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女装王子の留学記 ~美少年過ぎて女性恐怖症になったけど、女装していれば普通に生活できます~  作者: 笹色 ゑ
二年生前期

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87 二人の編入生


 入学時と違い、二年は案内などもなくいつもの教室へ向かった。後輩ができるのかとワクワクしていたが、旧人類美術科は二年入れ替わり方式らしく基本同じ教師と生徒だ。ただ、いくつか変わったところもある。


「ルーラと申します。大叔父の代わりにこちらへ修学することとなりました」

 学生のひとりが已むに已まれない事情で通学できなくなったそうだ。代わりに親戚だという少女がみんなの前で挨拶をする。


 中々の美少女で、はっきりとした眉に気が強そうな顔立ちをしている。女性で名前の末尾がラであることはジェゼロ王の子を表すジェゼロ出身の僕としては珍しい名前だと思ったが、他国ではそれを避ける風習はない。名前の所為だろうか、先日帰ったオオガミと少し風貌が似ている気がした。まあ、オオガミに子供がいると聞いたことはないので、単に人の意見を聞かなさそうな雰囲気が似ているからだろう。


「ハンセット・アドラーです。後援者から命じられての入学です」

 二十代前半の青年がとても不服そうな顔で言う。短い金の髪で背はそれほど高くないが、筋肉がとても発達している。腕の太さからして画家ではなく彫刻家だろうか。ジェゼロで彫刻画を作っていた時は筋肉がつき過ぎて困ったのを思い出した。


 新入生はこの二人だけで、もう一人講師があたらしく増えるらしいが、今日は来ていない。


「では、本日は新しいお二人も来られると言うことで、去年と同じく懇親会を……と、考えておりましたが、大人の事情で許可がおりませんでした」

 オゼリア辺境伯が残念そうに肩を落とした。酒を提供しないからと交渉したらしいが、そもそも関係者以外をここに入れることはできないと許可されなかったそうだ。去年、事前に許可を取って、且つ飲酒していなければ話は違っただろう。


「オゼリア辺境伯、屋敷の方は以前のように時折でした茶会や夜会の場に使っていただいて構いませんよ」

 以前はオゼリアが切り盛りしていたが、今は一応僕が管理者だ。僕と同じく美術科の学生たちは地元では好き勝手ができない責任ある身分だ。離れた土地でくらい、羽を伸ばしたいのもわかるし、できるだけ以前と同じように過ごしてもらって構わないと思っている。それに、僕の食事だけでは料理人が可哀そうだと思っていたのだ。


「おお、では後日、ユマ殿の屋敷をお借りして歓迎会といたしましょう」

 準備するのは面倒だが、場所を使うくらいは問題ない。


「まあ……ユマさんはお屋敷を?」

 声色に反して、編入生のルーラがこちらを見る眼が鋭い気がした。それに答えたのはアンネ・マリルゴだ。


「ええ、わたくし含め、何人かはユマさんのお屋敷で部屋を借りておりますの。ルーラさんはどちらかに下宿か購入を?」

「私はメリバル夫人のお屋敷に滞在させていただいております。急なことでしたから、部屋を整える時間もありませんでしたから」

「メリバル様のお屋敷ですか。あちらの庭園も美しいと噂は聞いております」


 メリバル邸は、それこそ帝王の甥や僕のような、帝国として対応が必要な相手の滞在先に選ばれている。そう考えると、ルーラはかなり高位なのだろう。


 少しぴりっとした空気を感じたが、それをぶった切ったのは同じく新顔のハンセットだった。

「行儀作法すら知らないような田舎もんなんで、御貴族様の話し合いには興味ないんすよ。とりあえず、どんな作品を作ってきたのか見せてもらえますか? ちなみに俺はここの寮に入れられました」

