真実
本当にスカイさんなんだと、向井さんを見ながらそう思った。
顔も知らない、声も知らない、ただ、メールのやり取りだけだったけど、メールから感じる優しさと穏やかな感じに私は癒され、もっと知りたくなった。
お互い、そうだったはず……。
私だけじゃなくスカイさんもそう思っていた事を思い出し、男と女を意識したはずだった事に少し恥ずかしさを感じた。
あんなにも好きだったスカイさんが目の前にいる。
もし、向井さんとして出会っていなければ、今よりもう少し向井さんを意識したのだろうか……。
それは向井さんも一緒だろう……。
こんな形で私と会う事を望んでいなかっただろう……。
「向井さん、いろいろ聞いてもいいですか……? もう着いちゃいましたけど……」
駅までの道のりで全てを話しきれなかった……。
「俺はいいですけど……、安堂さん、時間大丈夫ですか? どこか入ります?」
「今日は夜風が気持ちいいので、あそこに座りませんか?」
そう言って少し先の石垣を指差した。
はるか先まである道沿いの石垣には、距離を保ちながら人がぽつりぽつりと座っている。
一人でイヤホンで音楽を聴きながら座っている人や、ギター片手に何かを静かに弾いている人、何やら楽しそうに話すカップル、ビールを飲んでゆっくりしている中年男性……、いろんな人がそれぞれの時間を楽しんでいた。
今日は風が心地よく、気持ちよく過ごせそうだった。
私と向井さんは石垣に腰掛け、駅前にあった自販機で買ったコーヒー片手に話し始めた。
「私があのyuuだと気付いた時、どう思ったんですか? イメージと違いました?」
「いえいえ、そんな事はないですよ。 安堂さんがうちの会社に来た時、工場内で安堂さんの噂で持ちきりだったの知ってますか?」
「え! 私がですか!? 何でまた?」
「うちの会社、派遣社員さんがあんまり来ないから、安堂さんが珍しかったんです……。 意味もなく事務所に行く人が多かったです。 気付いてました? 帰ってきて、見てきたよー、みたいなそんな話で持ちきりでした……。 みんな、かわいい人が来た、って言ってましたよ」
「ほんとですか……? お世辞でもありがたいです……」
「ほんとですよ。 それを聞いて俺もどんな人なんだろう……って思ってたらトイレで会ったんです。 見た事ない人だなぁって思って、もしかして……って思って思い切って話しかけたんです……」
あの時の事は覚えている。
声をかけられびっくりしたけど、その時の私は心がずっと曇ったままで何もかもをシャットアウトしていた……。
「その時の私、今より暗くなかったですか? 話しかけにくいオーラ出してませんでしたか? それならほんとにごめんなさい……」
「素敵な人だと思いましたよ。 あんまりしゃべらないなぁとは思いました……。 あ、けど、悪い感じはしなくて、何かあったのかな、って感じでした」
素敵な人には程遠い。
相手を悪く言わない向井さんの優しさだ……。
私は一番聞きたかった事を思い切って聞いてみた。
「向井さん、……いや……、スカイさんに聞きたいんですが、なぜ突然いなくなったんですか……? 話せる範囲でいいんですけど……」
一番聞かれたくない事なのかも知れない。
変な空気になったらどうしようとも思ったが、もう私がyuuだとわかっているし、もし、今後気まずくなったとしても派遣期間だけ我慢すればいい……、そう思い思い切った……。
「ほんとに好きになってしまったからです」
それは私が想像していた答えと違っていて、ただ何も言わずに向井さんを見る事しかできなかった。




