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窓越しの空  作者:
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あの時の自分

 きっと、少し前の私はこんな事を想像もしてなかっただろう。


 恋だの愛だのに無縁の立場。

 夫とは恋焦がれる様なそんな気持ちはなくなってしまったが……、いや……、元々他に比べると夫婦なのにクールな関係だったのかも知れない。


 それを嫌とも思わず、正直何も不満もなくこれが私の幸せというものの形だと思っていた。


 夫婦二人、子供はいなかった。

 夫は仕事で日々全国を飛び回っているが、1人の時間をのんびりと過ごす事が自分の生活のペースだった。


 朝起きて、夫がいれば一緒にご飯を食べて会社へ送り出す。

 朝ごはんの後片付けをして洗濯をして掃除をして、買い物に行って……。

 テレビを観たり、雑誌を買ってきて読んでみたり……。

 たまに友達とランチに行ってみたり……。

 友達の仕事と育児の話を聞きながら、大変そうだけど楽しそうに話す姿に彼女の充実を感じたが、子供もおらず専業主婦の自分に焦るという事もなく、自分のペースを変える事はなかった。


 夫は仕事が趣味の様な人だった。

 付き合い出した頃は、こんなに仕事に打ち込める程今の仕事が楽しいのか……と、そんなに仕事に対して情熱を持っていなかった私は不思議で仕方がなかった。


 その頃はたまの休みを見つけてどこかに遊びに出かけたり、旅行もした。

 せっかく旅行に行ったのに行った先で仕事の電話が入り、夫だけ戻るという事もあった。

 一人残された私は旅先を一人で満喫する、そんな事もあった。


 何となく結婚したと言えばそうなのかも知れないが、夫の仕事に打ち込む姿勢は私にはないものだったので好きなところの一つだった。

 あとは私を放任してくれていたり、いろんな事を口うるさく言わないところ……そんなところが心地よかったのかも知れない。


 私の結婚生活はそうして始まった。


 専業主婦でいてくれと夫にお願いされ、仕事も辞め、そのうち子供ができて育児に明け暮れて……と想像していた通りにはならなかったが、これがのんびり過ごすという事なのだと、そんな毎日を送っていた。


 そんな中見つけたのが空の写真を撮る事だった。


 たまたまリビングから見上げた空に変わった雲の形を見つけたのがきっかけだった。

 その見つけた雲に勝る雲はないかと空を見る事が増え、いつしかおもしろそうな雲から空を撮る事へ変わっていった。


 何も考えず始めたSNS。

 そのきらびやかな世界を、こんな世界もあるんだと、自分に置き換える事もなく、ほんとにただのユーザーでしかなかった。

 

 スカイさんに恋をしてしまい、自分にも恋ができる事に気付いた。

 その気持ちに後ろめたさはあったが、会った事のない人に文字越しにいろんな話をしたあの時間を楽しみにしていたのは本当だった。


 まさか、その相手と知り合ってしまう事は想像もしていなかった。

 スカイさんが私と会いどう思ったのか、あの時の気持ちはどうだったのか、どうして会おうなんて約束をしたのか……。


 いろんな事を聞きたい人が今、目の前にいる。


 この会社から離れる事が決まり、今まで聞けなかった事がどんどんと頭に浮かんでくる。

 今日で最後だと思うと尚更だった。



 ……で、私はそれを聞いてどうするの……?



 会社の人たちと私を交えていろんな話をできる最後の時間……。


 自分の気持ちにじっくりと向き合う時間など今はなかった。



 でも……。


 心の中が話したいと言っている。

 その気持ちを抑える事に必死だった……。

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