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7.帝国魔道士団団長室にて 2


ブックマークをして下さった皆様、本当にありがとうございます!

感謝の気持ちで一杯です……!








「まぁそんな事もあって、皇城中で噂になったねぇ。『魔道士団団長は、誰も入っていない不気味な棺にたいそうご熱心だ』って。その噂のお蔭で、棺が盗み出される想定外の事件が起きたんだけど〜」

「チッ……。絶対に許さねぇ」

「はいはい、聞かなかった事にしようねぇ。でもさ、もしスティーナちゃんがここで目覚めてた場合、君はどうしてたの? 英雄が実は魔女を助けてたーって世間が知ったら非難の嵐だったよ」



 バルトロマがニコリとしてイグナートに問う。

 長年の付き合いで分かるが、正直に言わないと承知しないよ、の笑顔だ。



「……スティーナの無実を証明するまでアイツを匿ってた。今の俺の身分ならアイツを養える財力もあるし、ある程度自由に動ける。……あの頃の俺は、ただ“勇者の仲間”ってだけで何の地位も無かった。アイツが投獄された時、何度も上のヤツらに無実を訴えたけど、全く聞く耳も持たずに門前払いだったよ。そうこうしている内に、アイツが脱獄してしまった……」

「…………」

「アイツは俺に大きなチャンスをくれた。俺は卑怯にもそれを利用し、高い地位を得た。帝国の為に働き、そのお蔭で皇帝とも対話が出来るようになった。アイツの無実を主張する土台に漸く上がれたって訳だ。無実が確定したら、この団長の座をお前に返すよ、バルト。用が終われば地位なんていらないしな」



 バルトロマはイグナートを見返した。そのパープルの瞳は真剣な光を帯びている。

 ふ、と笑い、彼はわざとおちゃらけた調子で返した。



「え〜? 僕も地位には固執してないし、今のままで十分だから熨斗付けて返すよ〜。それに、君は帝国にかなり貢献してるし、皇帝が君を手放す事はしないと思うけど? とにかく、君の本気度は伝わったよ。けど、君はスティーナちゃんが無実だって証明出来る現場を見たのかい?」

「いや……。ファスの町外れの草原で俺は何かにふっ飛ばされて気を失っちまって……。気付いた時には、泣きじゃくるアイツを町の衛兵どもが取り囲んでいる状況だった。ラルスの姿はどこにも……。俺の意識が無い間に何かあったんだ。それが何なのかは分からないが、アイツは絶対にラルスを殺してない。俺の命に賭けて、それだけは言える」


 キッパリと言い切ったイグナートに、バルトロマも深く頷く。


「そうだね、僕もスティーナちゃんが殺したとは思ってないよ。だから共犯の罪を覚悟で彼女を治療して内緒にしてた訳だし。じゃあどうやって無実を証明しようか? 今の君なら、無理矢理皇帝を丸め込む事が出来そうだけど」

「いや、アイツの今後の為にも、帝国民全員が納得するやり方にしたい。つい最近、神託が下りたろ? 『勇者が復活する』って。だからラルスを捜して、ヤツにスティーナの無実を証明して貰う。俺も弁護に入れば確実に問題無いだろう」

「確かに、本人が証明するほど信憑性が高いものはないねぇ。勇者がどこの教会で復活するか分かればいいんだけど……。皇城に滞在する司祭とは知り合いだから、何か情報を持ってないか聞いてみるよ」



 バルトロマの提案に、イグナートはこの部屋に来て初めての笑顔を見せた。



「ありがとな、バルト。助かる」

「どういたしまして。……分かってたけど、君の世界はスティーナちゃん中心に回ってるんだねぇ。今のスティーナちゃんはどうする? 正体が周りにバレる前に匿う?」


 機嫌の良い顔付きだったのに、バルトロマが問いかけた途端、イグナートはどんよりと暗い表情に変わる。


「それが……もしかしたらアイツ、記憶喪失かもしれねぇ」

「え……えぇっ!? 何故さっ?」

「違う名を名乗ってたし、俺の名を聞いても分からないって首振るし、俺見ると震えるし隠れるし逃げるし」


 ピタリ、とバルトロマの動きが止まる。


「…………。それ、怖がってない? 明らかに」

「は? 何で怖がるんだよ」

「何か心当たりは無い? 一年半前、脱獄したスティーナちゃんを君が追って行った時、彼女とどういうやり取りをした?」



 イグナートは腕を組み暫く考えていたが、はたと顔を上げた。



「アイツ、俺にラルスを殺した自分が憎いよね、恨むよねって言って泣いてた……。違うって言えないまま、アイツは崖から飛び降りて……」

「……あ〜〜。恐らくそれだねぇ。自分を憎んでる相手に普通に接する事が出来る? 何かされるんじゃないかって怖くて震えるよね? される前に隠れるか逃げるだろうし。違う名前だったのも魔力の流れを止めたのも、自分の正体を隠す為じゃないかな?」

「……誤解だ……。俺はアイツをこれっぽっちも憎んじゃいねぇのに……」


 バルトロマの言い分に納得してしまったイグナートは、絶望の表情で執務机に突っ伏す。

 

「寧ろその正反対の大好き、だものねぇ? じゃ、早くその誤解を解かないとだね。でないと遠くに逃げてっちゃうかもしれないよ〜? 折角見つけたのにねぇ?」

「バカ、縁起でもねぇ事言うんじゃねぇよ! ……明日また行って来る」

「いいけど、仕事はちゃんと終わらせてからにしておくれよ〜? 尻拭いさせられるのは僕なんだからねぇ?」

「ぐ……。分かったよ……」




 そして翌日。

 仕事を瞬速で終わらせたイグナートがトーテの町に着いた時にはもう、スティーナは旅に出た後なのだった……。





 

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