エピローグ
教室の扉が空く。
教師が入って来くると真面目な生徒は席につき、不真面目なアッカズはぐーすか眠る。
「静まりなさい。朝から無意味なおしゃべりをぎゃあぎゃあと。動物園ですか、ここは」
わりと動物園だよ。
教師は眼鏡をくいっとあげた。
「本日は王立動物園に、新たな仲間が加わります」
最前列の男子生徒が「何匹ですかー」と声をあげた。
「一匹よ。さあ、入ってらっしゃい」
からりと扉の開く音。生徒たちのどよめき。
「すげえ」「かわいい……」「え、天使?」「推せる」などなど。好意的な鳴き声だ。
心底どうでもいいのだが、一応ニューフェイスの面を拝んでやるかと、顔をあげる。
天使が、いた。
照明を受けた金髪は光輪を描き、柔らかな新雪を思わせる皮に、無骨な男子用の制服。
「ユウ・リンドバーグです。出身はここの国じゃないんですけど……家が、いろいろあって引っ越してきました。よろしくお願いします」
男子たちはアイドルに向けるような歓声を、女子たちは黄色い喝采を惜しみなく浴びせかける。
「そうですね、席は……」
「あそこがいいです!」
転校生は控えめな見た目とは裏腹に、教師の指示も聞かずに飛び出した。半円に並べられた椅子の間を潜り抜け、俺の隣へ。
「クロア」
「……いや、来んなし」
「隣、いいよね」
「話聞けよ」
言っても聞いちゃいない。
ユウ・リンドバーグは隣の席に腰を下ろす。
「これからよろしくね」
ユウはとびっきりの悪戯が成功したみたいに、無邪気に微笑んだ。




