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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase02:Bravery Symphonia Gothic
14/62

Stage13:2062/12/22/15:50:21【-0849:09:39】

 庁舎の一階にあるクエストカウンターでチュートリアルのクエストを受注した俺達パソ研一同は、いよいよ領地の外へと足を踏み入れた。

 領地の外にはもちろん、NPCのモンスターがうようよしている。

「目標は、ボノボノ十体の討伐。報酬は一五〇(クレジット)と二〇〇EXP(経験値)……。あれですね」

 受注クエストのホロを展開しながら、ラピスはモンスターの一団を指差した。

 茶色の毛並みと、いかにも凶暴そうな顔をしたでっかいサルみたいなモンスターが、木の実を拾って食べている。

 数は、こっちと同じ五体。

「パーティーは組んでるけど、自分で倒さないとカウントされないから気を付けてな」

 俺は全員に注意を促しながら、いつでも戦闘に加われる状態で後方に待機している。

 β版の時にこのクエストはクリアしてあるから、俺は今回は見てるだけ。

 レベルも多少高いから、ちょっとした事でボノボノをやっちゃうかもしれないし。

「りょ~かい!」

「わかってます」

「うぉぉ、緊張するぅ~」

「わ、私も、ちょっと」

 ハイテンションなレヴィたん、あくまでも冷静なラピス、ライトフォーゼとユイさんは少し緊張しているご様子。

 そういえば、三枝さんはこれが初めてのVRゲームだっけ。

 それなのに、職業に剣士選ぶって、なかなか勇気あるな。

 職業はそれぞれ、俺こと瑛士と三枝さんのユイが戦士、柏木のライトフォーゼが重戦士、松井先輩のレヴィたんと咲希のラピスが魔法使い。

 ちなみに、戦士と重戦士の違いは、武器がデカいかデカくないかの違いしかないので、あくまで見た目の問題。システム的には重戦士なんて職業は存在しないけど、実際大型武器は動きが鈍くなったり、火力が高かったりもするから、そんな風に呼ばれている。

