89 アリエッタのお茶会
正式なお誘いのお手紙を書き、エルトナさんにお伺いを立てて、ようやく今日、お茶会を開催する。
お茶会と言っても、私とエルトナさんだけだ。トーヤは既に警護として仕事ができるので、今日はニコルが警護兼手伝いとしてついている。他にもお屋敷の侍女さんが教育係りで同席していた。
今日は練習だが試験だ。今日のために作法も教えてもらって、おもてなしをするのだ。
ユマ様の侍女として立派に努めたいと言う目標は実はとても難しい。過ごしやすくお部屋を整えたり掃除をしたりごはんを作ったり、それだけだと思っていたがシューマー執事からそれだけでは役不足だと告げられた。主の予定の把握はもちろん、財政状況や懇意にしている相手や交流を持つべき相手の趣味や嗜好の把握。普通の生活が快適なだけでは二流で、三歩先の対処ができるようにしなければならないのだ。
今回、料理長さんたちからエルトナさんの好む食べ物や飲み物を聞きに行った。帰宅の時間や忙しい時期、それに好む話題も調査した。
そして、何よりも、今回の目的はエルトナさんにユマ様がいかに素晴らしいことかを訴えるのだ。今回のお茶会に際して、ユマ様からエルトナさんもユマ様が男である事は知られていると教えていただいた。これはとても大きな情報だ。同性としてではなく異性として認識されているならば、変に誤解されずに伝えられる。
最終確認をして、あとはエルトナさんが来るのを待つ段階になって、ニコルを見た。ニコルはいつもの笑顔だが、心持ち緊張していた。
ニコルとお話しした結果、ユマ様の幸せが一番だと確認しあえている。私もユマ様が大好きで、ニコルもユマ様がとっても好きだ。私にとってニコルは志をおなじくした同士だ。
「エルトナ様がおみえになられました」
侍女さんに声をかけられて、ぐっと拳を握る。
「お、お通ししてください」
声が裏返っても、今は仕事に徹している侍女さんはにこやかに微笑むだけだ。
入ってきたエルトナさんは、いつもの男の子のような恰好ではなく、女の子のように髪を編み込んでい留めている。ユマ様は今回参加していないのをとても残念に思う。
「よっ……ようこそおいでくださいました」
舌を噛んでしまったが、何とか言い切る。
「お招きありがとうございます」
ユマ様の一つ下で、見た目は私とそんなに変わらないがお姉さんだ。流石にとても落ち着いている。
「お茶とお菓子を準備しています。お席にどうぞ」
接待役なので私は動かず、ニコルがそっと椅子を引いた。
「では、失礼しますね」
エルトナさんが席についてから、ニコルが回ってきて、私の椅子も引いてくれて、席に座った。
ニコルの見た目はあんまり警護の人っぽくない。だから、まわりにいても警護に見えないのを利用したいと話していたのを聞いている。リリーもとっても強いが侍女としてふるまっているのは、敵から警戒されずにユマ様の近くにいるためだ。
侍女さんがポットをもってやってくる。
「本日は、麦珈琲を準備しました。お口に会えばいいのですが」
準備の間に今日のお茶を説明する。普通のお茶と違って、エルトナさんが好んでいるという珈琲を模したものだ。珈琲というのはとても高価な生薬らしくて、手に入らなかったので、料理長と相談して似た味の物を準備した。
「麦珈琲ですか。珍しいものを準備してくれたんですね」
一口飲んで見せるが、苦い。それを見てからエルトナさんが口を付けた。
「本物の、珈琲というのは準備ができなくて……」
「お気持ちだけでも嬉しいです」
苦いのに平気な顔で飲むのを見ながら、本当にこんな飲み物でよかったのだろうかと心配する。
「えっと、本物の珈琲もこんなに苦いんですか?」
麦珈琲は会話のきっかけにするといいと助言してもらっていたので聞いてみる。
「焙煎度合いにもよりますが、苦みはありますね。お砂糖や牛乳を入れて飲む人も多いですから、アリエッタさんも苦いのが苦手でしたら好みに調整するといいですよ」
