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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase02:Bravery Symphonia Gothic
11/62

Stage10:2062/12/22/14:00:19【-0850:59:41】

 キャラメイクと言っても、β版の頃に作ったアバターのある俺は、特にやる事はない。

 ただ、ブレゴスの特徴的として、好きなアバターを何体でも作って保管できる機能があるから、新しく作ってもいいかもしれない。

 作ったアバターデータはステータスに関係がなく、いつでも好きな時に着せかえることができるのも、従来までのゲームになかった新要素だ。

 それにブレゴスで作ったアバターデータは、ネットVR空間で使うアバターデータとも互換性があるし。

 そうなってくると、問題になるのはアバターの衣服やアクセサリーである。

 デフォルトの中にも、可愛いものからかっこいいもの、俺得なものから誰得なものまで色々あるけど、それにだって限りがある。

 やっぱり、ゲーム内のレアドロップアイテムや、プレイヤーのハンドメイドのアイテムが欲しいところだ。

 うん、ネットのVR空間用のアバターは、そっちのアイテムがそろってきてからにしよう。

 NoVAのセッティングと初期設定を終え、一旦昼食タイムに入る。

 もりとん、自炊なんて特殊技能はない。冷凍庫の中からチャーハンの袋を出すと、皿に移してレンジにかけた。

 それを隣に置きながらパソコンを起動させ、ブレゴス関連の最新記事を探す。

 店舗購入組の場合だと、店の開店が十時くらいだから、だいたい四時間くらいか。いや、深夜販売してる店舗もいくつかあるから、それも含めれば十四時間だな。

 複数の記事を同時に開くならホログラスよりパソコンの方が圧倒的に速いし、ホログラムの画面も大きくて見やすい。

 その代わり、ホログラスと違って、映像をタッチしても操作はできないけど。

「えっとぉ、なになに……」

 タイムラグはほぼなし。快適な操作感。必殺技も凝っていて、決まった瞬間の爽快感は抜群。

 なかなかいい事書いてくれてるじゃん。やったな、叔父さん。

 あ、でも良い事ばっかじゃないな。

 フィールド間の移動が、少々時間がかかる。クエストを受注できるNPCの発見が難しい。ホログラスとのデータリンクも一部不完全。ログイン認証時にエラーが起きる事も、極稀にある。

 うっわ、その他はともかく、ログイン認証でエラーはまずくないか?

 個人承認の簡略化でホログラスと連動させたのは良いと思ったけど、これじゃ意味ないだろ。

 サーバー内にセーブデータがあるから、承認回避とかもできねぇし。

 俺のホログラスはどうなんだろ。互換性がなかったら、最悪だぞこれ。

 β版の時に、叔父さんのNoVA借りた時は動いたけど。

 あ、でもIDとパスワードの設定を使えば入れるから、それでもいいのか。

 でも、せっかくの簡略ログイン機能なんだし、使えた方が便利だよなぁ。

「さて、潜るか」

 食器をシンクの底に重ねると、俺はNoVAからローカルネットにある自室にログインするべく、バイザー型コントローラをホログラスの上から装着した。

 “デバイス【NoVA】よりデータリンクが求められています。許可しますか?”

 お決まりのシステムメッセージに『データリンクを許可』と答えると、視界が一気に青の世界に包まれる。

 それからホログラスに保存されてる自室へのリンクを呼び出すと、自分をモデリングしたアバターでローカルネット上の自室へとログインした。




 ブレゴスの記事を読むのもほどほどに、アニメの動画データを鑑賞する事五本目。

 “《松井泰範》さんから入室の許可が求められています。許可しますか?”

 “《真鍋咲希》さんから入室の許可が求められています。許可しますか?”