「ユイさんが牽制、ライトが本命、レヴィたんとラピスは、可能な限り援護してください」

「わ、わかった!」

「よし、いっちょやってやるか!」

「おっけ~、エイジお兄ちゃん」

「それくらい、朝飯前ですよ」

 それぞれから、気前のいい返事が返ってくる。

 さてっと、俺もいつでも援護できるよう、準備しとかねぇと。

戦闘開始(オープン・コンバット)!」

 ラピスもとい、咲希は昨日の Bullet World みたく叫ぶと、風の刃をボノボノに放った。

 装備は打撃武器としても使用できるロッド――木の杖――に、動きやすそうな膝上丈の黒い外套――くたびれたマント――という定番のものだ。

 攻撃を受けた三体のボノボノの上に、HPの削れた体力バーが表示される。

 残り八割くらいかな。先制攻撃としては、まずまずの成果だ。

「えぇぇえええいッ!」

「くらぇぇええッ!」

 傷を追ったボノボノへと、ユイさんとライトフォーゼが駆けた。

 大丈夫かな。かなり心配。

「って、あわわわっ!」

 一番前まで出たライトフォーゼは、自分の身長より大きな大剣を振りかぶって…………後ろにすっ転げた。

「軽々振り回せるだけの筋力値がまだないから、注意した方がいいよ」

「なら最初から教えてくれよ!」

 ライトフォーゼがバランスを崩して倒れてる間に、ユイさんはボノボノの近くまで走り寄っていた。

「えぃッ!」

 それから軽快な動作で飛び上がると、片手剣――ショートソード――を振り降ろす。

「ウガーーー!?」

 先頭にいたボノボノの体力が、更に一割半削り取られた。

「ガウガー!」

「ウダーー!」

 だが、そこを狙って残り二体のボノボノが襲いかかってくる。

「そうは問屋が卸さんぜよ~!」

 それを援護するように、レヴィたんは炎弾をボノボノの頭上に降らせた。

 風属性のボノボノにはなかなか効くようで、頭上に表示されたHPバーは一気に三割近く減少する。

 属性攻撃って、ここまで効果があったのか。

 真剣に、魔法スキルの習得について考えた方がいいかもしれない。

 レヴィたんとラピスが援護している内に、ユイさんは連続して斬りかかり、ついに一体目のボノボノを倒した。

「よし! 一体目倒したっ!」

「ユイさん、まだ気を抜かないでください」

「そうだよ、お姉ちゃん! まだ二体いるんだから!」

 ガッツポーズを決めようとしていたユイさんに、ラピスとレヴィたんは注意を促しながら援護の魔法を放つ。

 風が炎弾をあおり、ボノボノは炎に包まれた。

 属性による相乗効果も凄まじく、ボノボノの体力は残り二割近くにまで減っていた。

 その間にユイさんは安全圏まで離脱。

「俺の事も、忘れんなぁぁああああ!」

 そしてイイ感じに入れ替わるように、ライトフォーゼが大剣――アイアンソード――を振りかぶってぶっ放す。更に適当に横になぎ払う。

 さすが、重戦士と呼ばれるだけの事はある。片手件とは桁外れの火力は、たったの一撃でボノボノの体力を奪い去ってしまった。

「おおぉぉぉ! ライトお兄ちゃん、すごぉぉい!」

「さっきの様子だと、全然役に立たないかと思いましたけど。ちょっとだけ見直しました」

 レヴィたんとラピスは、予想外のライトフォーゼの活躍に、称賛の言葉を贈る。

 今のは確かに、良いタイミングだったと思う。

 問題は、これが偶然じゃなくて、自分達でやろうと思ってできるかだけど。

 でも、このクエストさえ終われば俺も戦士で一緒に斬り込みや牽制に入れるし、大丈夫かな。

 先輩や咲希は慣れてるだろうから、すぐにでも連携取れそうだし。

「でも、まだこれで三匹だよね。全部で四〇匹倒さなきゃいけないから……」

「まぁ、そのためのチュートリアルだから」

 ユイさんの発言に、俺は苦笑気味に返した。

 数だけ聞けば確かに多いけど、実際はそうでもないんだよねぇ。

 実際、上のフィールドに入ったら、一回のクエストで百体とか軽く狩るようになると思う。

 β版の時ですら、いったい何千体のモンスターを倒した事やら。

 それでもまだレベルは一桁台なんだから、けっこうレベル上げに骨が折れそうな予感がする。

「ふぅぅ、見たか! オレ様の活躍!」

 そこへ、序盤で醜態をさらしたあげく、最後のいいとこだけ持っていったライトフォーゼがやってきた。

「次はヘマしても援護しませんので」

「誤爆っちゃったらゴメンネ?」

「えっと…………。とりあえず、ガンバろ」

「時間かけるのもアレなんで、一気に狩りますよ」

 俺は四人を引き連れて、次のボノボノの一団を探してフィールドを歩き始めた。




 それから一時間もしない内に俺達はボノボノを四〇体狩り、官庁のクエストカウンターへと報告に行った。

 カウンター前にできていた黒山の人だかりは、たぶん俺達と同じでチュートリアルのクエストを終えた人達だろう。

 俺達も狩っている間に、最低でも十グループ以上と遭遇した。

 その後も、基本プレイに関するチュートリアルのクエストを順調に消化していき、夕食の解散前には全員レベル二まで上げる事ができた。

「じゃ、あたし達は一旦落ちるネ。バイバーイ、エイジお兄ちゃん」

「先輩、深夜にはまた来ますんで」

「んじゃな、瑛士」

「また明日ね。今日はホントに楽しかったよ」

 と、十八時を過ぎたところで、みんな夕食を食べに落ちて行った。

 特に、俺達ほどVRゲームに慣れてない柏木や、初体験の三枝さんにはかなり疲れたと思うから、今日はもう終わりだろう。

 松井先輩も、冬コミで頒布するゲーム作りがあるはず。

 咲希は…………たぶん塾かな。あいつの家、そういうのけっこう厳しいとか聞いた事あるし。結果を出してる間は自由にできるけど、ちょっとでも下がればゲームを取り上げられるとか聞いたような覚えがある。

 さてと、俺はどうしようか。

 同期してるホログラスのメニューを開いてメールフォームを開いてみても、新着メールはない。

 念のために新着メールを問い合わせてみたけど、やっぱり母さんからのメールはなかった。

 どうせ、明け方まで帰ってこないんだろ。

 まだ腹は減ってないし、レベル上げでもしてこようか。

「確か、この上のレベル帯のモンスターは……」

 ブレゴスのメニューからマップを呼びだすと、俺は再び外のフィールドへ向かった。

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