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輪廻転生  作者: 胡坐光良
2/2

時崎輪廻

2024年4月  7時00分


雲ひとつ無い気持ちの良い空


朝早い恋人のために朝食を用意する者、子を送るために支度を手伝う親、夜勤明けにより夢路を辿る者。それぞれの家庭がいつも通りの朝を迎える。


とある一軒家にもまた、いつも通りの朝が訪れる。


「〜〜♪」


2階から聞こえてくる目覚まし時計の音を

BGMにキッチンに立つ男が鼻歌を口ずさんでいる。

前髪が目にかからない程度の黒髪に頭頂部から"十字"に伸びた白髪が特徴的で端正な顔立ちをしている。


「よし、完成!」


3つずつ並べられた弁当箱とスープジャーが用意されている。

保温ができるもののため、先ほど男が作っていたものが盛り付けられ後に熱が逃げないよう蓋がきちんと閉めてある。


「そろそろかな?」


時計を見ると7時4分

目覚まし時計の音が止み、ドタドタと階段をおりる元気な足音が聞こえてくる。

リビングの扉が開かれ入ってくるのは⋯


「おはよう!!!にーに!!!」

「おはよう。カイ」


元気よく挨拶をした少女、時崎(ときざき)カイ

中学三年生で今年から受験生の快活なスポーツ娘。発言の通り、この男の妹である。

例に漏れず、兄に似て端正な顔立ちをしている。


「クンクン...もしかしてこの匂いは!?今日の弁当...!」

「カイの好物のハンバーグだよ。朝食用にも用意してあるから顔を洗ってきな?」

「やったー!!すぐ洗ってくる!!」


洗面所に向かったカイを尻目に男は朝食を盛り付けていく。

準備している間に顔を洗ったカイは戻ってくる。


「ん〜!スッキリ目が覚めた!」

「さっきとあんまりテンション変わってないが...」

「いつも元気がアタシの取り柄だからね!そんなことよりご飯食べよ!!」

「そうだな、冷めないように早く食べるか」

「「いただきます!」」


2人は向かい合って座り、食べ始める。


「うっまぁ〜!やっぱにーにの作るハンバーグは格別だね!今日の部活も頑張れそうだよ!」

「それは良かった。もちろん部活もだが勉強にも精を出さないとな?」

「ウッ...い、いやぁ...今はテニスで忙しいから全力を出しづらいというか...あ、でも全くやらないというわけじゃなくて...」

「ごめんごめん。焦らなくても困った時は俺が付きっきりで教えてあげるから安心しな?」

「にーに...!やっぱり持つべきは最高の兄だね!愛してる!!」

「はいはい、愛してる愛してる。ほら、早く食べないと遅刻するよ?」

「わっ、ホントだ!じゃあにーに、いつものやって!」

「よし、任せときな」


既に食べ終えていた男はカイの要望に応えるため背後に立つ。寝癖がところどころある肩くらいまで伸びた髪を慣れた手つきで梳かしていく。梳かし終えたら耳上の髪を三つ編みにしながら後ろに持っていき、後ろの髪と一つ結びにする。


