まさか
「忙しいんですね……。 空の写真は撮ってるんですか?」
空の写真は撮り続けていた。
元々撮っていた事もあって、あの渡り廊下で向井さんに会い見せる事がなくとも撮り続けていた。
ただ、見せる事が前提ではなくなっていた事もあって以前の様には意欲的な写真を撮る事はなくなった。
「撮ってますよ。 また見せ合いっこしましょうね」
そうは言ったけれど、あの渡り廊下には逃げ込む事はもうないかも知れない。
社交辞令とはこの事なのかな。
向井さんを見るといつもの笑顔はなく、思い詰めた感じがした。
やっぱりいつもの感じと違う。
あの、向井さんが渡り廊下へ来なかったあの頃ぐらいから少し雰囲気が違ってそれが今も続いていた。
「向井さん、何か考え事してますか? 違ったらごめんなさい。 けど、少し前からそう見えてたんです……。 私では何の力にもならないかも知れないけど……」
私を気にかけてくれていたもの静かだけど朗らかに笑顔でそっと寄り添ってくれた向井さんに戻ってくれたらいいなと思いそう聞いてみた。
向井さんは前を見つめたまま話し出した。
「安堂さんに聞きたい事があったんですが……。 安堂さん、SNSしてたのをもうやめたって言ってましたよね?」
「投稿をやめました。 投稿も全部消しましたけどアカウントはまだ残してあるんです」
「また投稿する為ですか……?」
「いや……、投稿はしないと思います……」
そう答えながら、確かに何でアカウントを残す必要があるんだろうと思い直した。
もうスカイさんとも繋がりはなくなってしまったし、もうアカウントを残す意味もない……。
「もうアカウントも消そうかな……。 持っていても意味がないし……、投稿もするつもりもないし、そもそももう使ってないんですよね。 向井さんに言われて気が付きました。 何で消さなかったんだろう……」
理由は簡単だった。
スカイさんとの思い出にすがっていただけ。
あの時の、あの気持ちを忘れたくなかったから。
あの時、確かに私は恋をした。
でも、それも思い出にしなきゃ。
心がその方向へ動きつつある今、このタイミングでアカウントを消そうと思った。
そう決めたら何だかすっきりした気分になった。
「安堂さんって、yuuさんですか……?」
え……?
「……え?」
「安堂さんって下の名前、ユウさんなんですよね? アカウント名ってローマ字表記のyuuさんじゃなかったですか……?」
「……そうですけど……、どうしてそれを……?」
駅はもうすぐそこのところで私は立ち止まってしまった。
なぜ私がわかったんだろう……?
それに、なぜSNS上の私を知っているんだろう……?
私、そんな話した事あったかな……?
いや……、私の下の名前を今確認された訳だし話した事はやっぱりないんだ……。
でも何で……?
「やっぱりそうですよね……。 何となくそうなのかな……って思ってました……」
「……え……? そうなのかな……っていつから思ってたんですか……?」
「少し前です。 安堂さんのスマホに入った空の写真を見た時に自分が見た事ある写真だったのでもしかして……って思ってました……」
「俺、スカイです」
向井さんから発せられた名前は私が恋焦がれた人の名前だった……。




