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窓越しの空  作者:
55/100

的中

 ずしっと重い白いその封筒は確かに私宛だった。

 派遣会社から、と、都合よく考えてみるが、派遣会社の明記された封筒でもない……。


 その封筒からは冷たさしか感じなかった。

 中身を見なくても私の脳はその手から感じる何かを感じ取っていた。


 そうは言っても……、中を開けてなーんだ!!と思う事になるかも知れないな……。

 案外、想像だけで想像していた様な事はなかった……って事も多々ある。


 けれど、夫の前でその封筒を開ける勇気はない……。

 もし、違っていたら……、それを考えると開ける事はできなかった。


 ……その時点で、もう自分の中では良からぬ物と断定している。


 着替え終えた夫が寝室から出てきた。

 私は郵便物の束をキッチンへ持って行き、レンジ横に立てかけた。


 私に郵便物がある事を伝えた夫はそれ以外私に何も聞いてこなかった。


 夫はドスンと椅子に座り夜ごはんが出されるのを待つ。

 今日はいつもより機嫌がいいのか鼻歌なんかを歌っている。


 テーブルにごはんを並べ食べ始める。

 向かいに座った夫はアジフライをおいしそうに食べている。

 サクサクという食欲をそそるその音も気分良く感じる。


 私はと言うと、あの違和感しかない封筒が気になり食事どころではなかった。

 いつもならゆっくりと食べる食事も、早々に終わらせようとしていた。

 何を食べても食べた気がしない。

 味さえも感じないのだ。

 私の全神経はあの封筒に注がれているからだ……。


 まだ食べている途中の夫が、食器を片付けようと立てった私に、びっくりした顔をした。




「どうしたの? もう食べないの? そんなに残す?」




 お皿に残されたおかずを見てそう言った。





「あ……、うん。 今日はあんまり欲しくなくて……。 また明日の朝食べる……」





「珍しいね。」



 そう言って夫はまた食べ始めた。



 私だけにかかる重い空気……。

 同じ空間にいる夫とは全く違った空気感。

 夜ごはんをおいしそうに食べる夫は楽しそうにさえ見える……。

 こんなにも違うものなのか……。


 私は残ったおかずにラップをし、冷蔵庫へ片付けた。


 食器を洗いながらも後ろにある封筒の存在はビンビンと感じる。


 中に何が入っているんだろう……。

 手紙とかも入ってるのかな……。



 私の心の中はその事ばかりだった。



 お風呂が沸いた音楽が鳴った。



「あーー、お腹いっぱい! さぁ、お風呂入ろうかな……」




 そう言って夫は立ち上がり、お風呂場へ向かった。

 シャワーの音が聞こえてくると、私はあの封筒を手に取り急いではさみで開封した。

 封筒の端をはさみで切る手が震える……。

 心臓が打つ鼓動もいつもより早い、そんな気がした。


 封筒を傾け、中のものがスルっと手のひらに入った。



 やっぱり……。



 私が想像していたものに間違いなかった。

 手のひらに入ったそのものは10枚程度の写真だった。


 その写真は全て会社帰りに撮られたもので、私と向井さんが写っていた。

 自転車を押す向井さんの中で笑顔で話す私。


 私ってこんな表情してたんだ……と、初めて知る自分。

 一瞬冷静になるが、こんな写真を撮られるのは普通じゃない。

 我に返りまた写真を見る。



 誰がこんな事を……。



 私は、封筒の中に白い紙が残っている事に気が付いた。

 恐る恐る取り出すとそれはやはり手紙らしきものだった。


 思った通りの事が起きていて、これ以上起きないで欲しいと願った。

 けれど、その願いも虚しく、私の願いを簡単に裏切った。


 私はその手紙らしきものをゆっくりと開いて愕然とした……。

 短い言葉で印字されたその手紙に、恐怖を感じた。




 『男をそんな風に使うんですね。

  この男もあなたと同じ最低な人なんですね。

  今度はどんな写真が撮れますか?』

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