第三話
「良い取引だったな!」
「ふぁぃ……」
あれから何度手を叩いただろう。
目の前には大量の酒瓶と金貨がどっさりつまった革袋。
これやらかした?
「深くは聞かねえが、まぁ早めに町は出た方がいいだろうな?」
「あの、私がここにいたことは……」
「言わねぇよ。あんな家よりおまえの方が良い取引先だ。」
ドワーフのおじさん……ドノガンさんはすごく良い人だった。
酒を出しつついろんな事を話してしまったが口は固いと信じたい。
それとなくあることも聞いてみたが
「ちょっと待っとれ」
そういって部屋から出て数分
戻ってきたときには1本の鎚を持っていた。
「これを出せばわかる奴はわかる。あっちの方はまぁ、大丈夫だろう。」
渡された鎚を受け取り、聞いていたのはドワーフの女性について
これからマリーという名を捨て旅するにあたり、新しい身分を名乗るときにドワーフを名乗ろうかと思ったが、この世界におけるドワーフの女性の特徴が私とあっているのかを知りたかったのだ。
結果は良好
この世界のドワーフの女性は背が低く、人の子供ぐらいの背丈
その体躯に見合わない力持ち、そして男女問わず酒好き。
私自身力持ちではないが、酒好きと言うところが個人的にポイントが高い。
「それにしてもあの家……おまえ含めた姉妹はまともなのに……なんなんだ親は」
「……仕方ないですよ。私には才能はありませんでしたし、こんな髪で生まれてしまいましたから。」
今は短くなっている髪に触れる。
屋敷を出るときになにかここに居た証拠がでないと不味いと思い、髪を切り落として来たのだ。
「それでもなぁ、……まぁこれ以上言っても仕方ないか。今日は泊まってきな。従業員用の空き部屋を貸してやる。それに明日旅に出る用の買い物も後で届けてやる。」
ドノガン……ありがとう……
感謝をのべつつ空いている部屋へ案内して貰った。
時間が経ち部屋でくつろいでいると
「荷物はどうするんだ?」
ドノガンが大量の荷物と共に現れた
「あっ、これがあるので大丈夫です!」
そういって空へと手を伸ばすと肘ぐらいまでが空間の割れ目にのみ込まれる。
「……本当にアイツらは火の魔法しか見とらんのだな」
「あ、えっと、まぁ、この魔法は最近出来るようになりまして……」
マリーへと転生した時に生えたひとつのスキル
ゲームではお馴染みのアイテムBOX
時間も止め、温度も保つぶっ壊れだ。
この世界にもそういう魔法はあるらしいがそれとは訳が違う性能だ。
まだ正直使いこなせてなく、お酒の保管庫になっている。
「とりあえず旅に必要なものはこれくらいか。金貨は危ないからそれにいれとけよ。」
ドノガンにお礼を言って、貰った荷物を確認して詰め込んでいく。
明日からの旅に心震えながら月が昇りきる前にベットへと潜り込んだ。
ーーーーーーーーーーー
妹が……私達の妹が死んだ。
あの日、朝から騒がしいと思っていたが、その光景を目にした途端
私とお姉さまは膝から崩れ落ちた。
親や大人達から蔑まれ、傷つけられていた妹の屋敷が燃えていた。
その炎は最早取り返しのつかないぐらい屋敷を燃やし、私とお姉さまは見つめることしか出来なかった。
父と母は……笑っていた。
もうあの忌まわしい子は居ない
やっと居なくなったのね
と、その言葉が聞こえたときはからだの中の熱が二人を燃やし尽くしてしまいそうだったが、それを止めたのはお姉さまだった。
一番あの娘を気遣って、助けるために奔走していたお姉さまに止められた。
「私はもう…………貴女しか家族は居ません……あの二人は……家族じゃない。」
涙と共に紅く紅く目が燃えていた。
私はお姉さまに抱きつき、二人していつぶりかと涙を流した。
今日だけは泣かせてマリー……
あれから数ヶ月……
燃えた屋敷は跡形もなく取り壊され、そこにはなにもなかったかのように広場が作られていた。
あの娘の痕跡は……もうない。
今日は久しぶりに町に出て頼んでいた剣をとりに向かう。
あの娘にも話したこともあるドワーフの鍛冶屋だ。
「おう。出来てるぞ」
この国……いや、この世界でも数少ない名工と呼ばれる鍛冶師のドノガン
最近この国を出ると噂がたっていたが私の依頼はなぜが受けてくれていた。
「いつもすまない。……ところでドノガン殿……この国から去ってしまうのか?」
「……あぁ、知り合いのじょうち…いやうまい酒を飲みに行く場所があってな。ここ数日のうちに出ようと思っている。」
「そうか……出来ればこの町にのこって貰いたいのだがな……無理強いは出来ない」
「……まぁ、今回は数日空けるだけだが、将来的には行く場所がある。」
「貴方の旅に神のご加護を……まぁ、心配ないでしょうが……」
「ありがとな。……戻ってきたらちょっと話がある。お前の姉ちゃんとも話したいんだが大丈夫か?」
「問題ないが……行く前に予定もつけれるが……」
「いや、まぁ、戻ってきたらな。まぁ、また連絡を入れる。」
ドノガン殿から剣を受け取り、鍛冶屋を後にする。
話したいこととは何だろうと考えながら帰路に着く。
この出来頃から数日後、私とお姉さまは歓喜に沸く事になるのだが……
それはまた別のお話で