「うむ、そうじゃな。生徒諸君、作業場へ向かうとしよう」

 ヴェヘスト教授が指示して隣の教室へ移動する。


 いつものやや混沌とした部屋と違い、綺麗に作品が並べられ、中央にはお茶や菓子が準備されていた。アドレがそれについて説明してくれる。


「食堂の方々が準備してくださいました。後、作品は、教授の指示で僕が昨晩並べさせられました」

「おお、流石はヴェヘスト殿。気が利かれますな」


 感心したようにオゼリア辺境伯たちがいうが、それを気にすることなくハンセットが凄い勢いで作品集を回り始める。事前に提出させられた冬の課題が掲げられているようで、僕の作品含めて飾られている。僕も初めて見る作品に吸い寄せられる。


 相変わらず、本職の作品は美しい。それに買い付けて持ってきただろう作品もとても面白い。屋敷に滞在していたのにずっと見ることのなかったサムーテの作品は僕の絵があった。かなり美人に描かれているが、見方によっては少年にもとれる中性的な顔に描かれていて、画家の見る眼にちょっと恐怖する。


「一年間の授業は面白かったですが、こう見ると、旧人類の美術がどれだけ我々に影響を与えたかがわかりますな」

 横に来たオゼリア辺境伯の言葉に頷いた。


 入学時の作品の横に並べられたそれらは、技術面よりも感性に変化をもたらせているのがよくわかる。


「……これは………」

 ルーラとハンセットが足を止めて難しい顔をしたのはコーネリア・ライラックの作品だ。誰が描いたのか見なくてもわかる。


 去年は幼い少年の絵だったが、今回提出したものは人体の構造上あり得ない目の大きさにきらきらとした描写の美青年のような女性だ。授業を一緒に受けてきたものは、コーネリアがドはまりした漫画の模写だと直ぐにわかる。ただ、ある種の前衛芸術なので新人はとても難解な絵を見るように固まっていた。


「城を売ってでも、販売権を買うべきだと夫を説得したのですが……ダメと言われてしまいました」

 コーネリアがしょんぼりした顔で言うが、旧人類の遺物管理は帝国が行っている。それも民衆が立ち上がって王を打ち取る話だ。金を出しても売ってくれたかは微妙だと思う。


 ツンとしていた新入生二人だが、実際の作品を見てからは、周りに質問したりと空気が和らいだ。

 基本的に芸術に傾倒している者たちが集っている。この場は身分を平時ほど気にしない環境なので、普段は口を噤むことでも意見を言い合える。


 しばらくして、ノックと共にエルトナがやってくる。去年は所長代理と来ていたが、今年は一人だ。もう顔も売れているからだろう。


「今回は、お酒は提供されてませんよ」

「それはよかったです。集団退学にしなくて済みますから」

 真面目な顔で言われる。身分があろうとも規則違反は容赦なく退学しそうだ。


「今日はルーラさんを迎えに」

「ルーラさん……ですか?」

 何故だろうと首を傾げると、エルトナが続けた。

「所長から、ユマと同じように手伝いをしてもらう許可が出ています。許可というよりは、命令に近いですね。社会経験を積ませたいようです」

 やはり、僕のような訳ありなのだろう。


 楽しそうに談笑しているところへずけずけとエルトナが向かう。一瞬嫌そうな顔をしたが、渡された手紙を読んで表情を取り繕った。何ことか話してからこちらにエルトナが戻ってくる。


「大丈夫でしたか?」

「多分大丈夫でしょう。お手数かけますが、ユマが管理棟に来るときに一緒に連れてきてくれますか? 警備には伝えておきますから」

「それくらいは構いません」



 ルーラとしか名前が記載されていない少女は私と同じ年だ。ユマとは一つしか違わないので、丁度ユマがこちらに来たのと同じ年でもある。長い髪をポニーテールに結わえて、はっきりした眉はいかにも気が強そうだ。


