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女装王子の留学記 ~美少年過ぎて女性恐怖症になったけど、女装していれば普通に生活できます~  作者: 笹色 ゑ
エルトナの治療(ジェゼロ)

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121 ジェゼロ観光へいこう


 ユマが何日かぶりにきた。ロミアとしては、二人の関係は面白い見世物だ。


 相変わらずユマの事をエルトナは思い出していない。

 可能性としてはやはり重要な部分に強く関連して一緒に消えたか、エルトナの大事な物だったから消えたかだ。言っては悪いが、ユマが人生で一番大事な物にまではなっていなかったと思うから、レッドルが執着したユラ・ジェゼロと関連して消えたと考えるのが有力だろう。


「そうですか、思い出してませんか」

 現状を伝えてもユマは思いの外落ち込んでいない。

「他に薬の副作用などは大丈夫ですか?」

 ちょっとお腹が緩くなったり、軽く眩暈が起きたりはあるみたいだが、今のところは大きな問題はない。


「まあ、大丈夫だよ。ここ数日安静にして、特に揺り戻しもなかったから、これで安定すると思う」

「そうですか……ジェゼロ国内などは案内せずにここに留まってもらう方がいいですか?」

「市内観光は万が一に倒れた時の為に付き添い二人くらいいればいいよー。折角レア国に入国できたのに、観光なしは可哀そうだよね」

 軽く言うとそうですかと頷かれた。


「いくつか注意聞いとくから、エルトナんとこ行っといていいぞ」

 ナゲルがそういうとユマが病室に向かった。


「……ねぇねぇ、めっちゃ大事にしてるね」

「それな。これから一から惚れさす気概だろうから生暖かく見守って茶化すのは止めてやってください」

 昔はこういうネタでドラマや漫画があったが、実際どうなんだろう。

 今のエルトナはジェゼロに来る前のエルトナとは別人だ。もし、以前のエルトナに好意を抱いていたなら、それは報われない。


 見た目が好みなら、それはそれでいいのかもしれないが、ユマ君相手ならまだしも、エルトナは絶世の美女ではない。

 ピンク君の奥さんも普通の顔だった。興味本位でなんで選んだの? と聞いたことがある。晩年は普通にかわいいからと返されて砂吐き案件だった。若いころは見えないところに置いとくと危ないからと言っていたか。

 まあ、人の趣味はそれぞれか。


 青少年がなんか面白そうな展開になるなら、面白そうなので僕は全然かまわない。





「街の散歩ですか……はい、是非行きます」

 ふたつ返事で簡単に身支度を整えて部屋を出た。ずっと引きこもらされていて正直飽きていたのだ。


「……そういえば、今日は女装なんですね」

 今日はどう見ても女性にしか見えない見た目だ。以前見舞いに来てくれた時も綺麗は綺麗だったが、男と言われればわからなくもない程度の恰好だった。今は化粧もしているからか完全に美女だ。


「えっと……ユマさんは、いえ、なんでも」

 記録の中でも性別の扱いは難しかった。ある程度高度化した社会の方が、性別は複雑化するので、現代はそれほど多くはない。


 もしかしたら、彼は、彼女なのかもしれない。逆の可能性もある。どちらにしろ、女性しか王位を継げないジェゼロでは複雑な立場だ。男女を隔てるY遺伝子はどれだけ努力しても男にしかない。どれだけ科学が発展しても、XとYの関係性は無慈悲だ。


「行きましょうか」

 にこりと微笑まれて困ってしまう。

 美人耐性はある方だと思っていたが、記録と現実は破壊力が違う。


「途中ちょっと服屋に寄らせてもらいたいですが、それ以外は興味がある場所があれば言ってください」

「はい」


 この人の記憶がないのはわかる。

 少なくとも、一人以上の誰か。

 ジェゼロに来てか初めてオーパーツ大学を出た。徒歩かと思ったが馬で行くらしい。ユマと二人乗りで、一応馬には乗れるがまた意識を失ったら困るからとの事だ。確かに、騎乗位置から落ちたら、下手をすれば死ぬ。


「やっぱり、本屋とかがいいですか?」

 すぐ後ろから問われて、頷いた。

「あ、はい……」

 石畳の街。街道は案外広くて馬車が往来できるくらいだ。人目が集まってくる気がする。

 当たり前か、美人がと言うだけでなく、ジェゼロの王子が見知らぬ子供と相乗りをしているのだ。


 レンガと木でできた建物が並んでいる。ヒスラの門前町ほどではないが、増築している箇所がちょっと危うい雰囲気がある。地震がかなり少ない土地だから成り立っているのか。


 大通りだからか、一階には店を構えている建物が多い。一見では何屋かわからない店も多い。発展しているとは言えないが、貧困の影は見えない。浮浪者や浮浪児がいないのだ。

 たまに制服を着て剣を携えている者が歩いているが、街警護と言うやつだろう。警察と名を冠している組織がある国もあるが、基本は治安兵や街警護の形で、退役兵がつくことが多い。捜査や裁判組織などは比較的国の中枢に近いものになる。その方が何かと都合がいいのだ。


 街警護はユマを見ると頭を軽く下げるだけだ。立ち止まって行き過ぎるのを待ったりはしない。会釈だけして町民と話を続けている。その姿も世間話と言うか、のほほんとしたものだ。

