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30.魔女は幸せを噛みしめる

二話連続で更新しています。

最終話です。







 バンッ!!



 それらが触れ合うまであと数センチの所で、ノックもせずにイグナートが扉を乱暴に開けて入ってきた。


「…………」


 そして、ラルスがスティーナの上に覆い被さり、キスしようとしている現場を見てしまった。



「………………」

「…………悪ぃ、途中から理性が逃げちまった」



 イグナートの額に青筋がピキピキと浮かび、絶対零度の冷気が彼を瞬時に包み込む。

 ラルスの首根っこをむんずと掴むとスティーナから引き剥がし、乱暴にポイッと放り投げた。



「……この、理性の欠片も失くした野獣がッ! いっぺん死んでそれらをかき集めて来いッッ!!」

「だからいっぺん死んでるんだって! ともかく悪かった! 次からはここでは絶対にしない!」

「そういう問題じゃねぇこの野獣勇者がッ! 今後スティーナの五メートル以内に近付くなッ!! 破ったら即氷柱の餌食になると思えッッ!!」

「げっ、それだけは勘弁してくれっ!!」



 喧騒にそっと瞼を開けたスティーナは、いつの間にか来ていたイグナートとラルスがギャーギャーと言い合っているのを見て首を傾げる。


「やぁスティーナちゃん。災難だったね? 理性が弱っち過ぎの似た者同士が争ってるけど気にしないでね」


 ソファから起き上がると、バルトロマが彼女のもとにやってきた。

 彼の肩にはエルドが乗っており、器用にもそこで丸まって気持ち良さそうに居眠りをしていた。もうすっかり二人は仲良しだ。


「……! あー……」


 バルトロマは、スティーナの白く細い首に赤い痕が幾つも付けられているのに気付き、小さく苦笑する。

 それは首だけでは飽き足らず、鎖骨辺りまでも綺麗な赤を散らせていた。


「スティーナちゃん、ちょっとごめんね?」

「はい……?」


 バルトロマはスティーナの前に屈み込むと、その首に自分の手を当て回復魔法を使った。

 温かい光と共に、彼女の首と鎖骨にあった痕が全て消えていく。


「……こんなの、イグナートには絶対に見せられないでしょ。勇者様を本気で殺しにかかっちゃうし……。にしても勇者様、独占欲強過ぎない? 見える所にめちゃくちゃ付けてるよ……」

「バルトロマさん?」

「ん? あぁ、驚かせちゃったね。ちょっとした傷があったからさ、もう大丈夫だよ」

「傷……? ありがとうございます」


 バルトロマは誤魔化しながら立ち上がると、当のイグナートとラルスはまだ言い争っていた。

 そんな二人を眺めながら、スティーナはふわりと笑う。


「……ふふっ、やっぱり仲がいいなぁ。恋人同士じゃないのが信じられないです。それとも、イグナートが照れて隠してるだけなのかな? 隠さなくてもあの二人なら応援するのに」

「へ、恋人……? 応援……? ……は、ははっ! スティーナちゃん面白いね! イグナートをからかうネタが出来たよ。はははっ!」

「…………?」


 バルトロマは涙が滲むくらい笑うと、スティーナの隣に座った。


「さて、と。報告するね。君の無実が確定されたよ。これで堂々と外を歩けるんだ。ちなみに崖から落ちたけど、奇跡的に助かって療養していた、って設定になってるよ」

「ありがとうございます、バルトロマさん」

「いやいや、こちらこそありがとうだよ。魔界の間諜も探し出して捕らえ、処刑したよ。ブラエ・ノービスの件、勇者洗脳の件、そして魔王の件……。どれも解決してくるとは流石だねぇ」

「いえ、そんな……。イグナートとラルスがいてくれたからです。それと今の魔王様は、とても優しいお方です。彼が魔界を統治している間は、人間界との争いは起きない筈です」

「そして、こちら側から魔界に侵攻しない限りは……だね?」

「…………」

「大丈夫、僕とイグナートがそんな事させないから安心して欲しい。勇者様も絶対手伝ってくれるだろうからさ」

「……はい!」


 スティーナは笑顔で頷いた。



(この三人がいれば、きっと大丈夫――)



「スティーナ」



 不意に声を掛けられ、スティーナは上を向くとイグナートが眉間に皺を寄せそこにいた。

 ラルスの姿はどこにもない。


「あれ? 勇者様は?」

「水の入った大きなバケツを両手に持たせて廊下に追い出した。そこで暫く反省してろって伝えてな」

「……勇者様にそんな事出来るの、君だけだよ……」


 バルトロマが苦笑しながら肩を竦める。

 スティーナは隣りに座ったイグナートに向き合って頭を下げた。


「イグナート、色々と動いてくれてありがとう」

「いや……礼を言う必要はない。もっと早くお前を無実にしてあげたかった……」

「ううん、イグナートが気にする事ないんだよ。助けてくれた事、本当にありがとう」


 イグナートの好きな笑顔で、彼女はそう言った。彼はそれに少し勇気を貰い、思い切って口を開く。


「スティーナ、その……これから外に出掛けないか? お前、まだ帝都を見て回ってなかっただろ? 折角堂々と外を歩けるようになったんだ。その、……俺と一緒に観光に行かないか? お前の気に入る物がきっとあると思うんだ」


 目を逸らしながら本人なりに懸命にスティーナを誘うイグナートの顔は、仄かに赤くて。

 スティーナはふふっと笑うと二つ返事をした。


「うん、行きたい」

「……! そうか」


 イグナートがホッとしたように表情を崩す。



「何々〜? これから二人でデート? 気を付けて行ってらっしゃい〜」

「デッ!? いやこれは――」

「イグナート? もっと積極的にいかないと、勇者様にスティーナちゃん取られちゃうよ? どうやら彼も本気になったみたいだしね。君も本気で行かないとヤバイよ?」

「…………!!」



 スティーナに聞こえないように、バルトロマはイグナートの耳元で忠告をする。

 イグナートの顔つきが変わり、彼はスティーナの手を取ると指を絡ませ、ギュッと握り締めた。



「……スティーナ。外は人が沢山いるから、はぐれないように手を繋いで行くぞ。……離すなよ。俺も絶対に離さないから」

「あ、うん。分かった」



 二人は手を繋いだまま立ち上がる。

 どちらともなく顔を見合わせ、――そして微笑み合った。






 ――あぁ、幸せだなぁ。


 崖の上に立ったあの頃は、絶望しかなくて。

 こんな幸せがくるなんて想像もしていなかった。

 辛く悲しい思いをした分、ほんの少しの幸せも嬉しく思う。



 大切な人達と一緒にいられる喜びが。

 笑い合える幸せが。


 心に優しく染み渡っていく。



 絶望し、一度は諦めてしまったこの命。

 大切な人達のお蔭で、もう一度命が吹き込まれた。


 もう二度と投げ出したりはしない。





 私の大切な人達へ。



 沢山の感謝を込めて。





 ありがとう――








Fin.







ここまでお付き合い下さり、本当にありがとうございました!

よろしければ一番下の☆マークに、ポチポチ評価をお願い致します(敬礼)励みにさせて頂きます!



そして、ブックマークをして下さった方、いいねを押して下さった方、本当に本当にありがとうございました!沢山励みにさせて頂きました…!

完結できたのも、最後までお付き合い下さった皆様のお蔭です(最敬礼)

いつか英雄と勇者のそれぞれのハッピーエンドを書けたらと思っていますので、もし更新されていたらふらりと立ち寄って頂けると幸いでございます(礼)


改めまして、ここまでお読み下さり誠にありがとうございました!!


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