「あらっ、ルーちゃん、本当にこっちに来たんですね」

 今日はサセルサの日だ。ルーラが入ってくるなり、いつもとは違った調子で話しかけた。

「サセルサ!」

 ぱっと明るい顔をして、ルーラが駆け寄った。それを後ろで見ていたユマが微妙な顔をしていた。


「何か問題でも?」

 近づいて問うてみると、ユマが少し屈んで耳打ちする。

「すみません、ちょっと苦手です」

 少し困り顔が間近にある。顔面の圧が凄い。


「そうですか……。とりあえず、仕事の説明などはこちらでしますから、ユマはいつも通り仕事していただければ大丈夫です」

「はい」

 男だとわかっていても、ふんわりした笑顔は中々の見物だ。


 ユマが席に着いたのを見て、サセルサとルーラの方を見た。

「ルーちゃんがお手伝いをしてくれるなら、心強いわ」

 お淑やかに微笑むサセルサに対して、ルーラに尻尾があればよく振れていただろう。

「こちらに派遣されたと聞いて、心配していたのです。体調も崩したと伺っています。大丈夫なのですか?」

「ああ……ふふ、体調は大丈夫ですよ。産休を頂いていただけですから」

 幸せそうに笑うサセルサに対して、ルーラの尻尾がぴたりと止まる。警戒心がマックスだ。


「産休……、どういう」

「詳しくは長くなりますから、また休日に我が家へ招待しますね。じゃあ、お仕事を説明しますね」

 不穏な空気を感じ取ったらしく、サセルサがさっと仕事モードへ入る。契約書に署名をして、仕事を教えていく。


 二人の話し声がする以外はいつも通りにし仕事を進めていく。相変わらず、ユマは仕事が早くて助かる。ただ、二人の時と違い、誰か他がいるとあまり無駄口を叩かなくなる。


 一頻り仕事を終えて、ユマが休憩がてらにお茶を入れてくれる。

「みなさん、休憩しましょう」

 今日は柑橘系の香りが付けられたお茶だ。


 いつものようにソファへ向かって腰かけると、自然とユマの正面だ。

 以前は平気だったがこれは本当に破壊力のある顔だ。物腰も柔らかで、仕事ができて気が利く。まあ、女装という特殊性癖はあるものの、これは学内で変なファンが付くのも頷ける。


「この程度で休憩を入れるのですか?」

 ルーラが顔を上げると顰めてこちらを見る。

「ふふ、まだ私の体力も戻っていないので、こまめに休憩を入れてくれているのですよ」

 サセルサが率先してこちらへやってくる。それを見て、渋々ルーラもきた。


「サセルサさんとルーラさんはお知り合いだったんですね」

 ユマが気を使って問う。横目で見ながらお茶を味わう。ユマが淹れるお茶は、最初の時よりもおいしくなっている。


「詳しくはお話しできませんが、彼女の母君にお仕えしていたことがあるのです。小さいころから見ていたので、私にとっては可愛い妹のようなものです」

 サセルサに言われて、ルーラは嬉しそうな顔を隠しきれていない。


 サセルサはアルビノだ。ジェーム帝国ではアルビノの保護をしている。サセルサの知識からして、かなり高い階級だが、その上となれば、巫女と呼ばれるレベルの可能性がある。

 巫女にも階級があって最上級は神官に仕えるものだ。そこまでになると限られたものとしか会うこともない生活だろう。


「妹ですか。それは、可愛くて仕方ないですね」

「お分かりいただけます? 可愛いですわよね」

 ユマとサセルサが楽しそうに妹談義を始める。ユマの妹という事は、次期ジェゼロ王という事か……姉がいれば別だが。


 妹という生き物がいかに可愛らしいかという話を妹のようと言われたルーラの前でしている。ツンケンとした雰囲気だったが、徐々にルーラが顔を赤らめていく。どうやら褒められ耐性が低いらしい。


「二人とも、そろそろその辺で、妹さんが照れて恥ずかしそうなので」

「てっ、照れてませんっ」

 これは、あれか、一つ目の記録にあるツンデレという属性か……。二つ目はとてもまじめな苦悩と苦労と昼ドラのような記録が多いのに反して、一つ目は淡々とした性格でありながら、変な知識が多い。本人はオタクではないが、オタクの対応もするために知識だけは有していた。


