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126 子どもの友達との夕食会 1



 ユマではなくソラとララに両手を掴まれてやってきた少女はちょっと困った顔をしていた。


「かしゃま、こちら、わたしのおともだちのエルトナたんです」

「あたしの友達のエルトナです」

 後ろをついてきていたユマが妹二人を見て苦笑いをしている。


「エルトナと申します。陛下」

 エルトナと名乗った子が頭を下げる。両手を姫たちに捕えられているのでそれ以上は礼を尽くせない状況だ。


「エラ・ジェゼロだ。そこに纏わりついている小童どもとユマの母でもある。今日は子供の……子供たちの友人を招待した晩餐なので、あまり畏まらないでくれ」

「このよう場を設けていただき光栄です」

 エルトナの隣を二人が取り合ったが、ベンジャミンに捕まって二人とも別の席に置かれた。


 私の前にはユマとエルトナ、左右にソラとララだ。ソラとエルトナの席の間にはユマがいるが、ララまで気に入ってしまったようだ。

 ベンジャミンは私の斜め後ろに待機している。この場は家族の夕食に招待した形だ。島の休暇と違ってベンジャミンは同席できない。


 ロミアから、旧人類と女神教会教祖の記憶が遺伝していたと聞いている。薬で人格に関しては抑制されていると説明は受けている。

 ソラとララが気に入るのはそれらの記憶があれば可能だろうが、ユマが気に入って連れてきたのは少し意外だ。


 話を聞けば、色々と興味深い事を教えてくれた。

 待つ間にソラは電波を使った音声放送についての実現性について色々と聞いたり、ララは最近ロミアからもらった楽譜についてお喋りをしていたそうだ。


 知識があり的確に話す姿は、見た目に即していない。オオガミの評価も高かったので、うちの家系はエルトナには好意を示すようだ。礼は尽くすが媚びることがないのもいいのだろう。


 夕食に出されたのはジェゼロ湖でとれた川魚の塩焼きだ。もう少し豪勢にと考えたが、素食の食を好むというのでこれにした。世辞ではなく美味しいと言っていたのでよかった。何せジェゼロの飯はナサナ王には貶され、ナサナから来ている双葉の二人も残念な食文化と評すくらいだ。到底美食ではない。


「どうも油や香辛料が多い食事は苦手ですから、こういう淡白なものがほっとします」

 貧乏舌のジェゼロ国民だが、別に美味しいものがダメなわけではない。エルトナのそれは、どちらかと言うと年寄りの趣向に近い。

 精神年齢も遺伝病の関係で見た目よりも高いのだろう。いや、ユマが言うには一つしか歳が変わらないので見た目よりも幼くはないだろうが。


 世間話のついでにユマの留学先での状況なども聞いたが、首を横に振られた。

「申し訳ありません。ユマ様にお世話になっていたことは事実なのでしょうが、今回の治療で一部に記憶障害が発生してしまい、ユマ様に付いて、覚えていないのです」

 申し訳なさそうに答えられる。ロミアから詳しい治療経過は聞いていない。


「……そうか。知らない相手に親しくされるのが不快なら、無理に仲良くする必要はない。あくまでもただのユマの友人だ。蔑ろにしたとしても不敬には問わない」

 例えばベンジャミンの事を忘れているのに今と同じ距離感でこられたら不快というか、尽くされ過ぎて怖いと思うだろう。忘れられた方は悲しいだろうが、忘れた方に無理強いするものではない。


「いえ……特に不快とは感じていません。むしろ、忘れてしまっているのに世話を焼いてくださって申し訳ないくらいです」

「あたしのことは覚えてるから、ユマ君はあたしの友達にちょっかいかけないでね」

 ふふんと優越感を見せて言うソラにユマがにこやかに微笑みかける。直ぐにソラがごめんなさいした。

 ベンジャミンに負けない笑みの威圧を使ったのだ。


 ソラの事を覚えているなら、ユマだけ器用に忘れるのは内々難しいだろう。完全に忘れているのではなく、抜け落ちたようなものか。


 ユマは結構真面目にエルトナを気に入っている。私に似て、頭がよくて上手に補助してくれる相手を選んだのかもしれない。私は仕事も私生活もベンジャミンが上手に管理しているので、これがいなくなってしまったら大変に困る。いや、エルトナの世話を焼いていたとも聞いているので、ベンジャミンに似て、世話を焼いて自分なしでは生活できなくする方向で動いているのかもしれない。


 その後は会話内容をオーパーツ関連に変えて、にこやかに会話をし、食後の甘味が運ばれる。お茶はベンジャミンが淹れてくれた。


 油っぽいものは苦手でも、甘い物は案外好きらしく、出された果実を食べた時ににまっと口が動いていた。


 娘二人も気に入っているならば、ユマの相手としてはよいだろう。だが、女神教会の教祖の記録があって、司教の養女。女神教会関係者とは結婚してはならないという法律はないが、ジェゼロとしてはあまり好ましい事ではない。このことを理由に、女神教会の入国枠を増加や、謁見などを要望されては困る。


「さて、子供たちは退室してもらおうか」

 命じると、ソラとララは文句を言わずに立ち上がった。ララは単にお眠になり出しているのもある。ソラは頭が可笑しい子ではあるが、案外まともなところもある。


「おやすみなさい」

「おにゃしゅみなしゃい」

 ソラに手を引かれてララと二人で退席する。


「ユマ、お前もだ」

 残ったユマにも命じる。

「……何か問題がありましたか?」

 聞き分け悪くそんな質問を返される。時間契約者として買った三人の時もそうだが、保護下の者に対して、過保護になるようだ。なんとなく、子供たちに対するベンジャミンを見るようだ。


「ああ、彼女とは二人で話したいことがある。ベンジャミンも外してな」

 ベンジャミンが新しいお茶を二人分だけ用意してから、ユマの椅子を引いた。

 ベンジャミンを排してまでの話だ。ベンジャミンに促されてユマも退席した。



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