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午前二時二十二分のメッセージ

午前二時二十二分の訪問者

作者: 須堂さくら

午前二時二十二分のメッセージ(https://ncode.syosetu.com/n4014kb/)の関連話。

やあ、こんばんは。泣いているのかい?

ワタシ?見ての通りさ。名前?ブチでもクロでも、パンチでも、好きなように呼ぶといい。猫というのはそういうものだ。え?ケンタ?なかなか珍しい名前をつけたね。

それで、こんな夜中にそんなに泣いてどうしたんだい?

パパが?

あぁそうか、パパが死んでしまったんだね。

あぁほらそんなに泣いて、目玉が溶けて流れてしまったら大変だ。

溶けない?そうかな?分からないだろう?

……うんうん、そうか。寂しいんだね。

もっと遊びたかったし、たくさんお話ししたかった?そうだろうそうだろう。


それじゃあ、寂しくて眠れない子供のためのおまじないを教えてあげよう。もう少しだけパパのお話を聞けるおまじないだ。

パパに聞きたいことがある?残念ながら、それはできない。ただパパがキミにお話ししてくれるだけさ。

それでもいいならおまじないを教えてあげよう。


うん、そうかい。


カセットテープは持っているかい?三十分位がいい。使えるのは、カセットテープ一つだけだ。新品のカセットテープを用意して。六十分?それだと片面だけになるな。四十六分?ふーむ……。一か月と二週間と少しか……。まぁ、ギリギリそれくらいまでならいいだろう。

外の声が録音できるレコーダーは持っているかな?それは良かった。

おまじないに必要な道具はその二つだけだ。


やることは簡単さ。午前二時二十二分。大体今くらいだね。その時間に、レコーダーにテープをセットして、録音ボタンを押す。一分経ったら録音を終わらせる。そうしたら、パパの声が一分間、テープに吹き込まれているというわけだ。不思議かい?そうだね、そういうおまじないなんだ。

何故二時二十二分かって?それはね、パパを連れてくるのがワタシたち猫だからさ。にゃんにゃんにゃんと、猫の鳴き声がする時間というわけだね。

猫は九つの命を持っているっていう話は聞いたことある?七代祟る?それもまぁ、似たような話かな。そうさ、ワタシたちは命を複数持っている。必ず九つというわけでもないのだけれど。中には百万個持っているような奴もいるし。ワタシ?ワタシはどうだろうね。ふふふ。

まぁとにかく、いくつも命を持っているから、一度死んで天国に行っても、また生まれてくることができるわけだ。そう、ワタシたちは天国の場所を知っているのさ。だからそこからパパを連れてきて、連れて帰ることもできる。

納得できた?


そう、良かったよ。


おまじないにはいくつかルールがある。これも覚えていなければいけないよ。ルールを破ってしまったら、もうパパの声を聞くことができなくなってしまうからね。分かったかい?そう、いい子だ。

まずは、声を録音するのは無音の部屋でなくてはならない。外の音がちょっぴり入るくらいは仕方ないけれど、キミが声を出したりするのはダメだ。パパの声はとても小さいから、別の音が入ると聞こえなくなってしまうからね。小さい声でしゃべったら?ふふ、それでもダメさ。それにパパの声は直接キミの耳には聞こえないから、会話をすることはできないよ。……そうだね、残念だね。

それから、録音するのは一分間だけ。もしもそれ以上続けてしまったら、パパの魂は天国に帰ることができなくなって、永遠にさまよい続けることになってしまうからね。それなら一緒にいられるかもって?キミは怖いことを考えるなぁ。もしも一緒にいても、姿も見えない、声も聞こえないじゃあ、一緒にいないのと変わらないだろう?……そうだね、寂しいね。

そして、録音をするのも、パパの声を聞くのも、キミ一人だけでやるということ。ママ?ママもダメだ。これはキミだけのためのおまじないだから、他の誰かと共有してはいけないよ。やり方を教える?ふーむ……。ダメなことではないけれど、あんまりおすすめはしない。猫と仲良くない人は、おまじないを成功させられないからね。ママは猫が好き?それでも、猫がママを好きとは限らないしなぁ。それに、大人がおまじないを成功させるのはとても難しいんだ。どうしてかって?さぁ、どうしてだろうね。


それから。


それから。


覚えられたかな?え?忘れてしまいそう?頑張って覚えておくんだ。大事なルールだからね。ほんの少し位なら破っても何とかしてあげられるから、頑張って。

さぁ、子供はもうとっくに眠っている時間だ。そろそろ目を閉じて。

大丈夫さ、明日になったらきっと少しだけ、心が軽くなっている。何しろパパの声を聞くおまじないを君は知っているんだからね。

うん?分かったよ。キミが眠るまでそばにいてあげよう。

そうだ。目を閉じて。

キミ、案外力が強いなぁ。潰されてしまいそうだよ。

フフフ、冗談だ。


……目覚めたら、僕のことは忘れるんだよ。


ゆっくりおやすみ。

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