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全裸の魔女と世界を救う話  作者: 火海坂猫
第二部

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十九話 女神の腹心


「もしかしてあなた方は恵に会いに行くつもりですの?」


 話の流れとしてそれはほぼ確定事項になってるように思えましたわ…………エリカに会って直接実力を確認しようと言い出さなかったのは幸いですけれど。


「それが一番確実なの」


 そしてそれを結ははっきりと肯定しましたわ。この女は自分本位で全裸の変態ですけど曖昧なことは言わずに物事を断言するところだけは評価できる点ですわね。


「言っておきますがリスクは大きいですわよ。それよりも他の魔女…………まだ女神の国への忠誠心の低い魔女に当たったほうがリスクは小さいと思いますけど」

「そっちは確実性に欠けるの」


 懸念と共に代案を伝えたのですけど、結は即それを却下しやがりましたわ。


「忠誠心が低いってことは新参者ってことだからな。そいつがうまいことエリカにやられて降参したんならいいが、都市を奪うやり方をしてるなら戦う前に降参してる可能性が高い」

「…………それは否定しませんわ」


 晴香の捕捉にわたくしは頷かざるを得ませんでしたわ。見えざる魔女を救済したいという方針もあって基本的に女神の国は戦わず魔女を配下へと納める方針を取っています。それゆえにエリカによる実力行使は最後の手段…………正直に言えば私もその実力を多くの回数見たわけではありませんの。


「中には知ってるやつもいるでしょうけど、そいつにあるまで何人も聞いて回るわけにはいかないわよね」

「そうねえ、お姉さんもそう思うわ」


 美優と夏妃のエセ姉妹がさらにダメ出しをしてくれますわ…………本当に隙を見せた相手をおとしめるのに躊躇いがない連中ですわね。


「それで、恵に会ってただ話を聞くだけではないんでしょう?」


 その辺りは諦めて私は話を進めることにしましたわ。ここは見苦しい反応を見せるよりも大人の対応をして陽様の好感度を稼ぐのがベストですもの。


「当然なの。せっかくナンバーツーに会うのだからやれることはやるの」

「具体的には?」

「裏切りの勧誘をして断ったらぶちのめすの」


 実に予想通りの答えですわね。


「心配しなくてもぶちのめす役目はお前にやらせてやるの」


 そう言って好戦的な笑みを結は私に向けましたわ。陽様以外の相手はどうでもいいと思っていそうな態度のくせに、こういう相手のツボとなるような点だけはきっちり抑えているのが本当に厄介な女ですわね。


「ありがたく、と言いたいところですけど」


 正直に言えば私に恵への恨みはあまりないのですわ。もちろん自分が捨て駒だったと自覚した時には腹も立ったものですけど…………今は結果として陽様とお近づきになれたのでむしろ捨て駒にされてラッキーだったとすら思ってしまっていますの。


 まあ、だからと言って彼女を仲間にしたいとかは思いませんし、他の誰かがぶちのめすのを止めようとも思えませんけど。


「交渉が決裂した場合にも恵に手を出すのは反対ですわね」


 しかしその感情は別として私はそう忠告せざるを得ませんわ。


「理由を言うの」

「それをすれば間違いなくあの方…………エリカを怒らせるからですわ」


 それはほぼ間違いなく起こりえることだと断言できますわ。


「お前の話が確かなら恵とやらはこの国で好き勝手やってるのよ」

「それでも、ですわ。先ほども言いましたけどエリカは見えざる魔女を救済したいと思っていますの…………そしてそれは当初から自分についてきた古参に対してより強いのですわ」

「…………恵はどうなの?」

「最古参ですわね」


 だからこそ多少の好き勝手も見逃されているともとれますわ。


「面倒な話なの」


 結が本当に面倒そうに溜息を吐きましたわ。


「まあでも陽の手前、できる限りは穏便に済ます努力はすると言っておくの」

「あくまで努力するだけなのですわね」

「当たり前なの」


 馬鹿にするように結が私を鼻で笑う。


「ムカつく女だったらエリカを怒らそうが関係ないの…………ぶちのめすに決まっているのよ」


                ◇


 正直に言えば僕は女神の国に着いてから激しい戦闘が起こると思っていた。結達は僕に配慮はしてくれるけれど基本的には好戦的だ。到着直前に僕は皆を贔屓ひいきすると宣言したこともあって戦闘が必要なら躊躇わないだろうと思っていたのだ。


 ところが予想に反して女神の国は僕たちを警戒しておらず、切歌の力もあって簡単に潜入出来てしまった…………見えざる魔女たちが多く住まう場所なのだからいくら切歌の力があってもそう長くは潜伏できないと思っていたのに、だ。


 そしていくつかの調査を経て女神の国のナンバーツーであるという鹿島恵という魔女の元へ向かうのも特に問題は起こらなかった…………と、いうよりより楽だったと言っていいかもしれない。切歌の力があるとはいえ僕らはできる限り女神の国の魔女との接近は避けて移動するようにしていた。しかし連なった都市の最奥近くにあるはずの鹿島恵の住まう都市へと近づくにつれ魔女の気配は減っていったのだ。


「少なくとも人望は全くなさそうなの」

「その通りですわ」


 だから鹿島恵が居を置いている都市には誰も近づかない。最奥にあるエリカの住まう都市に行く際にも皆大回りして避けていくのだと環奈は説明していた。


「都市の状況も変わりはなさそうだな」


 少し不安はあったのだけどそこで暮らす人々の姿も他の都市を変わりないようだった。もちろんそれは何らかの操作がされて定められたルーティンを繰り返している状態ではあるのだけど、鹿島恵という少女の人となりを聞いたこともあって酷い扱いというか虐げられているのではという不安もあったのだ。


「あの女は行政区にいるはずですわ」


 環奈によれば都民が入らないようにしたビルの一角を執務室として使用しているらしい。聞く限りそれほど大きなビルでもないし華美な内装というわけでもないようだ…………ナンバーツーとして私腹を肥やしているというようなイメージからは遠のくなと僕は思う。しかしそもそも見えざる魔女は一般的な権力とか資産に対する欲とは縁遠い存在なのだ。


「…………」


 そうなると鹿島恵の目的はなんなんだろうかと僕は疑問に思う。エリカという求心力のもとに集まった力を自分の意のままにする…………したところでどうなるものだろう。その忠誠心の大半はエリカの元にあるだろうし、そうでない魔女は都市を人質に従わされていてそもそも忠誠心がないだけだろう。そしてその下の都民は彼女を認識できない。そんな相手を支配したところで僅かな時間の満足を得られるだけにしか思えない。


 それとももっと単純に、彼女は彼女の認識される範囲の世界で上に立ちたいだけなのだろうか? 現存する全ての魔女の上に立ってそれを意のままに扱う…………それを愚かとは僕には思えない。それは彼女にしてみれば世界の全ての上に立つことと変わらないのだから。


 とはいえそれは僕が環奈から聞いた話から覚えた一方的な印象だ。その印象を引きずったまま彼女に会えば誤った認識をしてしまうかもしれない…………正しく、そう正しく僕は彼女の望みを見極めなければらならない。


 今は何となくでしかないけれど、それがとても重要なことだと僕は思うのだ。



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