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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase03:Crossing Hearts
20/62

Stage19:2062/12/31/11:52:42【-0636:07:18】

 ミーシャの案内で館内を歩き回る事十分ちょっと。

 俺達は松井先輩が入っているサークル、“コントローラー友の会”のブースへ到着した。

 そして、予想外すぎる人のお出迎えに、唖然としてしまった。

『いらっしゃいませ、お兄ちゃんたちに、お姉ちゃんたち。コントローラー友の会へようこそ! ゆっくりしていってね☆』

 なんとブースの前では、松井先輩のブレゴスのアバター、レヴィアーナ・メルクルストこと、レヴィたんがいたのだ。

 え、何がどうなってんのこれ?

「よう、瑛太、咲希、美夏、琢磨。一週間ちょっとぶりだな。お前ら、元気でブレゴスやってるか?」

「まあ、俺と咲希はそうですね」

「もちのろん、ですよ……ネカマ先輩。毎日、十五時間くらい…しとる」

「咲希ちゃん、それはいくらなんでもやりすぎだよぉ」

「オレには無理ですよ。ゲームなんて連続プレイは五時間が限界です」

 俺に続いて咲希が熱弁して、三枝さんにちょっと注意されて、柏木は呆れ顔。松井先輩がなぜ満足そうなのか、ようわからん。

 でも実際、休み中とかする事ないから仮想空間に潜りっぱなしなんだよな。寝たって大丈夫だし。

 ご飯とトイレに定期的に落ちる必要あるけど、仮想の方が楽しいんだからしょうがない。

「って、このレヴィたんどうしたんですか?」

「あぁ、今年から正式に実装されたAR・VRの複合技術の一種だ。夏から導入されてんだぞ?」

「えっと、AR、ですか?」

「あぁ。Augmented(オーグメンテッド)Reality(リアリティ)、拡張現実っていってな。現実世界とVR(仮想現実)の中間みたいな技術で、早い話が、ホログラスで見てる世界だと思えばだいたい合ってる」

 そういえば、授業で習ったような記憶が……。確か、二〇〇〇年前後から急成長を始めた技術で、現実に見える世界に色んな物を追加表示する…………なるほど、追加表示か。

 確かにそれなら、ホログラスで追加される映像とかって全部ARなんだな。

 ただ、留年した先輩から教わってるのが、若干屈辱的だけど。

「でまぁ、どの辺がARなんかって言うとな、ホログラス外してみればわかる」

「はぁ」

 言われて俺達は、ホログラスを額までずり上げた。

 すると、さっきまで見えていた一般参加者の数が、一気に四割近くまで減ったのだ。

 慌ててホログラスを目に戻すと戻って、上げるとまた減った。

「もしか、して…ネット上、の?」

「察しがいいな、咲希。そうだ、会場のサーバーに現実と全く同じコミケ会場を作って、そこと相互データリンクしてあるのさ。地方から来られない人のためにネット上でコミケが始まったのがだいたい二○年前で、その頃から企画自体は持ち上がってたらしいんだけどな」

「つまり、ホログラス越しに見える参加者は、全部ネットのコミケの参加者、ですか?」

「そういう事だ。美夏も理解が早くて助かる。野郎二人と違って」

「速水、留年がなんか言ってるぜ」

「言ってやるな、柏木。あれでも一応先輩だから」

 わざわざと聞こえるように言ってやったのに、無視ですか先輩、そうですか。

 今度フレンドリーファイヤしてやるから覚悟してくださいよ、先輩。

 女子二人に鼻の下伸ばしやがって。しかも、三枝さんの事名前で呼ぶとかどうなんだよ、本当。中学で同じクラスだった俺でも名前で呼べないのに。

「それで、ARの方は説明してもらいましたけど、VRの方はどうなってんですか?」

「うむ。いい質問だなぁ、瑛太。よかろう、ならば説明してしんぜよう」

 そう言うと、松井先輩は空中で指をカタカタ動かし始めた。

 初期型のホログラスから実装されてる、仮想キーボードだろう。はた目には空中で指を動かしているだけにしか見えないから、なかなか変な光景として昔はよくニュースやバラエティーで取り上げられていたらしい。