「いえっ、大丈夫です」
子供っぽいと思われたくなくて、思わず返してしまう。
「そうですか? 私のお勧めなので、一度試してみてください」
優しく言われて、おすすめだからとお砂糖壷に手を伸ばした。温めた牛乳を侍女さんがそっと置いてくれるので、そちらも入れて一口飲むと、あんまり苦くなくなって美味しい。
「おいしいです」
「それはよかったです」
もてなすはずが、いつの間にかもてなされていてはっとする。
「同じものを好きになる必要はありませんが、折角用意していただいたものですから美味しいと思ってもらいたいですから」
「……」
優しく言われて、ユマ様がなんでエルトナさんに興味をもったり、身を挺してしまったのか、ほんの少しだけわかった気がいる。
この人は、ユマ様に似ている。見た目じゃなくて、どこか根本が。
頑張って用意した会話の内容を使って、色々とお話しをした。ちゃんと、ユマ様がどれだけよくしてくれているかとか、今の生活はとても幸せだとも伝えて置く。時間契約を結ばされていたことは直接口にしないものの、エルトナさんは知っているようで、それを聞いて安心したような顔をしていた。
「ユマさんと出会えたのは、アリエッタさんの幸運でしたが、それをちゃんと自分の糧にできたのはあなた自身の努力と心持ちの成果ですね」
「でもっ、ユマ様にお会いしたから、こんなに頑張ろうって思えたんです。ユマ様のお陰です。あ、あの……エルトナさんは、ユマ様と出会われて、何かかわりましたか?」
言ってから、直球過ぎて減点だと目を瞑った。
「そうですね……。色々と変わりました。ここまで色々あったのも、養父と会ったとき以来でしょうね」
エルトナさんが苦い麦珈琲を口にしていう。
「エルトナさんは、養子なんですか?」
比較に出た言葉を聞き返す。少し驚いたし、基準がわからないとどれくらい好意があるかわからない。
「あの、エルトナさんのご両親は?」
「ああ、父親ははっきりしていないんです。母は幼いころに亡くなりました。養父のツール神父が村に派遣された時に親しくなって、養育してくれることになったんですよ」
「……。すみません、エルトナさんがそんな大変な生活をしていたとは知らなくて」
私が大変な人生だったのは周りの人にはばれている。それが恥ずかしいと思うこともある。私と違って、とても重要な仕事をしていて、ユマ様からも見初められる人が、そんな人生だったと思わなくて、口籠る。
私の母は今思えば愛人で正式な奥さんじゃなかったんだろう。父親が何かの罰で捕まってから、母も捕まって、私と兄は別々に暮らしてきた。親がいない状態はとても窮屈で辛い生活だったのを覚えている。それを、こうも簡単には話せない。
「字面にすると中々ハードですけど、うまい事寄生先も見つけましたし、そこまで大変でもありませから」
特に不快さもなく、けろりとした風だ。
自分は不幸で、辛くて、ユマ様がいなかったら今頃と考えただけで恐ろしいのに。
「……あの、どうしたら、辛い事があってもそんな風に言えるんですか……」
頑張っている。とても頑張って、明るく振舞って、いらないと言われないように努力している。ユマ様は、私みたいな役立たずでもよくしてくれる。けど、それは私が子供だからだ。
「あまり、深く考えないので明確な助言は難しいですが……過去の苦悩で明日の飯が食えるわけじゃありません。私のもっとうとして、どうせ人間いつかは死ぬんですから、死ぬときは前のめりに、というものがあるんです」
「前のめり……ですか」
思っていた答えとは随分と違った。
「まあ、私の人生観は少し変わっている自覚はありますから、あまり参考にはなりませんよ」
エルトナさんが肩を竦めてから続けた。
「話が逸れましたが、ユマさんに会ってから、生活の質が向上したのは事実ですね。元々世話焼き体質なんでしょう」
そう、今日はユマ様のいいところを説明して……。