 俺の視界に、二つのダイアログが重なって表示された。

「二人とも許可」

 二つの要求をまとめて許可すると、電子の海を湛える窓ガラスの手前に、二体のアバターが表示された。

 片方はこの一年俺の部屋に入り浸っている、青髪青目のお嬢さまアバター。中の人はもちろん咲希だ。

 そしてもう一体のアバターは、咲希の胸の辺りまでしか身長がない。

 と言うか、リアルの咲希の身長よりも更に低い。

 一二〇センチの小柄な体に、薄桃色のツーサイドアップ、パッチリとした赤い瞳といった、可愛らしい見た目の女の子だ。

 衣服の方は、フリルをふんだんに使った赤いキャミソール、デニムのハーフパンツに、白黒の縞々ニーソックスと、茶色のローファーという出で立ち。

 しかもキャミソールは背中が大きく空いていて、そこにはパタパタ動くコウモリのような羽。ハーフパンツの上からは、悪魔を思わせる先端の尖った尻尾をのぞかせていた。

 そう、この小悪魔幼女アバターを操作しているのが、

「待たせたな、瑛太」

 我らがパソ研の部長、松井(まつい)泰範(やすのり)先輩なのだ。

「先輩、せめてボイスモードを地声じゃなくて、女の子のにしてくれませんか? その見た目でその声だと、すごく気持ち悪いんですけど」

 まさに、残念の極みと言っていい。

 ただ、キャラメイクのお陰で衣服の名前を覚えた俺も、負けないくらい残念だと思うけど。

「あぁ、そうだな。……えっとぉ、これでどうかなぁ? エイタお兄ちゃん?」

 松井先輩はホログラス、NoVA、ブレゴスのメニュー画面を呼び出し、アバター関連の項目を操作した。

 やべぇ、声が変わると超絶可愛ぇ。

 いやいや、惑わされるな、よく考えろ俺。

 見た目は可愛いが、それを操ってるのは留年したヤローの先輩だ。

 小悪魔幼女アバターが可愛いのは認めるが、それはアバターが可愛いだけであって先輩が可愛いわけじゃ絶対にない。あり得ない。

「先輩の方が二つ年上でしょうが」

「なら、私なら大丈夫ですか?」

 と、今度は咲希が混じってきた。

 いつも思うんだけど、VRではこんなに普通に話せるのに、リアルだと何であそこまでダメなんだ、こいつは。

「咲希も、そのアバターで妹宣言とか不自然だろ。身長ほとんど変わんねぇのに」

 あぁ、ゲーム始める前から頭痛くなってきた。

 そんな風に仮想の空間で頭を抱える俺の耳に、電話の呼び出し音が聞こえてきた。

 “<柏木琢磨>さんよりお電話です。お繋ぎしますか?”

 続いてダイアログが浮かび上がる。

「繋いでくれ」

『おぉ、速水。さっきは聞き損ねちまったんだけどさ、お前ん家のローカルネットの部屋ってどういう意味なんだ?』

 続いて開いたホロウィンドウに、リアルの柏木を模したアバターが映し出された。

 そういえば、俺のこの部屋に来た事あるの、松井先輩と咲希だけだったな。

 ホロウィンドウには、左下の方に小さく“Real”と表記されている。

 たぶん、家庭用ローカルネットの存在も、ネットへの接続機器によってはローカルネット上にVR空間を作れる事も知らないんだろう。

「えっと、家のネット回線上に部屋作ってあるんだ。今からアドレス送る」

 俺はホログラスのメニューを操作してメモ帳から部屋のアドレスを呼び出し、同時にメールフォームも起動してそこに貼り付ける。

 ついでに、一回限定の部屋の入室許可証も付けとくか。

 宛名を柏木にして、メールを送信する。

 数秒後、ホロウィンドウの向こう側から、メールの受信を知らせる着信音が聞こえてきた。

「えっとつまり、ネットに部屋があるってわけか?」

「おぅ。家庭内ネットにな。さっきそっちに送ったのが、俺の部屋のアドレス」

「了解了解。そんじゃ」

 あ、三枝さんにもアドレスと許可証送っとかないと。

 電話が終わると、さっき柏木に話したような内容と部屋のアドレス、入室許可証をメールに添付して、三枝さんへ送った。

 一分もしない間に『ありがと!』の一言が添えられたメールが返ってきて、嬉しいような、物足りないような気持ちになる。

 まあいい。あとは二人が来れば、いよいよプレイ開始だ。

 ただ、ホログラスとのデータリンクの初期設定に、多少手間取るだろうけど。

 ホログラスのセキュリティ設定をいくらか変更してないと、接続時にエラー吐かれるんだよな。

「ところで先輩、卒業単位もそうですけど、受験の方も大丈夫なんですか?」

 柏木と三枝さんが来るまでの間の時間つぶしに、先輩に聞いてみた。

 この前も担任から呼び出されて、色々と成績が危ないのはわかっている。専門学校や大学受験の方は、いったいどうなってるんだろ。

「あぁ、その事か。それなら、兄さんの紹介もあって、プログラミング関連の会社で働けそうなんだ」

 だから、幼女の声でそのしゃべり方はやめてって、いつも言ってるでしょ。

 まあ、それはともかくとして、

「受験じゃなくて、就職ですか」

 俺の問いかけに、小悪魔幼女アバターがこくりと頷く。

「やっぱり、ゲーム作るんですか?」

「さすがに、そこまでは甘くないさ。まあ、VR関連の物理エンジンの開発とかもしてるらしいから、システム面で間接的に関わる事はあるだろうけど」

 そしてお嬢さまアバターからの質問に、先輩は首を横に振った。

 それでも、すごい事だと思う。

 間接的でも、ずっと作り続けてきたゲームに関われる仕事ができるのは。

「兄さんと昔一緒にゲーム作ってた人が起業したらしくてな、人手が足りないんだと。向こうも俺の事よく知ってるし、誘ってくれてるから、そこに行こうと思ってる」

 俺も咲希も、小悪魔幼女アバターの向こうで、胸を熱くしている先輩の姿を見たような気がした。

「頑張ってください」

「お、応援してます! あ、物理エンジンでもいいので、関わったゲーム教えてください。わわ、私、絶対プレイしますから!」

「あぁ。ありがとな、二人とも」

 と、いい感じに話がまとまったところで、電子の海を湛える窓ガラスの前に、二体のアバターが構成され始めた。

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