シリーズものには異彩を放つ作品があった方が良い。
「機動警察パトレイバー2 the movie」(通称「パト2」)という映画が好きだ。1993年公開の作品であり、リアルタイムに劇場で観てはおらず、後年になってレンタルビデオで鑑賞した。
学生時代、少し古いアニメ雑誌を読むのが好きだった。学校の図書室にアニメージュやらニュータイプといった雑誌が置いてあったのだが、最新号ではなくあえてバックナンバーに手を出していた。
ただし、古すぎるものは琴線に触れず、なんとなく記憶に残っているくらいの距離感の内容を読むことを好んでいたように思う。パト2のことを知ったのもアニメ雑誌の特集を読んだからである。
その当時の私のパトレイバーに関する知識といえば、小さい頃に近所の友達が持っていた玩具がせいぜいだったが、子供ながらにカッコ良いデザインだと感じていたように思う。当時はおそらくテレビアニメが放映されていたのだと思うが、生憎と縁がなく、映像作品として観たのはパト2が初めてだった。
特集の詳しい内容は覚えていないが、様々なアニメ映画を通じて、都市のあり方に言及するような内容だったと思う。当時は背伸びをしたい年頃だったので、大人向けと呼ばれるような作品に積極的にチャレンジしたいという気持ちが強かった。そして、雑誌で特集を組まれるような作品はきっと格調高いに違いないと認識していたのである。
そういった経緯でパト2に突撃したところ、よく分からないが、何か凄いものを見せられた気がするというのが率直な感想だった。
劇中で描かれるのは東京を舞台にした戦争、テロ行為であり、正直言って、誰が何ためにこの事件を起こしたのか、主人公たちの行動により何か決着がついたのか、よく理解できなかった。
だが、セリフの一つ一つ、映し出される情景の一つ一つが妙に印象深く、記憶に残り続けた。魅力をわかりやすく説明することが出来ないが、何だかトータルとして好きになってしまった映画である。
さて、この「パト2」、パトレイバーシリーズのファンの間でも賛否両論を巻き起こしている作品である。ある人はシリーズ最高傑作であり、日本映画最高傑作とまで言うが、またある人はシリーズをぶち壊した駄作、監督による作品の私物化だと嫌悪する。
パトレイバーシリーズはメディアミックス作品として世に放たれたものであり、明確な原作というものは存在しない(たまに漫画版を原作と勘違いしている人もいるが、あくまで漫画という媒体で展開されるシリーズ中の1作に過ぎない)。
あえて言うならば、最初に世に出たOVAが原作という位置付けかもしれないが、その後放映されたテレビアニメシリーズとは設定が異なり、劇場版も明確にどの作品の続きとは言及されていなかったように思う。
つまりは、ある程度自由度を確保されたシリーズと言えるのであるが、そんな中にあって「パト2」がかなり異彩を放つ作品であることは間違いない。
シリーズものが様々な理由で徐々に衰退し、ある時期にふっと姿を消すということは珍しくない。
パトレイバーシリーズはすでに30年以上続いているが、現在も新作が劇場公開されている。猛烈な勢いはないが、なんだかんだで息が長いシリーズである。
昔からの根強いファンがいるということもあると思うが、ある程度新規ファンも入ってきていることが長生きの秘訣のように思える。そして、ご新規さんがシリーズに興味を持つきっかけとして、「パト2」という作品がそれなりの役割を果たしているのではないだろうか。
シリーズものの作品が既存のファンに優しいものばかりになると、外側にいる人は気後れしてしまい、中々近づいて来れなくなるように思える。内輪受けばかりを重視しているとシリーズは硬直する。
この点、「パト2」はファンの間でも賛否両論であり、内輪だけで完結しないエネルギーを持っているように感じる。好き嫌いがあるのは当然である。みんなが同じ方向を向いて楽しんでいるというのも、作品として健全な状態とは言えないように思う。
自分が好きなシリーズだからこそ、シリーズの存続を願い、時には異物と思えるような作品を受け入れるくらいの気概があっても良いのではないだろうか。終わり




