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窓越しの空  作者:
95/100

朝色

「ふう……」


 最後のダンボールを畳みながらようやく片付けの終わった部屋を眺めた。


 派遣会社に借りていたアパートから引越した。

 休みの土日で全てを済ませ明日からはいつもより早く家を出て出社。

 電車の乗り継ぎもあってしばらくは大変だろうがそれも仕方ない。

 次の仕事も決まっておらず気持ちも焦るが、貯金との相談にはなるが、なんとかできそうな数ヶ月で次の仕事を決まる事を願った。


 全てのものをとりあえずの場所に配置した部屋はまだまだ置かれた場所に馴染んでない様などこかぎこちなさを感じた。

 今の私を表しているかの様で、確かにまだこの空間に落ち着かない……。


 どこにいればいいかまだわからない……。


 自分の家だがまだ自分の家ではなかった。


 とりあえず雑巾で床や窓の拭き掃除を始めた。


 そうする事でこの部屋に自分を認めてもらえそうで、落ち着かない事もあるけれどそうする事でまだある違和感を埋めようとしていた。


 自己満足でしかないけれど。



 最近の起床時間は5時半。

 朝起きて寝覚めのコーヒーをいれる。

 まだ少しひんやりとするリビングにコーヒーのいい香りが充満する。

 カップに入れたコーヒーを椅子に座りゆっくりと飲む。

 今日も始まるーー、と思いながら、この朝のゆっくりとした時間を過ごす事にも少し慣れてきた。

 本当ならもう少し寝れたし、朝ごはんだって食べて出社できる。

 今は、通勤に時間がかかるので、コーヒーを飲む時間しかない……。

 あと少し早く起きて朝ごはんの準備をするよりも温かいコーヒー1杯を飲んで出社する。



 朝からバタバタしたくなかった。



 乗り継ぎのある通勤は1ヶ月と少し。

 乗り継ぎした電車から一気に混みだす。

 あたりは人、人、人……。

 今までも電車通勤ではあったけれど、ここまで混む事はない。

 初めての経験で、初日、降りたい駅で降りれるか心配だった。

 それが気になって降りる駅に着くまで何度も頭の中でシュミレーションした。


 ……が、案外すんなり降りる事ができて拍子抜けした。

 備えたはずが……それを充分に発揮する事はなかった……。

 まぁ、よかった……。


 朝早く家を出て一つ良かった事がある。



 朝焼けを見れる事。

 ひんやりとした空気を感じ、薄暗さの中に温かい色を感じつつ、電車に揺られながら少しずつその色にさらに色が足され朝になるのを見る。


 空を見るのが好きだったのにいつしか見なくなっていた。

 遠ざけた理由はいろいろあるけれど、結局は自分に余裕がなかっただけだ。


 今はのんびりと眺める時間がある。


 毎日通う同じ道、けれど空は全く違っていて、そんな事に気付ける程ぼんやり眺める時間ができた事は、生活をリセットした私の再スタートの始まり。

 これから自分のペースを作っていく最初の段階。


 おひとりさま、のんびりいこう……。


 また写真でも撮っていこうかな……。



 これからの生活に派手さや賑やかさはいらない。

 のんびりゆったり生きていければいい。


 そんな風でよかった。



 ある休みの日、近所にあるショッピングモールにキッチンに置く収納棚を見に行った。

 しばらくキッチンの隅に並べて置いていたがやっぱりちゃんとした棚が欲しくなり探し始めていた。

 遠出して見て回った先でも気にいるものはなく、今日何軒か回ったお店に自分の好みのものを見つけ即決した。


 こんな近場で見つけるとは……わからないものだ……。


 組み立てが必要で部材をひとまとめにしたものが段ボールに入れられている。

 それを持って帰って組み立てるだけ。

 棚自体が小さいサイズであった為、自分で持って帰れるサイズの段ボールだった。

 うちまですぐそこだし余裕だ……と思いお店を出発したけれど、案外腕が疲れて休憩しては歩き……を繰り返しながら運んだ。



 家までもうすぐ……というところでまた段ボールを壁に立てかけ手で顔をあおぎながら休憩していると、



「安堂さん……?」



 誰かが私を呼んだ。

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