「平和な国ですね」

 のんびりとした雰囲気の、懐かしさを抱くような国だ。


「田舎で驚きましたか?」

「いえ、素敵な国です」

 この国に産まれていたら、母は殺されることもなかったのだろうか。神父に同情される生活を強いられることはなかったのだろうか。


「ああ、あれが一番大きい本屋です。降りましょう」

 店の前に着くと、するりと馬から降りて手を貸してくれる。

 ユマが馬を後ろから付いてきていたナゲルに預けた。


「ああ、それで」

 ナゲルが指で何か指示するのが見えた。ユマが短く了承を返す。そう言えば、ナゲルは指文字を使っていた。相手が誰だったかと思ったが、そうか、彼相手か。


 本屋に入ると棚が七列程。珍しく平積みで置かれているコーナーもある。

 あまり長居してもと一通り背表紙を確認する。大学があるだけに専門書も見受けられる。できればたくさん買いたいが、運ぶのに困るだろう。


「欲しいものがあれば、後でオーパーツ大学に届けてもらいますから、お金がなければ……立て替えます」

 驕るといいかけたようだが、金は結構溜まっている。こういう時にこそ散財すべきだ。

「では、ちょっと買ってもいいですか? お金は後で支払います」

「はい。あ、本によっては、国外持ち出し不可と、持ち出す場合は自己責任の本がありますから気を付けてください。購入の時に店主に聞けば教えてくれます」

 どんな禁術の本でもあるのかと思ったら、普通に如何わしい本とかが注意本になっていた。後、平積みになっていた物語も、国外に持ち出す場合は女神教会の眼には触れないように、何かあっても責任はとれないと言われた。


「物語なのに、ですか」

「ああ、お客さんは外国の人かい、今ローヴィニエに行っているジェゼロ国民が書いた小説ですよ。うちの王様は寛大だから許しているけど、誇大妄想の小説だからね。女神教会ってのは、ジェゼロを崇めてるとか何とかなんだろう? 第一巻を置いてるときに教会の人が入国してねぇ、偉い剣幕で文句を言われちまったんだよ。王様ご本人が、事実は小説ほどではなかったぞと笑って済ませてるのに、度量が狭いからね」

 どうやらジェゼロ王の争乱話らしい。まあ、最悪見つかる前に燃やそうと購入した。禁書と言われれば、読まない手はない。


「この近くに僕の行き付けの服屋さんがあるから、そっちに寄らせてもらってもいいですか?」

「はい」


 店を出て、路地に入る。馬車一台分くらいの道に入った。その途端、ユマが立ち止まった。

「あ! ユマ様、お帰りになられたって噂本当だったんですね!」

 若い女が二人、店舗の前で待っていたようだ。


 そりゃあ、知り合いくらいいるだろう。ナゲルのように、友人には気安く接することを許しているのかもしれない。そう思って見上げると、ユマの顔が真っ青になっていた。手が明らかに震えている。


「ユマさん?」

「あ……」

 怯えた目が私を見た。ぎゅっと唇を噛むとぎゅっと目を瞑る。まるで唐突にお化け屋敷に入れられたみたいな反応だ。

「大丈夫ですか」

 そっと震える手を取ると、驚いたように目が見開かされた。


「あなた達! いい加減にしてください!」

「言ったでしょう。待ち伏せするなら街警護を呼びますよ!」

 間にあったお店から、勢いよく二人の女性が飛び出してきて、ユマに声をかけた女の子達に怒鳴った。あまりの勢いにぽかんとしてしまう。

 蹴散らされ女の子達が悪態をついていたが、握っていたユマの手から震えが消えた。


「ユマ様、失礼いたしました」

「どこぞ中へ」

 さっきは凄い剣幕だったが、今は優しそうな顔をしている。驚いたことに二人は同じ顔をしていた。

 招かれるままにそのお店、双葉の店と書かれた洋服屋へ入る。


 ドアが閉まる前に、ユマがその場にへたり込んで、握っていたてもほどけた。

「ナゲル! はやくいらして」

「ユマ様、大丈夫ですか」

 決して近づかず、距離を置いたまま双子の姉妹が問う。

「はは、大丈夫です」


 ナゲルが奥からやってくると、近くで脈を計ったりと診察を始めた。

「失礼いたしました。お嬢様はこちらへどうぞ」

「ユマ様のお友達の方ですね。こちらで少しお待ちください」

 店にある可愛らしい椅子へ案内されて腰かける。発作でも起こしたようなユマの姿に動じていない。


 店は捲かれた布がディスプレイのように飾られていて、トルソーが二台あって見本の服が飾られている以外に服はない。基本的にはオーダー服を扱っているのだろう。既製品を売らない高級店だ。


「いつもの発作だから、こっちは気にしないでくれ」

 ナゲルが持ってきた椅子にユマを腰かけさせて、こちらにも配慮してくれる。ナゲルの立ち位置からユマがどんな状況かはわからない。


「あら、もしかして、ソラ様が強奪した作業着を渡されませんでした?」

 双子の一人が残ってそんなことを聞いてくる。ユマにあまり意識を向けさせたくないのだろう。

 どういう持病かはわからないが、取り乱す姿を王族が見せるのは外聞がよくない。

「ああソラ……様に頂きました」

「やっぱり、失礼ですが、一度お預かりして手直ししてからお届けしてもよろしいでしょうか。元々ソラ様用にお作りしていたものを、友達にあげるのと持っていかれましたから」

 つまりあの機能性重視だけのあまりおしゃれではない服もここで作られたのか。意外だ。


「それは名案ですね。どうぞこちらに、採寸いたしましょう」

 ナゲルに水を渡していたもう一人が加わり、あれよあれよと奥へ連れていかれた。




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