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第八話 日記

 空洞にあった古びた日記を開く。

 そこには日本語で書いてあった。確かに俺のように転移した人が今までも居たとするならば日本語で書かれているものがあってもおかしくは無かったことだ。

 しかし、ここまで難易度の高い洞窟となるとこの日記の著者はどれほどまでに強かったのだろうと期待に胸を躍らせた。

 ページをめくってみる。


 異世界転移1日目


 今日から日記をつけようと思う。まぁ、理由は特にはないが、そちらの方がいいだろうと思ったからだ。

 私は今日異世界のクジムウェルという王国に来てしまった。このこと自体は別にいいのだが、この世界の最強の存在、魔王を私たちに倒せというのだから嫌になってしまう。まぁでもこの異能、あの国王、グライス・ガルハイドとかいう老人によるとこれは異世界の人の特権らしい。と、夜も更けてきたし、ここまでにしておこう、明日から訓練だというがどれほどのものなのだろうか……。


 日記に書いてあったことは、ある程度俺達と同じような境遇だった。

 転生して、訓練を受けて、遺跡で俺と同じように捨てられた人がいた。ということだった。


「グライス・ガルハイド? じゃあ今のは3世とかなのか?」


 と、同じ名前を見て首を傾げながらも日記を読み進める。


 異世界転移62日目

 今日は仲間が一人減ることとなった。団長はなんの問題もない遺跡探索だと言っていたのに、急に団長が佐藤を殺しやがった。クソ、クソクソクソ、佐藤が何をやった? 弱い? そんなことでか? 王の命令だかなんだか知らないが私はもう……


 異世界転移75日目

 今日女神を名乗る奴が現れた。立ち振る舞いや能力からして本当に女神だと思うが、信用できない信用してはならないのだ。あいつが何か不審な動きをしたら私は奴を殺す。


 異世界転移693日目

 やった、やっとだ、今日この日、やっと魔王を討ち倒すことができた。これで死んでいった仲間も救われる。そして私達は元の世界に帰還できる。やった! やったぞ!


 異世界転移694日目

 私は彼が、最初に仲間が死んだ遺跡の奥深くに居る。周りには人の死体、死体。死体で埋め尽くされていた。生き残った25人が一斉に落とされたのだからそりゃそうか。だが、魔王を倒して浮かれていた。怪しい女神の存在をそれに裏切り者の可能性を考慮していなかった。何がもう必要ないだ、絶対に殺す。あの女神を。


 異世界転移×××日目

 もう何日この洞窟にいるのだろうか、わからない。神の庇護の届かぬ場所であるこの洞窟に。しかし、状況は一転した庇護を受けれる場所が一つだけあったのだ、ありがとう神、死ね女神。


 異世界転移×××日目

 何か、何かないか? あの女神を殺す方法……この私の異能<創造>で作れるものの中で、考えろ、考えろ。


 異世界転移×××日目

 私は久しぶりに人に出会えた。小柄な女性であった。彼女は私の夢を聞くと快く協力してくれた。なんともありがたい事だ。やはり、脳はあるだけあれば良い。


 異世界転移××××日目

 ついに、ついに完成した、完成したぞ! 女神を殺す方法を! だが私の命は長くはない。女神を殺すことができない。だが彼女がこれを受け継いでくれると言ってくれた。だから私は未来の可能性に、転移者に託すことにした。その人間の道導となるようにこの日記はここに残しておく。頼んだぞ。


 それから先のページは白紙になっていた。

 筆者が、この後どうなったのかは推測はできない。が、道半ばで息絶えたのだろう。

 俺の手の中にある日記は指先を起点にぐにゃりと曲がる。

 この日記を書いた人物は最期まで女神に届かなくて悔しかっただろう。

 だが、悔しくても次に託す。そう思わせるほどに恨んだ女神はどんな……。

 この日記を読んだところ女神は恐らく他の勇者とは道が外れた俺を殺しに来るだろう。

 それまでにこの日記にあった女神を殺す方法を探さなくてはならない。


 俺は再び洞窟の出口を探し歩みを進めた。

 数時間歩くと空の瓶が落ちていた。

 見るとその瓶にはあまり汚れは無くつい最近ここに捨てられたといえるものだった。

 そのすぐ近くには新しい血痕とちょっとしたクレーターのようなものがある。


「ここって俺が落ちてきた場所か?」


 俺は頭上の闇を睨みつけ、岩壁に足を埋め込ませる。

 そうして壁を駆け上がった。

 もう少しで目的地に辿り着けるというときにぐらりとバランスを崩す。


「くっ、風よ蹴散らせ【風の衝撃(エアショック)】」


 風を発生させて身体を起こした。

 そして、見覚えのあるあの崖へと着地する。


「またここに来ることになるとはな」


 そうして俺は先日クラスメイトと通った道を記憶を頼りに戻る。

 所々でゴブリンなんかと出くわしたがなんら相手にはならなかった。

 帰り道を懐かしんでいると出口が見えた。

 外からは月光が漏れ出ていて、ほのかに風が吹き込んでいる。

 外に出て肺に空気を送り込む。


「やっぱ新鮮な空気ってのは良いな」


 あたりを見渡すと青々とした草原が広がっている。

 空には満月が光り輝いていた。


「なんともまぁ吸血鬼らしいじゃねえか」


 王都に行くと面倒臭い事になると思うため、逆方向に行く事にした。


「それじゃあ行くか」

読んでいただきありがとうございました。誤字脱字報告よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
日記の内容から主人公よりも前に同じような人が居ると言う事実と女神に復讐を彼は今後、どのようにするのだろうと想像出来、次の話が楽しみになります
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