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全裸の魔女と世界を救う話  作者: 火海坂猫
第一部 

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三十五話 見えざる魔女の執着は死より重い

「はあ? 協調性のかけらもないあの女が?」

「…………お前が言えた話ではないの」

「あんた全裸の癖に喧嘩売ってんの?」

「全裸は関係ない話なの」

「まあまあ、むーちゃんも夏妃ちゃんも落ち着いて」


 なだめるように美優がわたくしたちに向けて両手をひらひらさせる…………確かにどうでもいい話ではあるの。一々嚙みついて来るシスコンについ皮肉を口にしてしまったけれど、相手にしている時間の方がもったいないの。


「でもそれはそれとしてお姉さんも服だけはちゃんと着たほうがいいと思うな」

「趣味なの、ほっとけなの」


 本当に面倒くさいシスコン共なの。


「うーん、この場はお姉さんが引いておくわね…………それで夏妃ちゃんの意見だけどお姉さんも一理はあると思うのね。晴香ちゃんは自分本位なところがあったからお姉さん達と仲良くしようなんて思わないんじゃない?」

「その通りなのよ」


 わたくしは頷く。


「あの女は他人を利用することはあって協調はしないの、そして自分がそう思われていることを知っているの」


 だからこそ単純に仲良くしましょうと言ってくることなどありえない。


「それを証拠にこの場にあの女はないないの」

「もしかして、お姉さん達に協力関係を築かせてもそこに自分は入るつもりがないってこと?」

「その通りなのよ」


 もしも晴香がわたくしたちを集めて協力関係を結ぼうと言いだしたらそれこそ誰も従わないだろうし、何か裏があると判断して晴香以外とも協力関係は結ばないことを選んだかもしれないの。


 だからあの女は自分からそれを言い出さずその切っ掛けだけを作った。陽という餌を使って比較的まともな魔女を集めて、そこで自然に協力関係が生まれるのを待っているの。


「恐らくわたくしたちの関係が安定したら接触して来て、何かしらの取引を持ち掛けるつもりなのよ」

「は、そんなの応じるわけないじゃない」


 この場の誰も晴香を信用していない。普通に考えれば夏妃の言う通りそんな取引に応じるはずがないの。


「お姉さん達は応じなくても陽君は応じてしまうような取引ってことなのね」

「おそらくそうなるの」


 そして陽が応じてしまったらわたくしたちは協力するしかなくなる。


「つまりあの女は見えざる獣をどうにかしようと考えている可能性が高いの」


 陽が取引に応じるとしたら見えざる獣かわたくしたち見えざる魔女に関するもの以外にはないはず…………そして後者の場合であれば陽はわたくしたちを優先してくれるはずなの。彼は優しい人間ではあるけれど、きちんと感情に優先順位を付けられる人間でもあるのよ。


「ね、ねえ結ちゃん」

「なんなの?」


 おずおずと口を開いた切歌にわたくしは視線を向ける。


「そ、それって、晴香が獣をどうにかして、人類を救おうとしてる…………て、こと?」

「あの女が博愛主義に目覚めたとは思わないけど、結果的には近いと思うのよ」


 あの女の知るという目的の為には人類が滅ぶのは困るのだろうと思うの。


「それってあの女はもう見えざる獣について知りたいことは知れたから用済みってこと? それとも私達を使って見えざる獣を知ろうとしてるわけ?」

「そこまでは現状で判断できないの」


 見えざる獣への対処の算段を付けたから戦力を集めようとしているのか、それとも算段を付けるための調査の戦力を集めたいのか…………そこをはっきりさせるほどの判断材料は現状ではないの。


「つまりは向こうから接触してくるのを待つしかないってわけね」

「その為にもわたくしたちの関係を固める必要があるのよ」


 それを確認してようやく晴香は交渉を持ち掛けてくることだろう。


「それが失敗して関係がこじれたら追加の魔女がやって来るってわけね」

「その通りなのよ」


 この五人で協力関係を結べるならそれでよし、結べず争いになったなら死んだ魔女の代わりの候補に対して陽の場所を知らせる手紙をまた送る…………それがうまくいくまで晴香は繰り返すつもりなのだろう。相変わらず高みからこちらを見下すムカつく女なの。


「次にやって来る魔女が美優や夏妃よりもマシである可能性は低いの…………だからわたくしとしてはお前達二人で妥協しておきたいの」

「あんたムカつく言い方しかできないの?」

「これは本音を明かすというわたくしなりの誠意なの。白々しい演技で仲良くしたいと言って欲しいのならそうしてやるの」


 その気持ちを表すようにわたくしは布をはためかせ、隠すもののない姿をさらす。


「言っとくけど、あんたの全裸なんて見ても全く嬉しくないから」

「わたくしもお前に見せてもまるで興奮しないの」


 やはりもう陽ではないと興奮できない駄目な身体になってしまったようなの。


「ま、まあ、むーちゃんの趣味は別としてもお姉さんは提案には賛成するわね…………といってもお姉さんは最初から仲良くしたいと思ってるのだけど」

「それが信用しないからこうして理詰めの話をしてるのよ」


 美優のその演技のぶれなさにはイライラするの。


「あんたまたネーサマに……!」

「お前のそういう態度が美優を信用できない要因の一つだといい加減理解するの」

 明らかに喧嘩腰の人間と親しい相手の信用にマイナスが入るのは当然の話なの。

「夏妃ちゃん、むーちゃんが正しいとお姉さんも思うな」

「ネーサマ!」

「夏妃ちゃん」

「…………ごめんなさい、ネーサマ」


 静かに、それでいて強く名前を呼ばれてようやく夏妃が首を垂れる…………何度見たかわからない光景なの。夏妃が反省しないというよりは、美優が彼女をやりこめることを楽しむために好きにさせてるんじゃないかと思えて来るの。