「あ、あの……ユマ様は、色々ご事情があって、少し普通とは違う状況ですが、とても素敵な方です。その……エルトナさんは、ユマ様のこと、どう思っておられますかっ」
ユマ様はエルトナさんのことを気に入っているのは本当だと思う。わざわざお部屋を用意したり、よくお休みの日に会ってお仕事を手伝ったり手伝ってもらっている。だから、ユマ様が幸せなら、お二人にいい未来があればと思っているのに、頭によぎってしまう。
リリーには、あり得ないと言ったのに。
「……まあ、あの技術は感嘆しますね。物理的にも助けていただいているので感謝はしていますが……、あの無謀な性格は何とかして欲しいですね。本当に、心臓に悪い」
そう言った後、エルトナさんが壁際に控えていたニコルに目を向けた。
「あなたも、あの時は近くにいましたね」
「はい」
ユマ様がいる時よりも落ち着いた雰囲気でニコルが頷いた。
「お礼を言いそびれていました。ありがとうございます。お怪我などはしませんでしたか?」
「僕はユマ様をお守りすることが仕事です……あの時は、僕が矢を受けるべきだったんです」
ユマ様が、矢を受けたのは聞いていたけれど、詳しくは聞いていない。ニコルの表情が曇るのを見て、とても後悔しているのがわかる。
「ユマは、本当にあなた達をとても大切にしているんでしょうね」
褒められているのに、嬉しそうな、ほっとしたような顔に胸が痛い。エルトナさんもユマ様に好意的なのだ。私が頑張る必要なんて、きっとない。
「アリエッタたちは、粗相などありませんでしたか?」
エルトナがきつい事を言うとは思えないが、二人が少し元気がなかった。いつもの仕事の手伝いに来た時、丁度他に人がいなかったので思い切って聞いてみた。
「ああ、私も報告しておきたかったんです。主催のアリエッタさんはとても頑張っていました。まだ慣れていないので完璧ではありませんでしたが、私の趣向を考えて、会話内容も準備していたので、内輪であれば私以外でも大丈夫だと思います」
言ってもまだ二人とも十四歳くらいと十六くらいだ。完璧というのは難しいだろう。
「何か心配事がありましたか?」
「……なんというか、僕に対する依存が心配で……」
僕に捨てられないようにから、僕のために生きたいという風に変わっている気がする。正直、重い。
「私も養父に依存していますし、所長代理は仕事面で私に依存してます。人間何かしら依存しているものですよ。ただ、ユマに何かあればあの二人は絶望すると思うので、ほんと、マジで無茶なことしないでください」
「あ……はい」
圧をかけられている。
「大丈夫ですよ。誰かに認められたいと言う欲は誰にでもあります。理想とか目標にしてた人が実はポンコツな一面があると気づいてショックを受けるのも成長過程には必要なものです。ユマがちょっとポンコツで失望されたら……そうですね、子供の成長を祝いましょう」
笑いかけられてつられてしまう。
「エルトナのそういう考え方、好きですよ」
「……」
微妙な顔で見返された。
「……誘拐事件の後の私と、今の私だと、どちらが好ましいです?」
最初、何を言っているのかはっきりわからなかった。思い出したのは、エルトナの不思議な発言だ。嘘だとは思っていないが、あまり深く聞かない方がいい気がしてある程度流してしまっていた。ただ、それを薬で抑えたから少し変わったと言っていた。
ソラが変わった時、はじめましてと言われたのを思い出した。僕が知っているエルトナもそっとどこかへ行ったのだろうかと、喉元に嫌な感じがした。
「……エルトナは、以前とは、違うんですか」
ソラは明確に変わってしまった。脳に損傷が起これば変わってしまうことがあると言う。そうだと聞いても、納得ができなくて、最初のソラはもういないのだと思った。今のソラも大事な妹だが、とても困惑した。何よりも、新しいソラはとても寂しそうだった。
その時に似た少し寂しそうな顔を返されて、咄嗟に口を開く。
