贅沢な一杯
店内はまだ私一人。
そっと出されたメニューとおしぼり。
少し辺りをきょろきょろと見回した。
店内にはまだ私一人、1番初めのお客だった。
「梅酒、好きなんですか?」
そう聞かれたが別段好きという訳でもなく、興味があったという方が正しかった。
「たまに飲むくらいなんです。 今日お昼に夜にこちらをやっていると伺って気になったので来てみました……」
「そうなんですか。 ありがとうございます」
「お店は何時からだったんですか? 開店時間をお聞きしてなくて……ネットとかで調べたんですがわからなくて、20時くらいなら開いているのかな……と思って来てみました」
「お店は20時からなんですよ。 読みが当たりましたね。 細々とやっているのでお客様もだいたい同じ方がいらっしゃって、どこかでご飯を食べられて2軒目で来られる方が多いかな……。 今日もこれから来られる方が増えるかな……って感じですかね」
そう教えてくれた。
「梅酒バーってあまりないんじゃないですか?」
「そうですね……。 少ないかも知れませんね。 梅酒もいろいろあるので飲んでみてくださいね」
メニューを開くと、手書きで書かれていた事に気付いた。
【今日の梅酒】と書かれていた。
「え……もしかして、メニューって毎回違うんですか?」
「あ、そうなんです……とは言っても、今日と明日しかやってないので明日は今日と一緒なんです。 週替わりと言った方がいいですね。 料理はその時々でお出しするものが違うんですが、今日はそちらに書いてあるものになりますよ。 お好きなものはありますか?」
どれも美味しそうなんだよね、これが……。
「どれもおいしそうで……。 梅酒もどれがいいかわらなくて……。 あの……、申し訳ないのですがおすすめをお願いできますか?」
「いいですよ。 梅酒はロックとソーダ割り、お湯割りもできますがどうしますか?」
「じゃあ、ソーダ割りでお願いします」
「わかりました。 ソーダ割りで。 それに何か添えますね。 食べれないものとかないですか?」
「ないです。 すみません、お願いします」
私はお任せした方がいいと思いお願いする事にした。
お店に流れるゆっくりと静かなテンポの音楽を店主が用意してくれているのを眺めながら心地よく聴きながら待っていた。
しばらくして出されたものはとてもおしゃれに盛り付けしてある。
3種、プレートに乗せられていた。
色鮮やかでおいしそう。
梅酒もすぐにやってきて、早速頂いた。
まろやかで少し甘く感じた。
ソーダがスッキリさせてる感じ。
その隣にはおしゃれなプレートがあって、こんなに緊張しながら梅酒を飲んだ事がない……。
缶をプシュっと開けてグイッと飲む。
これがいつものスタイルで自分が作った夜ごはんと一緒にチャチャっと飲む……。
それが現実だ……。
今目の前の光景、これが非日常。
家にはない細めのグラスに傷一つないスクエアの白いお皿。
先が細めのお箸で口に物を運んだ時も邪魔をしない。
お酒を愉しむ、味わう、という事に重きを置いていないいつもの感じとは全く別の空間がそこにはあった。
ソーダの泡までおしゃれに見える。
私はじっくりと味わいながらこんな時間を過ごすのもいいなと、やはり、米田さんと来る事に決めた。
今日のリサーチに大満足した。
2杯目を同じ物を注文したところで玄関が開き、男性2人のお客さんが入ってきた。
店主との会話から何度も来店するお客さんの様だった。
私の貸切時間は終わり。
堪能した事だし、目の前の一杯を飲んで帰る事にした。
時間は21時が過ぎようとしていた。




