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窓越しの空  作者:
69/100

タイミング

 駅に着き改札を抜けると目の前は大通りで、その大通りを真っ直ぐ300mくらい進むと夫の会社がある。

 夫の会社はその大通り沿いにあり自社ビルだった。

 この辺りはいろんな企業が並ぶ企業地帯で、行き交う人もスーツの人を目にする事が多い。

 飲食店も多く、お昼のランチどきは各々の会社からたくさんの人が出てきてこの通りは今より更に賑やかになる。

 ランチタイムはどこのお店も忙しそうだった。


 夫の会社のすぐ脇の路地奥においしいオムライス屋さんがある。


 ……というか、正確にはあるらしい。


 以前に友達からオムライスのおいしいお店があると聞いていたのだ。

 その聞いた当時、そのお店は開店して間もないくらいだったが口コミでおいしいとすぐに話題になっていたのだ。

 でもタウン雑誌のも載ったのを見た事もなく、友達の間では凄い頑固オヤジみたいな人が作ってるのではないか……と話していたが、1人の友達がある時勇気を出して行ってみたところ、とても穏やかな人が作っていたと聞かされた。


 そこはカウンターしかないとても小さなお店で、取材をお願いされた事もあるが、お店が小さいのでもし雑誌を見てたくさん来てもらう事になってしまうと、待たせてしまう事になってしまうのは申し訳ないから、という理由で断っているらしい。


 タウン誌に載らない訳だ……。


 穏やかな店主がのんびりオムライスを作っているのか……。

 きっとのんびりした時間が流れてるんだろうな……。

 あ、でもカウンターだけならサッと食べてサッと出なきゃいけないよね。

 ゆっくりする時間はないだろう。


 せっかくここまで来たし食べて帰ろうと思っていたけれど、もう今にも雨が降り出しそうな空を見ると諦めて帰ろう……と思っていた。


 もうすぐそこまで来ていたのに……。

 残念だけど仕方ない……。


 きっと今日じゃなかった。

 また今度を楽しみにしてよう……。



 私は自分にそう言い聞かせ夫の会社に急いだ。




 夫の会社は入り口の自動ドア奥に受付カウンターがある。

 天井は高く、美装の人がいつもきれいにしていて清潔感があふれる。


 入り口横には少しスペースがあり、3ブースのちょっとした商談できるスペースもある。


 私が会社に着いた時も人がいて何やら楽しそうに話しているところだった。


 私はその話の邪魔にならないように静かに受付カウンターへ近寄っていった。



「あの、すみません……。 安堂と申します。 営業の安堂がお世話になってます。 あの、これ……、総務の芹沢さんからお聞きかと思うのですが……」



 そう言って封筒に入れたクリアファイルに入っている書類を見せた。




「あ、安堂部長の奥様でらっしゃいますね。 いつもお世話になっております。 芹沢から聞いております。 昼からの会議の書類でございますね」




「……あ、はい……。 すみません、こちらみたいなのでお渡し頂けたら……」




「これ、芹沢から預かってます。 奥様がいらしたら渡して欲しいと」



 渡されたのは個包装されたお菓子数個が綺麗にラッピングされていたものだった。



 『今日はありがとうございました。

  コーヒーブレイクなさってください』



 心遣いなメモも添えて。



 何て素敵な人なんだ……。

 私にそこまでしてくれるなんて。

 ただ書類を持ってきただけなのに。



 ありがたくお礼を言って私はそれを受け取り、会社から出た。

 外に出ると案の定、ポツリポツリと雨が降り始めていた。

 この雨が少ない間に駅へ急ごう。

 私は小走りに走り始めた。


 雨が降る中駅に向かいながら私はさっきの事を思い出していた。



 私は受付の人の言葉に引っかかったのだ。

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