Stage00:2062/12/14/19:00:18【-1037:59:42】
俺の視界に映るのは、無限に広がる銀河だ。
体を包むのは、宇宙という極めて厳しい環境から己を守る、鋼の鎧。
背中のスラスターを最大出力で噴射し、一気に最大速まで加速する。
後方に押しつけられるようにGがかかるけど、それに呆けている暇はない。
迫りくる無数のデブリを回避し、俺達は目標に向かって突き進む。
そう、今この空間を突き進んでいるのは俺だけじゃない。
周囲を見回せば、俺同様に鋼の鎧を装着し、スラスターの光を引きながら宇宙空間を駆け抜けるフレンドの姿も映る。
『さてっと、それじゃあ新ボスの力、試させてもらおうじゃないの』
『アップデートで追加された武器も、色々試さないとな』
『エイジ、先頭は任せたぜ』
「あぁ、俺に任せとけ!」
無線越しに聞こえるフレンドの声を聞きながら、俺は更にスラスターの出力を上げた。
ジェネレータのエネルギー残量を示すバーが、一気にレッドゾーンの突入し、その代わり今まで倍近い速度で宇宙を駆ける。
デブリの密度は濃くなるけど、それにぶつかるような俺じゃない。
時にはスラスターで、時には体の振りで、視界を埋めつくさんばかりのデブリをすり抜けていく。
そして、デブリ体を抜けると同時に、緊急事態を告げるアラートが、耳元で鳴り響いた。
「ボスの姿をキャッチ! 座標データを転送する。援護の方、任せたぜ!」
『あぁ、わかってる!』
『勝手に先行しすぎて、死ぬんじゃねぇぞ!』
『データリンク完了。そら、大型ミサイルでもくらってろ!』
フレンド達の声を聞きながら、俺は速度をそのままに今回追加された新ボスへと突撃する。
十メートルちょっとはある、巨大な人型兵器。
運営からの情報によると、大量の攻撃ミサイルと迎撃ミサイル、ビーム兵器も多数搭載らしい。
後方からフレンドの放った大型ミサイルが、俺の隣を通過して新ボスの人型兵器に向かっていく。
するとそれに反応したのか、人型兵器の単眼がギラリと光った。
装甲表面に備え付けられたビーム砲座が一糸乱れぬ動作で動き、その砲身から緑色の弾丸を吐き出した。
ビーム機関砲による迎撃なんて、これまでのボスには存在しなかった武装だ。
弾速がこれまでの機関砲に比べて、段違いに速い。
こっちの大型ミサイルを迎撃した人型兵器は狙いをミサイルから俺へと変え、両腕の先端に装備された大型ビームキャノンも一緒に斉射してくる。
そして追い打ちとばかりに、数えられないくらいのマイクロミサイルが、宇宙空間にばらまかれた。
「それくらい、振り切ってやる!」
そんな中を、わずかな隙間にねじ込むようにして俺は前進を続ける。
わずかにビームがかすり、爆数にあおられ、少しずつ減少していく装甲値。
強烈な振動とG、そして擬似的に再現されたビームとミサイルの音。
もちろん恐怖はある。でもそれ以上に、俺の心はどこまでも昂ぶっていた。
「くらぇぇええええええッ!」
ビームとマイクロミサイルの弾幕を突破し、人型兵器に零距離まで接近する。
右腕の装甲板がめくれあがり、そこから大出力のエネルギーブレイドが形成された。
そいつをまず、右腕の大出力ビーム砲へと叩きこむ。
――ギュィィィィイイイイイイイイイイイイイン!
まるで悲鳴を上げるかのような駆動音が、俺の耳に伝わる。
だが、これはまだまだ序盤。本番はこれからだ。
「行くぜぇぇえええええ!」
『『『おぉ!』』』
広大な宇宙空間をビームとミサイルの光芒が埋めつくした。