「あ、今のエルトナが嫌いなわけじゃなくて、何か悩んでるならって思って」
咄嗟の言葉にエルトナが困ったようにふっと表情を緩めた。
「私、案外ポンコツなんですよ。冷めてるだけで冷静でもないですし、ただ、歳に見合わない知識が備わっているだけで。運動も正直好きじゃないですし」
「……? はい、知ってます。運動はもうちょっとしましょうね」
肯定するとまた、微妙な顔をされた。
「つまりユマは私がポンコツだと思っていたと言うことで?」
凄まれて、うっと目を逸らす。
「仕事面ではとても優秀だと思っていますよ」
「失礼な。私生活も……」
自分で言いながら、ああ、あんまりちゃんとしてないのではと気づいたらしい。屋敷に部屋を準備してから、基本洗濯も掃除も最初は自分でしていたらしいが、今は全て任せているらしい。睡眠時間が増えているらしいので全然それでいいのだが、ふくれっ面になった姿が可愛らしかった。
「……子供と言っても、お二人とももう十代半ば。教育としてはやはり、計画・行動・振り返りが一般的ですね。自己肯定感が低めなので、できたと言う結果を少しずつ積み上げていってあげたらいいですよ」
「褒めるようにはしてるんですけど、それだけだとダメみたいなので。ほんと……僕を育てるのも苦労したんだろうなと痛感しました」
引きこもった後、女装を始める息子なんて、正直どう接するか困惑させただろう。まあ、母はあの性格なのですんなりと受け入れてくれたが、ベンジャミン先生は内心穏やかではなかっただろう。
「そうですね。ユマのご両親には一度お礼を言いたいですね。この歳で少し仕事を教えただけでよくできるように育て上げてくれたことを」
「仕事だけですか?」
「無論、私生活もお世話になっていますが、私を庇って死にに行くのはホント勘弁してください」
「はい……」
ベンジャミン先生からも、母と妹以外では身を挺するなと言われている。仕方ない。勝手に体が動いてしまったのだ。強いて次に繋げるならば、背中を向けるのではなく正面から矢を受けるべきだった。あの時は初動の体勢と、咄嗟の判断の結果背中でかばってしまった。
「身を挺するなら私よりもアリエッタさんのような可愛い子の方がいいでしょうし」
ため息交じりの言葉に首を傾げた。
「アリエッタは可愛い子ですが、エルトナもとても可愛いですよ」
「………」
無言で手刀を落とされた。
「いたい」
「すみません、何となく」
ふてくされた顔を見ていると、所長代理室のドアが開いた。
「エルトナ! 成果会の許可を得ました!」
入ってきたのはルーラだ。
以前言っていた文化祭や学園祭だが、学科成果報告会という名前に変わり、教授を中心に協力を得ているようだ。エルトナもなんだかんだで助言している。
「早かったですね。夏季休暇の少し後ですか。そのために残る生徒が増えてしまいそうですが、まあいいのではないですか」
「うちは何するんですか?」
やはり無難に展示だろうか。セオドア辺境伯たちも好きそうなので、紹介はしておいた。結構乗り気だったが、僕はルールー統治区の関係であまり時間がないので最終手伝いくらいしかできないだろう。
一番多い連絡はサジルのアシュスナに対する不服と、アシュスナのサジルの無茶振りに対する愚痴だ。案外仲良くやっているらしく、領地管理は優秀なものが必須だと実感している。
「ふっふ。喫茶店です」
「え、展示では?」
別の事に思考がいっていたので、ルーラの言葉を理解できなかった。
「漫画展示喫茶です」
「………」
ちゃんと聞いても理解できなくて、無言でエルトナにいいんですかと問う。指文字でも知っているかのように、気持ちを汲んでくれた。
「ルーラさん、漫画は特別に旧人類美術科へ提供されているものです。部外秘ですから持ち出しや展示は許可されませんよ」
「そんなっ! ……くっ、交渉はします」
結構身分が高そうなので、交渉できそうで怖い。
