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デブ令嬢を痩せさせろ
短い人生だった。
薄れゆく意識の中で彼女は思った。
体が宙に放たれ、静かに落ちていく。
周囲は木々に覆われ人気もなく、このまま地面と激突すれば、間違いなく助からない。
どこにでもある、普遍的な人生だった。
だが最後の瞬間は呆気なかった。ただの気まぐれできた登山。人気のないどこか荘厳な佇まいのその土地に惹かれた。そして足を滑らせ、滑落した。
ただそれだけのことだった。
齢40年、長くも短い人生が走馬灯のように思い描かれる。
平凡で、清流のような人生だった。
そして目の前の現実を前に思う。
ああ、私の人生はここで終わってしまった!
長く感じた一瞬の死と共に彼女の意識は途切れた。