第七話 懐かしいもの
俺はひたすら歩いていた。
何処かはわからない暗闇の中を歩く。
いくらか歩いた後、分かれ道に差し掛かる。
右は眩いばかりの強い光。左は全てを飲み込むほど暗い闇だった。
俺は光の方へと手を伸ばす。が、心がそれを拒否する。
逆に、闇へと手を伸ばすと不思議と心が軽くなる。
俺は安らぎを求めて闇へと進んだ。ふと、後ろを見ると誰かが見えたような気がしたが、別に構はしなかった。
闇の中の深いところ、深いところへと進んでいく……。
「くはっ!」
意識が唐突に覚醒した。目を覚ました場所がふかふかのベットであれば良かったが、俺は硬い岩の上に座り込んでいた。
朧げな視界の中、辺りを見回す。
ひどい悪臭を感じ、顔を顰めた
ふと、地面についている手に何やら岩とは違う感触を感じた。
そこに目をやると何やら赤くなっている。
その赤は何処からか続いてるようで辿って行った。
「うわっ!!」
辿った先には
白と赤が混じってぐずぐずに腐っている肉の塊だった。
その様子から先の狼であることがわかる。が、
「一体、何があったんだ? 縄張り争いとかか?」
頭をガシガシと掻いて考えたが、何か答えが出るわけでもなかった。
「そんなことより、まずは当面の問題を解決しないとだな」
全身を見渡す。すると、服は着ておらず裸の状態であった。
こうして見てみると吸血鬼になったことによって筋肉がついたことがわかる。
腹筋も割れていて、腕も見違えるほど発達している。
この状況ではそのようなことを考えているべきではないのだろう。
だが、そういうことばかりに意識が偏ってしまう。
とりあえず俺は出口を探して歩き出した。
しばらく歩いた後、二足歩行の牛に出会った。
元の世界ではミノタウロスなどと呼ばれそうなほどであったが、一つだけ違うところがあった。
「腕が四本生えてるんですけど……」
ミノタウロスは俺を確認するや否や四本のうちの一本で殴りかかってくる。
それを身を捻って躱す。すると躱した先に腕が二本三本と伸びてくる。
二本目は飛んで避けれたが、三本目の直撃を受けてしまう。
そのままに後方に吹き飛び石壁に激突するが、痛みはない。
すぐに体制を立て直し、ミノタウロスに向かって走る。
そこをすかさず殴ってきたが、腕に片手をつけ飛び乗る。
そのまま腕をつたってミノタウロスの下に走った。
その間、ミノタウロスが攻撃を入れたが、それらを刹那の間で避けた。
―――遅い。
ミノタウロスの動きが遅く見えるつい先刻の狼に比べ明らかに速度でも力でも劣っていた。
そのまま俺はミノタウロスの顔面を殴打する。
ミノタウロスはその衝撃によってバランスを崩す。
その隙を逃さず間髪を入れず、殴り続けた。
10発もいかないころミノタウロスの顔はぐしゃぐしゃに原型を失っていた。
手応えがなかった。
己が強くなったのか、ミノタウロスが弱くなったのかわからなかったがとても戦っているとは思えなかった。
先の戦闘のことで少し考察した後、歩みを進めた。
道中、人骨が服を着ていたのでその服を拝借した。
ボロボロだが、無いよりかはマシであろう。
進んでいると、不思議なことに魔物が現れなくなっていた。
たまにバッタリと出会うことはあるのだがこちらを確認するや否やすぐさま踵を返してしまう。
先程の戦闘が原因なのか、魔物達にはこちらの力量を測る技術があるのかは定かでは無かった。
しばらくして、石壁にもたれかかって休もうとした。
何かが吸収されている感覚があった。
「これは……魔力が……」
そのまま触れ続けていると石壁は段々と透明になっていき、消えていった。
そこはちょっとした空洞になっていて、人骨が転がっていた。
人骨の側に目をやると何やら本が落ちている。
表紙にはこの国の言葉で日記と書いてあった。
日記を開きページをめくった。
「は?」
そこには最も長く親しんだ日本語が書いてあった。
読んでいただきありがとうございましたアドバイスや誤字脱字などコメントよろしくお願いします。




