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窓越しの空  作者:
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次に向かって

 出張から帰った夫に仕事が決まるまで家にいさせて欲しいという話をした。



「それは全然いいけど……。 ユウ、本当に一人でやっていけるのか……?」



「大丈夫。 何とかなるから。 ごめんね、私の都合に合わせてもらって……。 急いで探すから」




「別に急げとは言わないけど……」



 離婚を決めた以上、ダラダラする訳にもいかない。

 明日、離婚届を取りに行くと言ったら、夫が取りに行ってくれると言ってくれたのでお願いする事にした。


 私はこれからの事を少し話をした。

 仕事が決まって住む場所が決まったら出て行く事と、財産分与的なものも全て放棄したい事、理由は憎しみあって別れる訳ではないというのが大きかった。

 マンションも夫のものでかまわない、貯金も夫が使えばいい、今まで夫が稼いだお金でもあるし、ローンもあるから……という話を静かに聞いて小さくうなずきながらいろいろと考えている様子だった。



「亮輔からは何かないの……?」



 私は夫にそう聞いてみた。

 夫にだって言いたい事はあるだろうし、いろんな希望だってあるはずだ。

 私は良い妻ではなかったはずだ。

 離婚を切り出したのは私だけれど、夫との時間を楽しいものにしようと努力しなかったのも確かだったと思うし、その自覚もある。


 夫にどんな厳しい事を言われようが全部受け入れる覚悟で聞いてみたが意外な言葉が返ってきた。



「本当にこれでいいのかな、と思ったりもする……。 ユウの中では固まってるんだよね?」



 もちろんそうだ……。

 こんな事、軽はずみに話す事じゃない。

 これからまた夫婦をやり直そうと思っているのか……。

 私には無理だ……。



「考えに考えて出した答えだし、変わる事は相当な事がない限りないかな……」



 夫が最後に私を心配しての言葉だったのかも知れない。

 夫としての最後の優しさを見せてくれたのかも知れない。


 けど、お互いのこれからの事を考えると夫婦であるべきではない、それが答えだった。



「さ、次考えよう! 人生楽しむ事考えよう!!」



 少し暗い空気になった部屋を明るくしようと夫にそう言った。




「そうだよな……」




 あと少しの夫婦生活。

 それまでは妻を務めなければならない。

 有終の美という訳でではないけれど、全てにおいて全力投球するくらいの勢いでやろうと思った。




 この場所から離れる私はいろいろとやらなければいけない事があった。

 早くいろいろ決めてしまわないと夫にも迷惑がかかる。

 時間を少しも無駄にできないと私は久しぶりに木村さんに電話をかけた。

 仕事の情報を聞くためだ。



「すみませんねぇ……今いいところ紹介できてなくて……ない訳じゃないんですけど……ご自宅から少し離れてたりと安堂さんが通勤に大変なところが多くて……」



 そう申し訳なさそうに言っていたが、勤務地は少し幅が広がるかも……という話も含めこれからの事を木村さんに報告した。


 最初はびっくりしていた様子だったが、私が落胆する訳でもなく平然と話す事に木村さんも察したのか途中からいろいろ質問してきた。

 電話越しにもわかる冷静さだったのだろう……。



「……じゃあ、まだご主人と同居なさってるんですねーー。 でも、そのうち居住地もこれから探して変えられると……、で、居住地エリアの候補はあるんですか?」




「まだ決めてなくて……。 とにかくお仕事を探さないと私、生きていけないし……でも、住むところも探さなきゃいけないし……何から手をつけていいのやら……でも、これからの事もあるし木村さんには報告しておこうと思って……」




「そうですか……」



 木村さんはしばらく考えて、思い立った様に電話の向こうでパソコンを何やらカチャカチャと動かし始めた。



「僕から提案があるんですけど……」




 そのカチャカチャした先に何があったのかはわからないけれどその提案を聞いてみた。


 聞くとまさかの話だった……。

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