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窓越しの空  作者:
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勝手な自分

「そんな事、いい訳ないです。 向井さんにも都合があるだろうし……。 そんな長い間……、お願いする私が悪いんですが……2、3日で充分です!!」




 逆にそんな長い間なんて悪い……。

 会社で変な噂になってしまったら申し訳ない!!

 数日ならたまたま時間が同じになったから一緒に帰った……なんて事にもできるが、それが毎日となると変に誤解される事もあるだろうし、そうなったら向井さんに悪い……。





「自分がそうしたいんですよ。 安堂さんに安心して欲しいから、それの方が俺も安心できるし。 一緒に帰るのやめた後を考えたら……」






「いや……、本当に悪いし、そのうち私も一人で帰る事に慣れてくるかな……と思うんです……。 そこまで付き合ってもらうのは申し訳ないです……」






「じゃあ、時間が合えば一緒に帰りませんか? そういう事にしておけばどうですか? お互い、予定がある時はそちらを優先! ほんと、俺の事は気にしないで!!」






 向井さんの提案に押し切られる形で……、そんな感じで一緒に帰る事が始まった。


 向井さんは自転車をカラカラと押し、ゆっくりと私に合わせて歩いてくれた。

 いつもその日の仕事であった事や社員の人の話がほとんどで、今の会社に慣れた私はどの話を聞いても理解できた。

 

 駅までの道のりはそれ程の時間はかからない。

 駅までの間で話が終わる様に話すペースさえも考えてくれているかの様に駅に着いた頃には区切りよく話が終わっている事が多かった。




「今日もありがとうございました! 向井さんの話に聞き入ったと思ったら駅に着く時にはいつも終わってる……、不思議ですね……。 まだまだ続きそうに思うのにそうじゃない。 お話しするのが上手なんですね」



 こうして帰り始めて2週間くらい経った。

 私は自然と笑顔になっている事が多くなった。

 向井さんとのこの短い時間はとても楽しい時間となっていた。




「話途中だと嫌でしょ? 何だかその先が気になったりしません? それに途中だと、俺が安堂さんを足止めさせてしまいそうだから。 だから考えながら話してます」




 そうだったんだ……。




「そのあと、何かありましたか? また電話がかかってきたとか……」





「いえ……、あれからはないんです……」



 ほんとに何もない。

 いや、なくていいんだけど……どんなタイミングで連絡してきてるんだろう……。

 最初の時ってどうだったっけ……。




「もうないといいですね!」





 本当にそう思う。

 誰がわからない相手に理由も分からず自分の事をある程度分かった上で何か言われる程怖いものはない。


 今もどこかで見られてるんだろうか……。




 ……といろいろ思った時、気が付いた。



 もし、会社帰りに見られていたとしたら、私といると向井さんの事も知ってしまう事になってしまう。


 私に関わる事で向井さんにまで迷惑がかかる様な事があったら……。



 ハッと我に返った。

 自分の事しか見えてなかった事に今更気付いてしまったのだ……。

 楽しいなんて思ってる事自体不謹慎だ……。



 駅に着きいつもの様にお礼を言って別れたが、自分の無責任さを改めて痛感してしまった。


 いつも神経を研ぎ澄まして乗る電車もその日は自分のマンションに帰るまでの記憶も所々しか覚えていなかった。

 自分の勝手さに呆れてしまった。


 本当に何をやってるんだろう……。

 少し考えればわかる事なのに……。


 私はうなだれながらいつもの様にポストの郵便物を取り、自宅へ戻った。



 今日は夫が帰ってくる日で夜ごはんの支度をしなきゃいけない。


 うなだれてる暇はない。

 気持ちを切り替えて夜ごはんを作り始めた。


 しばらくすると夫が帰ってきた。






「おかえり。 もうすぐごはんできるよ」






「あ、そうなの? じゃあ、先ごはんにしようかな……。 ん……?」



 夫はダイニングテーブルに散乱した郵便物を見た。

 いつもはいらないものは捨てたり仕分けして夫のものだけを入れるカゴに入れておくのだが、今日はそれをせずに置いたままにしてしまっていたのだ……。




「あ! ごめん! 今日急いで帰ってきてごはん作り始めたから……置きっぱなしになってるね。 片付けるね」





「珍しいね、と思っただけ。 いいよ、別に、後でゆっくりすればーー? ユウになんか来てるみたいだよ」



 そう言って寝室へ着替えに行った。

 私に郵便?

 郵便の束を手に取り見ると、見慣れない封筒で私宛に届いていた。


 手に取ると少し重い。

 何となく、何となくだが嫌な気しかしなかった……。

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