「交渉をしたところで、あれらの作品は展示には向かないと思いますよ。小説の一文を載せるようなもので、知っている人は感慨深いですが、他の学科の人では理解できないでしょう」
意見をしてみるとむっとした顔を返された。
「それでは、ユマさんはどのような提案があると言うのですか? きっとよい方法をお考えなんでしょうね」
「旧人類の漫画は現在の絵画とはかなり技法が違うので、それらを模したり影響を受けた絵の展示でしょうか。後は旧人類の生活様式の考察をまとめてもいいかもしれません。茶屋を開くのは、絵画に興味のない方にも目を向けてもらう機会になりそうですからいいと思いますが、呼び水としてもう一声何か欲しいところですね」
「呼び水なら、ユマがかわいい恰好でお出迎えすれば、一定数の男性客が確保できると思いますよ」
冗談交じりにエルトナが提案するが、ルーラがとてもまじまじとこちらを見てきた。
「確かに、あなた顔はよろしいですね」
「はは……存じ上げております」
女性に見えるように人以上に努力しているのだ。
「いいわ。喫茶の給仕に任命しましょう」
「嫌ですよ」
学科での正式行事ならば仕方ないが、そうでないなら忙しいのだ。
「ユマもこういう祭りごとは好きなのだと思っていましたが、意外ですね」
「まあ……嫌いではないですが、ぼ……私は旧人類と美術を学びに来ているのですから、そこから逸脱しているので」
まあ、ルーラの部下として働くのが嫌なのだが別の提案をしてきた。
「旧人類の文化を出すのでしたら、女性が男装、男性が女装をして給仕すると言うものがありますわ。制服がないので各々特注で作ることになりますけど」
「男装は、絶対にしませんよ?」
女装服は色々と細工を施して女らしくしているが、女装した上で男装となれば恐ろしく難しい。ただの男が男の恰好をしている状態になったら目も当てられない。
「あくまでも自由参加の企画ですから、強要はしないようにお願いします。ユマも、別に学科で一つというわけではないですから、何かしてみたいことがあればしてみては?」
性別を知っているエルトナはとてもさりげなく却下してくれた。
「ユマさんが企画したら私ではなくユマさんの方を皆さん手伝いに行ってしまうではないですか。私はただでさえ来て間もない上、皆さんユマさんばかり贔屓にしているのに」
比較的打ち解けてはきたが、大半の学友が彼女を警戒していた。家名を出していないが、色々と厄介なのだろう。帝国の上流社会は詳しくないが、狭い世界ならば名を名乗らなくても知っていて不思議がない。
「仲良くしていただいていますが、ルーラさんが頼めば手伝ってくれる方は多いのでは? 私は、あまり交友関係が広くありませんし」
同じ科でも数人はルーラに対してかなり好意的な者もいる。他の学科でも彼女に好意的な者も結構いる。顔は可愛らしいからだろう。
「……あなた、素で嫌味を言いますよね」
目を細めてむっとした顔をされてしまう。
「そもそも、私たちの学科にいる人物の素性を正しく理解していますの? 他の学科の学生が気安く近づこうとすらしない意味を」
「? 大物の方が多いのですよね。授業もお仕事の関係で欠席する方が多いですし」
辺境伯と付くくらいだから国境を任されているオゼリア。コーネリアは穀物帯を任されている家名らしい。他にも、各界の大物だとは聞くし、休憩時間には教室内で政治経済の話が繰り広げられている。彼らにとっても旧人類の社会構築はとても興味深いらしく、美術だけでなく社会基盤や効率化についても議題に上がる。それらを聞いているだけでも勉強になるし、将来妹を支えるうえで糧にしたいと授業内容はそれらの話し合いもできるだけまとめている。
「はぁ」
と、大きなため息をつかれてしまう。
「無邪気だからこそ、好かれているのかもしれません。私ではどうあったって警戒してしまいますから」
みんないい人たちだけどと、首を傾げてしまう。
お茶会前にエルトナの髪はユマが結いました。