「とにかく、いきなり仲良しこよしは不可能なのだからわたくしとしてはまず利害関係で協力したいと思っているの」


 相手を裏切ると損だから裏切らない。そんな関係の方が単純明快で明確に見えない仲間意識なんてもので協力するより百倍マシなの。


「その方がむーちゃんが安心だって言うのならお姉さんは反対しないわ…………夏妃ちゃんもその方が納得しそうだし、それから仲良くなればいいだけだしね」

「ようやく話がまとまってほっとしているの」


 ここまで進めるだけで随分と疲れさせられたの。わたくしはもういいと促すようにジャックへ視線を向けると察して彼は舞の耳から手を離す。


「もう、ジャック! ジャックが悪戯するからみんなの話が聞こえなかったじゃない!」

「大した話はしていないのよ」


 ぷんすかと、楽し気にクマのぬいぐるみに怒って見せる舞にわたくしは声を掛ける。


「それで舞、今みんなでこれから仲良くやっていきましょうという話になったの」

「うん、みんな仲良し!」


 嬉しそうに舞が顔をほころばせる。腹黒の相手をしているとその顔が癒しに感じられるの。


「それでなの、これから仲良くやっていくという事はみんなで助け合うという事なの…………だから自分のできる事をみんなに教えましょうという事になったのよ」

「そうなんだ!」


 それを聞いて舞はその場の人間を見回す。舞にわかりやすいよう言い換えはしたが意味は変わっていない。


「ええそうよ」


 だから美優もその視線に頷いて見せたし夏妃も同様だ…………こら切歌、一人だけその純真な視線が眩しいように顔を背けるんじゃないの。


「えっと、でも舞は子供だからできる事があんまりないよ…………?」

「その代わり舞にはジャックがいるの。皆を助けてくれるようジャックにお願いしてくれればいいのよ」


 この世界に刻まれた現象と化しているジャックは味方であれば非常に頼もしいの。


「うん、わかった!」


 素直に舞は頷く。


「お願いね、ジャック!」


 そしてその言葉にジャックはこくりと頷く。これであの熊のぬいぐるみも舞の言葉がなくてもこちらに協力しやすくなったはずなの。


「次は切歌が話すの」

「え、結ちゃんが言って、いいよ、えへへ」

「これくらい自分で話せるようにするの」


 わたくしは溜息を吐いて切歌を突き放す。わたくしと二人きりならそれなりに饒舌じょうぜつなのに、親しくない相手だとまるで駄目なの…………ぶっちゃけその方がわたくしとしては都合がいいけどあれでも割と大事な方の友達なの。


 今後人見知りに付け込まれるようなことをさせないためにも、少しは鍛える必要があるのよ。


「む、結ちゃんの、いじわる」

「こんなこと意地悪でも何でもないの」


 そう告げると諦めたように切歌は美優と夏妃に視線を向けて…………夏妃に怯みやがったの。


「夏妃ちゃん」

「ご、ごめんなさいネーサマ」


 切歌に対しては流石に悪いと思ったのか謝る声は本心のようだったの。


「あっちの女はムカつくけど私はあなたには何にも思ってないから…………ごめんなさい」

「え、えっと………わ、私の方、こそ、怖がってごめん、ね」


 おどおどと切歌も謝る。まあ、ぶっちゃけ夏妃の敵意は言葉通り切歌には向いていなかったから勝手に切歌がビビっただけではあるの。


「そ、それで私は………・・・こ、今回みたいにみんなの都市を、潜ませたり、出来ます」

「うん、お姉さんそれでとっても助かったわ」

「私も大したもんだと思うわよ」

「そ、そう? え、えへへ」


 二人から褒められて恥ずかしそうに切歌が顔を赤らめる…………我が友人ながら実にちょろくて心配になるの。


「かくれんぼとかにすごく役立ちそうだね!」

「こ、今度やろう、か?」

「わーい!」


 そんなもの絶対に見つからないだけで不毛な気もするのだけど、わたくしが参加しないならどうでもいいの。


「次はわたくしが言うの」


 あえてあちらに順番をやらないのは先に手の内を明かすという誠意ではないの…………わたくし以上に出せるものは相手にないと確信しているからその頭を押さえつけてやるためなの。


「わたくしが世界に刻みこんだ想念は伸ばす、なの」


 見えざる魔女のその力の鍵となる言葉をわたくしは明かす。戦闘を見て予想はしていただろうから美優と夏妃の表情に驚きはない。


「つまり」


 その表情を次の言葉で変えてやるの。


「わたくしは陽の寿命を伸ばせるの」


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