女子高生、二宮金次郎になる。
数か月が経ち、一人での生活に慣れ、ようやく身の回りに余裕が出てきた頃、周囲は受験勉強一色という空気になっていた。
正直に言って、元々大して勉強ができるわけでもない私は、家庭環境のごたごたもあり、ろくに勉強などしておらず、かといって学費のかかる私立大学などに通うこともできず、高校をでたら職に就くという選択肢も視野に考える必要があった。悩んだ末、唯一理想的な条件に一致した、とある地方の港町に位置する公立大学へ狙いを定めた私は、遅ればせながら受験勉強を開始した。
そこからの私の頑張りは、なかなかのものであったと自負している。高校へ通うまでのバス内では常に参考書を開き、放課後は図書館に籠り、閉館の音楽が流れるまで教科書をひたすら暗記した。家に帰ってからも深夜アニメが一通り終わる時間帯まで勉強を続ける日々を繰り返した。
挙句の果てに、学校の階段をのぼりながら、古典の単語帳を暗記していた私の姿は、まさしく現代の二宮金次郎と呼ぶに相応しいものだっただろう。その甲斐あって、受験本番では、それまでの模試の点数を大きく上回る結果を残し、半ば勉強ノイローゼ気味になっていた私も、晴れて大学行の切符を手に入れたのであった。