「休憩はそろそろ終了です」

「なぜあなたが仕切っているのです?」

 時間的にも休憩の終わり時間だが、妹がかわいいという話を続けて欲しいのだろうか、ルーラに否定される。それにサセルサが困った子供を見るように頬に手を当てた。

「エルトナは所長代理補佐ですから、立場的にはこの中では責任者なんですよ」

「……こんな、子供が!? ですかっ」

 歳は同じだが、それでも異常だ。まあ、普通は驚くだろう。


「是非、所長に言ってやってください。次の就職先は見つかりそうなので」

 今は大分職場環境が改善されているが、いまだに所長を殴ってやりたいとは思っている。


「幼く見えるけど、エルトナはルーちゃんと同じ年ですよ。それに、とても優秀です。エルトナがいなければ、体調不良をおして早期に仕事復帰していたでしょうから。救世主なんですよ」

 サセルサが褒めて株を上げてくれる。サセルサの役に立っているのはいい事だと思いながら、何となくライバル心を燃やしている目が見てくる。


「あら、こんなにちっこいのに同じ年なんて。ちゃんと食事をしているんですか?」

 食事と言われて、ユマから涼しい視線が送られる。

「さ……最近は、ちゃんと食べていますよ」

 昨日は昼飯を抜いたが……。


「体が小さいのは個体差の問題ですから」

「太れない体質の人もいますが。エルトナはもう少し食べましょうね」

 にこりとユマに凄まれる。見透かされている気がいる。

「……さ、さあ、休憩は終わりです」




 母から、偽名を使ってジョセフコット研究所の研究校へ留学するように命じられた。

 ルーラと名乗り、産まれも隠す。ちゃんと外での生活ができたら、一年後には父親が誰か教えてもらえるのだ。


 無論、これまで何も調べてこなかったわけではない。母が住む場所は特殊で、特別な許可が下りた者しか入れない。男は特に限られている。私を身ごもった時期から、可能性は絞られていた。


 私の父親は帝王陛下か、ジェゼロから来たベンジャミンという男の可能性が高い。親愛なる陛下に直接問う不敬は犯せない。かの方はとても大事にはしてくれるが、親子としての親愛は見られない。それが守るためである可能性も否定できなかった。だが、もうひとつの可能性の方が、残念ながら可能性が高いと考えている。母は頑なに父を教えてくれなかった。異国の者と関係を持ったとなれば、隠すことも理解できる。


 あの母が、成人を前に父が誰か教えると言い出したのだ。条件があるとはいえ、これ以上の好機はない。


 もしも、ベンジャミンという不届き者が父であったならば、この手で母を泣かせた制裁を加える。

 だが相手はジェゼロからの使者だ。ジェゼロに対して制裁を求めるとなれば、私自身が権力を持たなければならない。ジョセフコット研究校の旧人類美術科は打って付けだと考えていた。


 旧人類美術科に在籍しているのはオゼリア辺境伯をはじめ、かなりの権力者だ。帝王様の統治に大きく貢献してきた者や有識者として助言する立場のものもいる。

 上手く取り込もうと考えていたのに、何人かは既にユマと名乗る女が囲っているらしい。しかも、紹介された仕事先にまで先にいて、目障りだ。


「あら、生活費以外は自分で稼がないといけないのね」

 終業時間らしく帰り支度を始めるサセルサに母からの条件の一つを話すと、頬に手を当てて同情された。


 オーパーツが使えて、機密保持ができる人材が必要だからとサセルサの手伝いを紹介してもらった。サセルサがジョセフコット研究所に派遣されていることは聞いていたの話を通してもらったのだ。


 母のお手伝いは少ししていたが、仕事として就労した経験がない。正直心配だったが、サセルサがいるなら安心だ。そう思っていたが、サセルサよりも立場が上になるのはどう見ても子供だ。私と同じ年らしいが、どう見たってそんな責任ある立場には見えない。


