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国王陛下は傷心中  作者: 可嵐
こもりうたはいかがですか?
9/17



「先生」

「なんですか?」

「わたしを助けて下さった騎士団長様は、一体どんな方だったんですか?」

 歴史の講義で練習問題を解いていた時のこと、わたしはふと思い立って宰相様に聞いた。隣で本に目を落としていた宰相様は顔を上げ、形の綺麗な眉を訝しげに寄せてわたしの顔を覗き込む。

「……質問の意図は何ですか?」

「意図なんてありません。……ただ、ずっと知りたかったんです。わたしを助けて下さった方のことを。でも、お城の方は陛下も含めてわたしを目の敵にしているし、心から騎士団長様の死を悲しんでいらっしゃるから……今まで聞けずにいました」

 騎士団長様は、わたしを助けてくれた時美しく微笑んだ。既に命に関わるほどの大怪我をしていたはずなのに、わたしが助かったことを「よかった」と言ってくれた。

「わたし、あの方には心からには感謝しているんです」

 出来ることなら謝罪がしたい。それ以上にお礼を言いたい。でも、それは叶わない。わたしはこの想いをずっと抱えているしかない。たったひとりきりで。

「あなたを助けた騎士団長は……」

 想いを押し殺すために噛んだ唇が鈍い痛みを訴え始めた頃、世間話でもするような口調で宰相様は語り始めた。

「我が国最強の騎士で、英雄となるべき方でした。生家の身分はそれほど高いわけではありませんでしたが、実力で……いえ、実力とその強運で騎士団長までのぼりつめた方です」

「強、運?」

「はい。先ほど生家の身分はそれほど高くないと言いましたが、その後、騎士団長は前王弟の娘、つまり私の姉の目に止まったのです。私の家は既に私が跡を継ぐことが決まっていましたが、姉を相手方に嫁がせることに抵抗のあった父は、王であった叔父と彼に適当な名目で身分を与え、その実力も認めて重用しました。そして何年もの時をかけ周囲にも実力を示し、今回のドラゴン討伐の際についに騎士団長に抜擢されたのです」

「じゃあ、今回の討伐って……」

「彼にとって……最初で最後の晴れ舞台でした」

 喉の奥が焼けた。それまで彼のために紡ぎたかった言葉が全て焼け、先ほど食堂で聴いた天使ちゃんの言葉だけが何度も心の中を巡る。

『わたちね、ちょっとまえまでこのくにでいちばんつよいのはパパだってしんじていたの。ドラゴンたいじだって、へいかじゃなくて、パパがえいゆうになってかえってきてくれるってしんじていたの……。でも、パパはかえってこなかった……。えいゆうにはなってくれたけど、わたちのところにかえってきてくれなかった……。わたちもママもなきむしだから、パパはかならずわたちたちのところへかえってくるよってやくそくしたのに……。

パパがいなくなってね、ママまいにちないているの。わらうことなんてなくなったし、ごはんだってたべてくれなくなったわ。……ママには、パパがひつようなの。どんなあぶないところへいっても、かならずかえってきてくれるつよいパパが……。だから、わたちはへいかがいい。へいかはつよいでしょ? きっと、なにがあってもわたちたちのところへかえってきてくれるわ……』

 肩を震わせ、絞り出すようにそう告げた天使ちゃん。その瞳には一滴分の涙も溜まってはいないのに、泣いているように真っ赤に染まっていた。






 ども、お久しぶりです。可嵐です。

 さすがに2ヶ月更新していないのはまずいと思いがんばりました。久々の更新が重めのお話でもうしわけありません。

 物語はわたしと一緒に、少しずつ進んで(リハビリして)行く予定ですので長い目でお付き合い頂ければと思います。


 またこの物語は未だ一切登場人物の名前が出ていません。これは実は名前を決めかねたまま始めてしまったからなのですが、わたしは「まあ最後に二人が名前とか呼びあえればいいな」と思っております。(ちなみに素敵な、ぴったりな名前がありましたら提案して下さっても構いません←)読みにくさもあるかと思いますが、その点ご容赦頂ければ幸いです。


 ではでは、読んで頂いてありがとうございました!

 また次回!


  可嵐

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