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国王陛下は傷心中  作者: 可嵐
とりあえず何か食べましょう
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 人から恨まれる理由は、昔から自覚しているつもりだった。

 カッとなりやすい性格、キツい口調、極めつけは死神体質。両親は家族でレジャーランドへ出掛けた帰り道に事故でなくなったし、恋人もやっぱり死んでしまった。友だちも、親せきだって、わたしと関わったのと同じくらいの回数の入院や怪我をしていると思う。だから、恨まれてもひとりぼっちでもどうしようもない。そこは諦めている。

 でも、今回だけは理不尽だと叫びたい。


 ◇


 ふかふかの絨毯が敷き詰められた広い廊下をゆっくりと歩み、弾丸さえ易々とは通過出来ないだろう重厚な扉の前に立つと、両側に立っていた兵士がわたしの代わりにその扉を開けてくれた。この奥は“太陽の間”、王族が朝食を食べるための食堂である。

「おはようございます、陛下」

 数歩前進し、覚えたばかりの礼をとる。わたしの拙い礼に、すでに食事を始めていた男性は全身を震わせてテーブルを叩いた。

「またお前かっ! お前の顔なんぞ見たくもないと、何度言えば分かるんだっ!」

 口答えは死罪にあたると教えられたので、陛下の暴言は聞き流して正面に座った。すでに整えられていた朝食は今日もとても美味しそうだ。軽く手を合わせてから、ナイフとフォークを手にする。この世界に『あなたの命を頂きます』と手を合わせてから食事を始める風習はないらしいけど、生粋の日本人のわたしとしては譲れない儀式だ。

「黙ってないで、なんとか言えっ!」

 ふわふわとろとろのオムレツを口にしようとしたところで、痺れを切らせた陛下に“命令”された。

 命令に逆らっても死罪。

 それも既に教え込まれている。口に運びかけていた手を下ろし、わたしは深く溜息を吐いて言った。

「陛下、本日もお元気そうで安心いたしました。わたしはお腹が空いておりますので、食事を頂いてもよろしいでしょうか?」

「そういうことではないっ! ここまで言われて悔しくないのか、お前はっ!」

「……悔しくないこともありませんが、わたしはまだ命が惜しいので必死で堪えております。どうぞ、お気になさらず」

「……よい、思っていることを話せ」

 なんて言いつつ舌打ちしている辺り、隙あらば殺そうと思っているよね。でも、わたしあなたに殺されるつもりはないから。

 お許しが出たので食器を置いて背筋を伸ばす。そしてはっきりと言った。

「では、恐れながら言わせて頂きます。陛下がわたしの顔を見たくないのであれば、早々に国の風習を変えるか、ここから追い出して下さい。わたしだって毎朝毎朝そう罵られたくはありませんので」

 その台詞に再び陛下の怒りが頂点に達した。

「それが出来れば苦労はないわっ!」

 急に席を立って叫ぶ陛下に、食事の世話をしてくれていた侍女がビクリと身を固める。

 可哀想に……。

 陛下のせいで罪のないものが傷付く。彼の世話をする侍女やわたし、そしてシェフが一生懸命作ってくれた朝食も。そんな沢山の傷に構うことなく、陛下は部屋を立ち去る。主のいなくなった部屋に静寂が落ちた。

「ちょっと、いいかな?」

 それを打破すべく、わたしは固まっていた侍女を呼んで陛下の残した分の朝食をサンドイッチにするように頼んだ。サンドイッチはこの世界にないらしく、そのニュアンスを伝えるのには苦労したけれど、優秀なシェフはわたしが食事を終える頃には見事に“サンドイッチ”を作り上げてくれた。

 侍女やシェフに丁寧にお礼を言い、太陽の間を後にする。侍女に導かれながら貸し与えられている部屋へ戻る道中も投げかけられる視線が痛い。

 仕方ない、よね……。

 日本にいた時と同じ、この国での自分の立場も分かっている。

 この国でのわたしは、騎士団長が命を張って助け出した奇跡の少女。“竜から出て来たお姫様ドラゴン・プリンセス”だ。





 ども、お久しぶりです。可嵐です。

 はじめましたの方は初めまして。


 水遊びさんとりょうさんとお約束をして「恋愛大賞」に挑戦するべく、新連載を開始しました。色々スランプでなんともぼんやりした書き出しとなりましたが、彼らのお話を通してわたしもリハビリテーションしていければ…と思っております。お暇な時にでもお付き合いお願い致します。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


 ではでは、読んで頂いてありがとうございました!

 また次回っ!


  可嵐

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