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窓越しの空  作者:
38/100

はじめの一歩

 私はまだ見せれていなかった空の写真を向井さんに見せた。



「これ、どこから撮ったんですか?」





「これですか? これはリビングからです」





「そうなんですね。 綺麗なオレンジですね」


 それは、リビングにオレンジの光が差し込むほど綺麗な夕焼け空を撮ったものだった。


 その写真を向井さんはしばらくじっと見ていた。

 こんなにもじっと見るのも珍しいなと思いながら、向井さんがスマホから目をそらすのをじっと待っていた。




「安堂さんって前、俺が写真をお願いする前に空の写真を撮ってたって言ってましたっけ……?」



 見るのをやめた向井さんにそう言われた。





「あ、撮ってました。 辞めちゃってましたけど。 どのくらい撮ってたのかな……、このスマホに変えてからだから……2年くらいかな……?」





「撮ってたまに眺めてたりしたんですか?」





「それが、ずいぶん撮ったままだったんです。 何となくSNSにアップもしてみたんですがそれは今も辞めちゃいました……」





「そうなんですね……」





「……何かありました? 今日いつもより元気ない気がするんですけど……」


 いつもの感じとは違っていたので聞いてみたけれど気のせいみたいだった。

 まぁ、何かあったところで私に言うはずもなく……。


 あんまり話したくない時もあるよね。

 テンションがどうしても上がらない時だってあるし……。

 向井さんのそういうところは今日が初めてだったけど、そういうところもあって当然だよね。


 向井さんも私も同じ。

 当たり前なんだろうけど、一つ向井さんの事を知れた気がした。



 小休憩も終わり、席に戻って米田さんにさっきの向井さんの話をした。



「そりゃ、人間だからねーー、そんな時もあるだろうよ。 でも確かにいつも穏やかだよねーー、物静かという訳じゃないんだろうけど……」





「いつもの感じとは違ってたので理由があるのかなと思って聞いてみたんですけど、何もないそうです……。 先週一週間一度も渡り廊下でお会いしてないんですよーー」





「先週……、総務の人と話しているの見たけど? いつもと変わらない感じだったと思うけどねーー」



 休んでいた訳じゃなかったのか……。

 やっぱり、忙しかったり、タイミングが合わなかったりしたのかな……。

 そんな事もあるか……、そう思い仕事を始めた。


 今日は仕事がすんなり終わらないものばかり。

 問い合わせされている事を調べ直したり、客先からの連絡待ちで手が止まったり……。

 のんびり仕事をできる訳ではないけれど、仕事が思う様に進まず、ただ時間だけが過ぎていく事に少し焦りを感じていた。


 待っている間にトイレに行こうと席を立つと、総務の事務の女性に声をかけられた。

 契約更新を派遣会社から説明されているかどうかの確認たった。

 どうやら更新に関する書類が派遣会社からまだ届いていないらしく、私に話が通ってるかどうかを確認しておきたかったらしい。


 話が通っている事を聞いて安心した様子で、書類は後でもどうにてもなるからまた派遣会社に連絡して聞いてみると、そう言っていた。



「そうそう。 安堂さんって、お名前、カタカナで『ユウ』で合ってましたよね??」





「あ、そうです。 合ってます!」





「ですよね! よかった! 登録間違いをしてないか確認したかったんです! この前、安堂さんの下の名前を聞かれて確か、ユウさんだったよなぁ……って思って思い出したんです。 カタカナだったよなぁ……って。 間違ってないのかな……って不安になってしまって……」





「あ、私の名前の話になったんですか?」



 知ってる人は知ってるけど、知らない人は知らないよね。

 私も会社の人みんなの下の名前を知っている訳もなく……。



「そうそう。 よく話すのに下の名前を知らないんです、って。 今更聞けないからって……、向井さん、知ってるでしょ?」





「……あ、はい。 向井さん、お話ししますよ」



 向井さんが?

 直接聞いてくれればよかったのに……。

 私はそのくらいしにか思っていなかった。


 その事に全くの疑問を感じていなかったのだ……。

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