「はい。メリバル夫人のお宅での滞在費と学費以外はなしの約束なんです。なのに……これほどお給料が安いとは思いませんでした」


 あまりお金を使う機会はなかったが、自分が普段来ている服を買うのにも何時間も働かなければならない。サセルサはこんなところで働いてちゃんとご飯を食べているのかと心配だ。だから、エルトナと名乗った子供も小さいのかもしれない。


「こちらのお給料は、かなり割高ですよ?」

 ユマという女が首を傾げて話しかけてくる。別にあなたと話していないと言いたい。代わりにサセルサの方を見た。

「そうね……ここの研究員のお給料を考えると、時間でのお給料は研究員でも半値ほど……、普通の平民のお給料に比べるともっと高いお給料になるそうですよ。私たちのお仕事は、少し特殊ですし、それに、機密を漏洩の場合最悪死刑もありうるのでとても高く設定させているんでしょうね」

 サセルサからの説明を受けてぽかんとしてしまう。これで高給取りだと言うのかと。


「雇用される側だと高いですけど、事業を始めればこちらより余程儲けることができますよ」

 エルトナがそんなことを言うが、ぱっと浮かぶ事業などない。


「旧人類美術科なら、絵画の販売という手もあります。今年は……競売もまだ開かれていないので、それに備えて準備してみるのも手かもしれませんね」

 ちらりとユマに視線を向けてエルトナがいう。ユマがそっと視線を逸らした。ユマなんて画家は聞いたことがない。仕事はできても画家としては売れていないのだろう。その点、私は昔から何でもできた。絵だってきっと高値で売れるはずだ。


「今日見た限りでは、お仕事は教えればできそうですからしばらくは続けていただければ助かります。サセルサはまだ毎日仕事にはこられないですから」

「迷惑をかけてしまって申し訳ないわ」

「いえ、予定よりも早くに復職してくださっただけでとても助かっています。今はお子さんが優先になるのは仕方ありません。無理のない範囲で構いません」


 休憩のときに産休と言っていたのは聞き間違いではなかったらしい。ふっと血の気が引く思いだ。

「サセルサ! そうです。産休とは……子供とはなんですか!?」

「ええっと……」

 困ったようにサセルサが頬に手を当てて首を傾げる、それに対してエルトナが立ちあがり肩に手を置いて諭しだした。


「サセルサ、明日の仕事に支障がでないように今日の間に説明してください。妹のような子なのですから、黙っているわけにもいかないでしょう」

「ルーちゃんと、ちょっとそういうのに敏感なんですよ……。だから」

「事実はどうあっても変わらないんですかよ」


 サセルサが困った顔をしている。困らせるとは何事かと言う前に、サセルサがこちらを見た。

「去年の夏に、出産したのです。もちろん、所長は御存じですよ」

「っ、しょっ、所長が父親なのですか!?」

「ちっ、違います!」


 慌ててサセルサがいうが、慌てようから余計に怪しい。権力者に迫られたのならば、帝王陛下へ直訴も辞さない。サセルサを泣かせるなんて。


「その……去年、子の父である方とは婚姻も済ませています。少し、誤解されやすい方ですが、わたくしにはとても優しくて、赤子の世話もとても積極的で、出産の折には仕事を休んで手伝ってくれたのですよ」

 白い肌が赤く染まる。


「お相手は、その……」

「相手はこちらの所長代理です。サセルサが出勤しているとはき基本家で子供の世話などをしているのでこちらはいません。所長代理が出ている時はサセルサは来ません。正直、所長代理には専業主夫として引っ込んで、サセルサに出勤していただきたいくらいです。ルーラさんは、サセルサの仕事の手伝いを主にされる場合は、彼女の出勤日だけでも構いませんがどうしますか?」

 もじもじするサセルサを横目に、エルトナが答えてしまう。


「所長……代理?」

 サセルサが頬を染めてこくりと頷いた。




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