 ホログラスが当たり前の俺達の世代には普通の光景だけど、俺達の親の世代の頃にはなかったらしい。

『おっほん。ネット上の参加者を現実世界に現す技術が、なぜAR・VRの複合技術かと言うとぉ、実はVRの世界でも現実の参加者が再現されているからなのです』

 俺らのお腹くらいまでしか身長のないレヴィたんが、ツルペタなお胸を張って説明してくれた。

 あ、さっき仮想キーボード打ってたのは、レヴィたんにしゃべらせるメッセージの内容か。しかも、動作プログラムのオマケ付きで。

『一般参加者のホログラスの位置情報がサーバーに送られてぇ、ネット上のコミケでNPCが生成されるの。ちなみに、アバター情報のデータリンクをシステムに許可してくれれば、その人が普段VR空間で使ってるアバターも再現できるんだ。発声情報もバッチリデータリンクできるから、現実世界からネット参加者の人と話す事もできるし、またその逆も然り。臨場感もより高まるってわけ。すごいでしょ!!』

 レヴィたんは鋭い小悪魔尻尾をふりふり、お目めにはお星様をいっぱいキラキラさせて説明してくれた。

 くそ、やっぱり可愛いぜ、畜生。腕組みして仁王立ちプラス、ないムネを張ってふんぞり返ってるとことか。

 そういや、エラい人が言ってたもんな、可愛いは正義! って。いや、エロい人だっけ……。

『ちなみに、ネット上のコミケでは、同人誌の電子書籍、音楽・映像作品の圧縮データ、DL版のゲームデータ。企業ブースだと、限定グッズの引き換えチケットなんかも頒布してるんだ』

「まあ、グッズに関して言えば、受注生産になるから一、二ヶ月遅れる事になるんだがな。だからグッズだけ頒布してるサークルのスペースは、ネット上のコミケだと『申し訳ございませんが、本ブースのサークルは現実世界でのみの参加となっております』ってプラカード持った、すんげー可愛いNPCの女の子がいる」

「さすが、期待を裏切らねぇや」

「ちなみに、腐向けのブースだった場合は、イケメンの男性NPCだ。なお、ガチムチも可」

「ホントに期待を裏切らねぇな、運営!」

 NPCをデザインするモデラーさんも、大変だろう。動かすプログラム組む人も。

 なんでこう、無駄なくらい徹底してるんだよ。怖いわ!

『ちなみに皆さん。<C&M☆マップ>の機能の中に、ホログラスに登録されたアバターになれる機能もあるんですよ?』

 もうどうにでもなれ…………。

 とか思っていると、咲希がもうメニューを操作し始めていた。

 そして三秒後、咲希の体が細かなポリゴンとなって飛び散ったと思ったら、飛び散ったポリゴンが集まって別のものを再構成する。

 咲希がブレゴスで使っているアバター、ラピスリッド・ウィンプール。

 今朝ゲットした祝福の衣じゃなくて、自作したらしい白いコートを着ている。

 祝福の衣ドロップするの手伝ったんだし、一つくらいアイテム作ってもらってもいいよね?

「おぉ……。身長もちゃんと補正されてる!? 視界がちょっと高くなった!!」

 そこまで補正入るのか……。でも、逆にちょっと危ない気もするけど。

「うわぁ、ほんとにラピスちゃんだ。ほんとすごいわぁ」

「じゃあなんだ? さっきからすげぇ格好の人がけっこういると思ってたけど」

「ネット参加者以外にも、リアルの一般参加者の一部がアバターの格好で歩き回ってるのかもな。ほれ柏木、あの辺」

 アバターの姿になった咲希に、三枝さんは目をまん丸にして驚いている。

 柏木と俺は、ホログラスを上下に動かしながら他の参加者達も見てみた。

 さっきは気付かなかったけど、確かにアバターの格好でうろうろしているのが何人かいる。

 さすがに、ここでは九割方が自分と同姓のアバターを使ってるみたいだけど。

 やっぱ、リアルの知り合いに会うかも知れないのに、性別の違うアバターだと気まずいもんな。

 私もアバターにしてみようかなぁ、と三枝さんが悩んでいる。現代の服装のユイさんも見てみたいし、でも三枝さんのままで一緒に過ごして欲しいのもあるし、俺はどうすればいいのでせうか。

 後からわりとどうでもいいとか思っちゃう二択に頭を悩ましていると、視界の端に奇妙な格好の集団が現れた。

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