「これでいい感じかな。たまには自分でやってほしいんだけど?」

「ムリ!一生にーににやってもらうから!」

「いや一生って...さすがに独り立ちしないとだし...」

「は...?いつも言ってるじゃん!にーにはずーっと私と一緒なんだって!」

「えぇ...まぁ、うん、...ズットイッショニイレタライイネー」

「むぅ...すごい棒読み」

「ほら馬鹿なこと言ってないでさっさと準備して登校するぞ」

「はぁ〜...仕方ないなぁ。じゃあ着替えてくるから覗きに来ていいからね。」

「あぁ、わかっ...いや覗かないからな!」


そんなやり取りに区切りをつけ、それぞれ制服に着替えるため自室に戻る。まだまだ新しめな制服に身を包み、髪も整え、1度姿見で確認する。


「バッチリ決められたかな。...っと、時間時間、歯磨かないと」


準備を終え、バッグを持ち洗面所に向かう。


「歯磨き粉そろそろ無くなりそう...替えあったかな。」


黒、青、黄の歯ブラシのうち、青色の歯ブラシで歯を磨きつつ、歯磨き粉を探す。


「あれ、無さそうだな...」

「およ?にーに何探してるの?」


準備を終え、後からやって来たカイが黄色の歯ブラシを手に取る。


「歯磨き粉が無いんだけど、帰りに買って帰ることは出来そうか?」

「えぇ〜...じゃあ一緒に買いに行こうよ。」

「1人でも行けるだろ...」

「チッチッチッ...にーに違うよ。最近この近くで不審者が出るって情報が出てるの。だから1人じゃ出歩きたくないの。」

「なるほど...春先は不審者が増えるって言うしな...わかった、それなら一緒に買いに行こうか。」

「やった!にーにと帰れる〜!...ハッ、もしや不審者が捕まらなければずっとにーにが一緒にいてくれるのでは!?」

「さすがに自治体や警察が対策してくれるに決まってるだろ...」

「ちぇ〜...つまんないの〜」

「不審者が捕まっても一緒に帰れる時は迎えに行くから。まぁ、俺と同じ高校に入れたら毎日でも帰れるかもしれないけどなぁ?」

「アゥ...頑張ります...」

「無理しないようにな?じゃあ歯も磨き終えたし学校行こっか。」


全ての準備を終え、弁当とスープジャーをバックに入れて玄関へ向かう。


「忘れ物ないな?」

「バッチリです!」

「よし!...父さん、弁当机に置いてあるからなー。じゃあ行ってくる〜」

「行ってきます!!!」


まだ寝室で眠る父に聞こえるように声をかけ外へ出る。


「よし!じゃあ学校へしゅっぱーつ!」

「おっと!...いきなり腕にしがみつくなよ...」

「いつもするんだからいい加減慣れてよ!」

「って言ってもなぁ...ご近所さんの目が痛いんだよ。」

「ふふん、気にしない気にしない。見せつけてこ〜!」

「兄妹といえどやっぱ恥ずかしいって。」

「大丈夫だって!...それにあの女に分からせるためにくっついてないとだし...」

「なんて?」

「なんでもない!ただ敵を倒すために必要なことって言ったの!」

「敵なんてどこにいんだよ」

「敵なんて酷いなぁ」

「ゲッ!出たな!」


カイが不快感を剥き出しにした相手。黒髪ロングで世の男性の希望を詰め込んだような女性。


「あぁ、愛那か。おはよう」

「おはよう。」


愛染愛那(あいぜんあいな)。この男と同じ高校に通っていて小学校からの幼馴染。聖母のような性格で男女問わず人気を博している。


「にーに!早く行こ!」

「あ、おい、引っ張るなって!」

「どうせ中学校着いたら私たち二人で駅に向かうことになるんだから置いてこうとしても意味ないのに」

「くぅ〜...やっぱこの女、聖母なんかじゃない!この腹黒オンナ!」

「あらあら、そんなはしたない言葉使っちゃダメだよ?」

「その無駄に持て余した体を使ってにーにを誘惑してるくせに!サキュバスの間違いなんじゃない?」

「してないわよ、そんなこと!」

「どーだか!毎晩こっそり撮ったにーにの写真使って...

「わぁぁぁぁぁ!!!それ以上はダメ!!だったらカイちゃんだって歯ブラシ...」

「お、おい、お前らいい加減に...学校遅れるぞ」




キャァァァァァァァァ!!



住宅街に響く悲鳴

聞こえてきたのはそう遠くない場所


「っ!悪い、先に学校行っててくれ!」

「ちょっとにーに!?」


男は迷いもなく悲鳴が聞こえた場所へと急いで向かっていく。声の元は車の通れない一通りの少ない狭い道。


「お、おい、そんな大声出さなくてもいいだろ!ただちょっと着いてきてくれればいいんだって!」

「やだ!離して...!」


たどり着くと薄暗い灰色のジャージを着た中年男性が女の子の腕を掴んでいるのを発見する。


「何してんだ!!!その子を離せ!!!」

「あ、え?ひ、人が...」


怯んだ一瞬をつき女の子の腕を掴んでいた手を弾いて女の子を後ろに寄せる。


「にーに!大丈夫!?」

「カイ!?なんで来たんだ!!」

「放っておけるわけないでしょ!!」

「くっ...とりあえずその子を連れて離れてくれ!」

「わ、分かった!...きみ、大丈夫?立てる?」

「は、はい...大丈夫です...」

「カ、カイちゃん...早すぎるよ...って、何この状況」

「愛那さん!ここから離れるよ!!」

「え?で、でも...」

「俺のことはいいから離れててくれ!」

「うん...あっ!輪廻くん!あの人ナイフ持ってる!!」

「...俺はただ道案内をしてくれたその子にお礼で家に連れてこうとしただけなのになんで断るんだよォ!!」


錯乱状態に陥った中年男性は懐からナイフを取りだし、男めがけて突進してくる


「危ないよにーに!逃げよう!」

「大丈夫、この対処方法は心得てる!」


ナイフを持って真っ直ぐ突っ込んできた相手に対して正面に立ち、腕を上半身の前に持っていく。腕を使って間合いに入ってきた相手のナイフの軌道をズラし、そのまま手首をつかんで捻りあげる。ナイフを取り上げ届かないところにどけ、制圧する。


「よし、完了。愛那、警察に連絡してくれ!」

「わ、わかった!」


ナイフを持った相手を完封した高校生。


名を"時崎輪廻(りんね)"

カイの兄、愛那の幼馴染。一通り何でもこなし、周りからの人望に厚い男。

武術なんて習ったことは無いし、護衛術も同じだ。しかし、先程の一連の動作を完璧にこなした彼は⋯


一体いつの"記憶(けいけん)"を思い出しているのだろうか




こうして主人公 時崎輪廻の日常は

"いつも通り"過ぎていく⋯

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