレイデータの視界スクショを柏木に送ってやった。

 そしたらうきうきで受け取った柏木の目から、いきなり光が消えた。

「お前、何やってんの?」

「だから事前に言っただろ。だったら引くなよ」

「だからって、二八レベルって何だよ!? 俺まだ十九レベルだぞ!? 十五過ぎた辺りから、なかなかレベル上がらなくなって!!」

「お前の場合、人数いても効率が悪いの……。割と経験値くれるモンスターが無限増殖するフィールドとか、報酬で経験値くれるクエストとかあるから、自分で調べてやれ」

「タイチョー! レベル上げに付き合って欲しいのであります!!」

「松井先輩が同じレベル帯だから、一緒に付いてけ」

「嘘、俺もう先輩に追い付かれてんの!?」

 そりゃ、俺や咲希に、先輩のサークルの人達も手伝ってるからなぁ。

 ある程度時間も経ってるから、効率的なレベル上げの方法も攻略Wikiに載ってる。

 ただ、連日の長時間プレイもそろそろ限界だろうから、レベル上げのペースは落ちるだろう。学校も始まるし。

 そうこうしている内に、HRの時間になった。

 電子音のチャイムが、本日の終わりを告げる。

 まったく、学期始めからいきなり六時限まであるとか、これなんて拷問だよ。これで先生の話し聞いて終わりだけど。

「そんじゃ、放課後は先に行ってるわ。教室掃除、サボんじゃねぇぞ」

「お前が言うな」

 チャイムが鳴り終わってから一分かそこらして、ようやく先生が入ってくる。

 それと同時に、ホログラスに着信が入る。

 電話主は、なんと俺の叔父さんだった。

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