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窓越しの空  作者:
74/100

オムライス

 夫の会社の最寄り駅で降り私はあのオムライスのおいしいお店へ向かった。

 今日は面接帰りで普段とは違ってスーツ姿。

 ここはいろんな企業が入ったビルが立ち並ぶオフィス街。

 スーツ姿の私はこの辺りでは紛れてしまう。

 着慣れないスーツを着ている私は違和感でいっぱいだが通り過ぎる人にとって私は珍しく映るのではなく大人数の1人だった。


 夫の会社のビルの横の細い路地を通り少し歩くとお店の小さな看板が見えてきた。

 開店少し前、もうすでに何人かのお客さんが並んで待っていた。

 私もその最後尾に並びお店の開店を待った。


 このお店はオムライス専門店ではない。

 ランチタイムには定食2種類とオムライスがあるらしい……。


 今日は夫は出張でここにはいない。

 出勤なら声をかけて一緒にランチでも誘ってみようかな、と思ったけど……。

 でも、日頃しない事をしようとするとやっぱりタイミングは合わないものだ……。


 気付けば私の後ろにも人がどんどん並びたぶんこの人数はあの小さなお店には入りきらないだろう……。

 私は最初に入れるか入れないか微妙なところだろうな……と思いながらお店が開くのを待った。



 しばらくするとお店のドアが開き、中からお店の人が出てきた。



「お待たせしました。 どうぞ」



 その声を合図に並んだ人たちがお店の中へ入って行った。

 ……と、やはり一番には入りきれずまた待つ事に。


 お店の前あたりで待っていた私の目にメニューがかかれてるる黒板があった。

 聞いていた通り、2種類のランチプレートとオムライス。

 今日のランチプレートの内容が書かれていた。

 どちらもおいしそうでここに来て迷ってしまいそうになったが、初めて訪れた訳だしここはオムライスを食べないと……、そう思い直した。


 この待つ時間もお店からいい匂いとともに食器の音がして楽しみを倍増させた。


 そうしていると、少しずつ待っている列が動き出し、しばらくすると私もお店に入る事ができた。


 私はカウンターの一番端に案内された。

 周りを見るとほとんどの人がオムライスを注文していて日替わりランチを注文している人は少なかった。

 でも、日替わりを注文をしている人はここによく来る常連さんで今日は日替わりにしたのかな……。

 そんな事を考えながら、新参者の私はオムライスを注文した。

 私は目立たない様に周りを見回した。

 厨房には細身の優しそうな男の人が一つ一つ丁寧に作っていた。

 厨房の奥にボトルキープの棚が見えた。


 ん?

 ボトルキープ?

 ここってお酒も出すのかな……。


 そう思ってボトルキープの棚を眺めていると、店主の人がそれに気付いて声をかけてきた。



「あ、あれですか? あれ梅酒のボトルキープなんです。

木曜日と金曜日の夜だけちょっとしたものを出すくらいですけど開けてるんです」




 一人でぽつんと待っているのがわかって気を遣ってくれたのか作るのに忙しそうなのに声をかけてくれてそう教えてくれた。




「ちょっとしたもの……ですか?」





「あ、僕が梅酒が好きでいろんな梅酒を集めてて……、お酒も梅酒オンリー、梅酒好きな人に飲んで欲しくて木金だけやってるんです。 だから、メニューも梅酒に合うものしかないんですよ」





「そうなんですね。 梅酒いいですね!」





「梅酒、好きですか? よかったら、木金だけですけどやってますからまた来てみてくださいね」





「ありがとうございます」




 へぇ……。

 木金限定かぁ……。

 梅酒だけかぁ……。

 でも、雑誌に載せない事とかもそうだけど、きっとこの仕事は趣味の域なんだろうなぁ……。

 目の前で直向きにオーダーされたものを作る店主の生き方に素敵だな……と憧れに似た気持ちを持った。



 しばらくするとオムライスが目の前にやってきた。

 黄色い卵が柔らかで優しさを全面に出した間違いなくおいしいを感じるオムライス。

 私はスプーンでゆっくり一口分をよそい、口へと運んだ。



 おいしーーーーい!!!



 ほんとにおいしくて私は夢中で食べた。

 一気に食べたと言ってもおかしくない。

 ほんとにおいしくて食べ終わるのが惜しいくらい。

 満たされた私はお水を飲んで少しの間おいしさの余韻に浸っていた。

 まだ待ってる人もいるし、のんびりもしてられない。


 ぼんやりと眺めるボトルキープの棚。

 いろんな銘柄の梅酒が並んでいてその一つ一つにチェキで撮られた写真に名前を書いたものがかけられてあった。


 誰のものかを識別する為のもので常連さんのものだろう……。

 私からはっきり見えるのは数本。

 私はその一本に目が止まった。




 『……安堂…… ?』




 安堂と書かれたそのボトルには髪の長い女の人の写真が付けられてあった。

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