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9.棺を持ち出した犯人

今日と明日は、昼と夜にそれぞれ更新する予定です。


いいねと評価をして下さった方、本当にありがとうございます(深礼)多大な感謝です……!







 時間は少し遡って、スティーナがネークスの町に到着した頃。



 サブルフェード帝国皇城のきらびやかな廊下を、魔道士団団長と副団長が並んで歩いている。

 魔道士団上位であり、長身痩躯で美形の部類に入る二人が揃う姿は、皇城で働く女達の陶酔の的になっていた。


 そんな二人の表情は、副団長がニコニコと微笑みを浮かべているのに対し、団長はブスッと不機嫌丸出しの正反対なものだった。



「ふふっ、イグナート。いい加減その仏頂面仕舞ったら? もう四日もその顔じゃん〜。振られたのは可哀想だけど〜」

「うるせぇ。振られてねぇ」

「トーテの町に行ったら、スティーナちゃん旅に出た後だったもんねぇ。その時の君の慌てっぷりったら……ふふっ」

「うるせぇ。思い出すな」

「彼女がすごく懇意にしている……ドルシラさんだっけ? その人も彼女の行き先が分からないなんて絶対嘘だよね〜。そこまで君に行き先を知られたくなかったんだねぇ。逃げられたと知った時の、君の落ち込みぶりったら……ふふふっ」

「……それ以上言うとぶっ倒すぞ」



 イグナートが切れ長の瞳でギロリとバルトロマを睨みつけると、彼は「怖い怖い」と言いながらもニヤけている。

 表情をあまり見せないイグナートが、焦ったり落ち込んだりと顔付きが次々に変わる様を楽しんでいるようだ。


「君が魔力を追えるってスティーナちゃん分かってるんだろ? だから居場所を知られない為に魔法を使わないようにしてるんだと思うけど、道中は魔物も出るし、危なくなったら流石に魔法を使うと思うよ。その時にスティーナちゃんの居場所が分かるからさ、気長に待とうよ」

「アイツがそこら辺の魔物にやられる訳ねぇのは分かってるが……。くそ、早く誤解を解きてぇのに……」

「あっ、そうそう! 魔物と言えば、ネークスの町にブラックドラゴンが現れて討伐要請が届いたんだって」


 バルトロマの言葉に、イグナートは軽く目を瞠った。


「それは本当の話か? ドラゴンは知能が人並に高く、無駄な争いは好まない。自分の縄張りから滅多に出なくて、今まで人間を襲う事はしなかった筈だ。一体何があったんだ?」

「う〜ん……。僕も詳しくは分からないけど、もう一匹ドラゴンがいて、そのドラゴンがブラックドラゴンの襲撃を防いでるんだってさ。討伐隊も忙しいから、まだ問題無いだろうって判断して後々にしてるみたいだよ」



 討伐隊は、魔道士団と騎士団からそれぞれ編成された、町や村に現れた魔物を退治する専門の部隊だ。

 サブルフェード帝国全土に派遣する為即時対応が難しく、緊急性の低いものは後回しになる事が多い。

 危険な魔物は、団長や副団長クラスの者が討伐に向かう。



「ドラゴンは他の魔物よりかなり強力で驚異的な力を持っている。その判断間違ってないか? いくら同じドラゴンが防いでるとは言え、下手すりゃ町が一つ滅ぶぞ?」

「だよねぇ。しかもネークスの町って、トーテの町の隣に位置するんだよ。もしかしたらスティーナちゃんがそこに向かったかもしれない――」

「おいバルト。お前『移動ロール』持ち歩いてただろ。貸せ。今すぐ寄越せ」

「ちょっと待って落ち着けって! スティーナちゃんがそこにいると決まった訳じゃ――」



「あらぁ〜? そこにいらっしゃるのはぁ、イグナート様とバルトロマ様ではありませんかぁ〜?」



 イグナートとバルトロマが『移動ロール』の取り合いをしている時、かなり間が抜けた口調の声が耳に聞こえてきた。

 バルトロマはその声に瞬時に姿勢を正す。



「帝国第一皇女、ペラギア・ドム・サブルフェード様にご挨拶申し上げます」



 バルトロマが先に挨拶をし、敬礼をする。それに対し、イグナートはただ軽く頭を下げただけだった。


(イグナート〜! いくら皇女様を心底嫌っているとは言え、挨拶はちゃんとしなよ〜! 最低限の礼をしたのは偉いけど!)


 イグナートは真顔だったが、不機嫌オーラが隠し切れていない。バルトロマは内心ハラハラしながらペラギアに向き直った。

 レッドブラウン色のウェーブの入った髪に、少しふくよかな体型の彼女は現在十九歳だ。

 勝気そうな吊り目の瞳は、イグナートを熱い眼差しで見つめている。

 後ろに二人の侍女を引き連れた彼女は、満面の笑みで再び口を開いた。


「こんな所でお会いできるなんて嬉しいですわぁ〜。やっぱりワタクシ達はぁ、運命の糸で結ばれているのかしらぁ〜? ねぇイグナート様ぁ〜?」


 異様に間が伸びた猫撫で声は、かなり不愉快だ。

 バルトロマがそう思っているのだから、イグナートはそれ以上だろう。

 彼は額をピクリと動かしただけで、何も言わなかった。


「あらぁ〜? どうして何も仰ってくれませんの〜? もしかしてぇ、まだ棺を捨てた事を怒ってらっしゃるのかしらぁ〜? あ〜んな小汚くて薄気味悪い棺なんてぇ、イグナート様のお隣に似合いませんわぁ〜。ワタクシみたいな可憐な女性でありませんと〜。ねぇアナタ達ぃ〜?」

「はい、ペラギア様の仰る通りでございます」

「ペラギア様ほど可憐なお方は他にはおりません」



(うわーっ皇女様! その事をぶり返すなよ!! しかも全く反省してないし!!)



 侍女達が激しく同意しているのを得意満面にしているペラギアに、バルトロマも激しくツッコミを入れた。



 そう、棺を魔道士団団長室から持ち出したのは、この帝国の第一皇女、ペラギアなのだった。






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