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白雲の色彩

作者: イプシロン
掲載日:2026/06/01


  (つと)に知った夜の雲は目にそれほど白くなかった

  こそこそ冷たい風が渦巻いて不安の塵埃が居座って 

  崩れかけた壁の洞穴にじわり闇が満ちていった

  それでも止まらない足は確からしさを求め流離(さまよ)いつづけ 


  月光をふり払って都会の燦光(さんこう)のなかへと溶け入る 

  あらゆる色という色は怪異であり死んだ妖怪であり

  住みなれた身体(からだ)本然(ほんぜん)を脱いで内蔵をさらけ出している 

  あらゆる恐怖に襲われ目を(つむる)も逃げ場のない恣意が息づき 


  支配され侵食され懐かしき我が家の方角を探ろうとするも 

  悪霊(あくれい)とも守護霊ともつかぬ思惟の煤煙が血管をのたうって 

  あらゆる光と(いろ)が四肢を貫き唾液腺や虫垂を駆け抜けると 

  漆黒に浮かんだ角の欠けた月は色を失い形だけを残して


  燻っていた――おお神よ! 嫉妬深い神よ! なにをしたのだ!

  (まろ)やかな白雲(しらくも)をなぜ奪う! その咆哮とともに心臓に独占欲があった



    "The Chromatics of White Clouds"


  The clouds of night I knew were not quite white,

  Cold furtive winds stirred dust of hidden dread.

  Dark seeped through hollow walls devoid of light,

  Yet still my feet sought certainty ahead.


  I cast aside the pale lunar gleam,

  And drowned within the city’s lurid fire.

  All colors turned to specters in a dream,

  While nameless terrors breathed through dead desire.


  Possessed, consumed, I sought my distant home,

  Yet ghostly smoke crawled writhing through my veins.

  All light and hue pierced through my flesh and bone,

  Until the fractured moon lost all its stains.


  It smoldered there—O jealous God on high!

  Why steal white clouds? My heart cried: “Only mine!”

  ※14行ソネット形式シェイクスピア

  脚韻:ABAB CDCD EFEF GG

  とにかく便利な形式

  起承転結になっているから

 

  日本語で脚韻をふむのは非常に難しい

  母音が5つと、踏みやすい子音に限りがあるから

  英語のようにバリエーションがないのだ

  なので、あんまり拘ると病気になりかねない

  五歩格・六歩格を参照し

  日本語では22~28拍前後を基準とした


  とはいえ、最後は音韻と呼吸が大事

  これは日本語詩ではかなり本質的だろう


  英語訳詩は脚韻あり

  ただし完全韻ではなく、半韻・子音韻・音響対応で補完した


  近代英詩では、シェイクスピア時代ほど

  強固な脚韻文化は残っていない

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