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奏交フォルティッシモ  作者: 蒼崎 れい
Phase02:Bravery Symphonia Gothic
10/62

Stage09:2062/12/22/13:27:31【-0851:32:29】

 叔父さんにメールをもらってから、一週間。退屈な終業式を終えると、パソ研メンバーの一部はそのまま俺の家までやってきていた。

 なぜかって?

 そりゃ、ブレゴスの発売日が今日だからな。

 この前の松井先輩の宣言通り、ブレゴスの到着を心待ちにしているわけ。

 ホログラスのメニューから宅配業社のページに飛んで確認してみると、もう家のある区域の手前まで来ているみたいだ。

「まだか、まだなのか……」

「ワクテカワクテカ……」

 松井先輩と咲希はなぜか思いっ切り緊張していて、

「今さらなんだけど、ブレゴスってどんなゲームなの?」

「えっとなぁ、よくある中世ヨーロッパ風の世界で、剣士や魔法使いになって、モンスターやプレイヤーと戦う感じのゲームかな」

 三枝さんと柏木は楽しそうに話をしてる。

 羨ましい……。

 ちなみに俺は、意味不明な緊張に困っている派だ。

 それはそうと、新作のゲームでここまで緊張するとか、初めての経験だと思う。

 もしかしたら、友達――って言っていいかはわからないけど、家に家族や親戚の人以外の人がいるからかもしれない。

 学校の知り合いを連れてくるのは、もちろん初めてで。

 母さんがいなくて、ホントによかった。

 口には出さないだろうけど、嫌な顔されるのは目に見えている。

 どうせ今日も、六時頃に帰れないってメールが来るだろう。




 ピンポーーーン…………。




 と、不意に呼び鈴が鳴った。

「俺、ちょっと行ってきますね」

「あ、オレも手伝う」

 俺と柏木は、早足で玄関に向かった。




 しばらくして、戻ってきた俺達を迎えた第一声は、

「来たか!」

「待ってました!」

 松井先輩と咲希のハイテンションボイスだった。

「いえ、なんかの懸賞っぽい、海の幸詰め合わせです」

「俺の期待を返せ!」

「私の期待を返せ!」

「あははぁ……。咲希ちゃんも先輩も、落ち着いて」

 柏木のガッカリ報告に、松井先輩と咲希は天国から一気に地獄に叩き落とされたような顔になった。

 二人とも右手をグーに握って、全力で抗議している。

 三枝さんがなんとかなだめようとしてるんだけど、まあ今にもバーサークして柏木に襲いかかろうとしている二人には聞こえるはずもない。やれやれ。

「それ、柏木の嘘ですから。ちゃんと五人分届いてるんで、安心してください」

「しょうもない嘘ついてんじゃねぇぞ、このヤロー!」

「そうだぞ、バカヤロー!」

 ポーズはそのままで、顔だけがやたらにやけてた。

 顔文字でいうと、「p(;`皿´)q」から「d(≧∀≦)b」な感じ。

 それはそうと咲希、お前いくらなんでも口悪すぎだ。柏木も、一応は先輩なんだから『バカヤロー』はだめだと思うぞ。

 まあ、当の本人は気にしてないからいいけど。

 俺はなかなかにビッグサイズなダンボールを居間の真ん中に置いて、ビニールテープを一気に引き剥がす。

 ぱかっと開くと、その中には更に赤縁のカラフルな箱が五つ、きれいに並んで入っていた。

 咲希はその箱の上に乗っかっている紙切れを拾い上げ、

「Bravery Symphonia Gothic 初回限定版(オリジナルカラーNoVA同梱セット)、五個、うぉぉ…………」

 いきなり目が飛び出していた。

「せせ、せせせせ、せん……せん……先、輩…………」

「ん?」

「すす、すごい、き…き…き…金額に……」

「まあ、本体が五つもあったら、それくらいは、な……」

 でも確かに、こりゃすごいな。

 ネット通販の某樹海はよく利用するけど、六桁の金額なんて初めて見た。たぶん、今後見る事は二度とないだろう。

 さすが、最新機種。お財布に全く優しくないお値段だ。

 でも、今重要なのはそこじゃなくて。

「それよりも、早く持って帰ってキャラメイクしろ。一回線につき一人を推奨、三人以上のプレイは不可なんだし」

 俺は咲希の頭にぽんっと手を乗っけると、箱を一つ押し付ける。

「そういえば、公式にそんな事書いてあったな。よし、早く帰ってキャラメイクだ。そうだなぁ……。じゃあ、十五時半に瑛太ん()のローカルネットの、瑛太の部屋に集合。質問はあるか?」

 松井先輩は珍しく上級生らしい的確な指示を出しながら、箱を一つ持ってうずうずしている。

 早く持って帰ってプレイしたいのだろう。

 毎日毎日、アバターのデザインを考えていたみたいだし。

 ただ、その時の顔がやたら犯罪者ぽかったのは、気のせいじゃなかったと思うけど。

 みんな特に質問もないので、どでかいダンボール箱からゲーム機入りの箱を取り出し始めた。

 それにしても、重いな。

 三枝さんや柏木はまだ近くだからいいけど、松井先輩や咲希はけっこう家が遠かったはず。

 大丈夫かな。

「三枝さん、俺が持とうか?」

「あ、うん、ありがとう。なんかごめんね」

「いや、いいって」

 なんて思っていたら、柏木のやつ、いきなり三枝さんと……。

「じゃあ、私の分、お願いします。ネカマ先輩」

「その呼び方はちょっと気になるけど、まあいいだろう。女の子に重いものもたせるのもアレだし。その代わり、俺のカバンは持ってくれ」

「サー、イェッサー」

 もう片方では、心配していた咲希の件も解消されていた。

 なんというか、珍しく先輩らしい松井先輩を見た気がする。

 というより、ネカマは否定しないんだ。

 まあ、未だに女性アバターの八割以上は男がやってるのは事実だけど。

 ちなみに、その逆の男性アバターでプレイしてる女性プレイヤーは、男性アバターの内の一割もいない。

 つまり、ゲームをやってるのは大半がヤローってわけ。悲しい事に。

 そういう意味では、女性プレイヤーが二人の俺達は運が良いと言えなくもない。

「それじゃあな、瑛太」

「失礼します先輩」

「三枝さん、行こうぜ」

「うん。じゃあ速水くん、またあとでね」

 俺はパソ研のメンバーを見送ると、箱を持って自分の部屋に急いだ。

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