思いのかけら
「あの……、お休みの時にスーパーで会った時に一緒にいた人は……彼女ですか……??」
私は勢いで聞いてみた。
あの女の人が気になるというか、彼女かどうかが気になるというか、何だか意味もなくモヤモヤを抱えている様で嫌だった。
確か失恋したって言ってたけど、立ち直りも早くもう彼女ができたのかな……。
そうであれば、向井さんの私のイメージとは違ってて幻滅までとはいかないけれど、そうであって欲しくないな……と勝手ながら思ってしまっていた。
唐突にプライベートの事を聞いて向井さんは向井さんで私の事をデリカシーがないと思ってたりして……。
そう思われるのも嫌だと思い、聞いてしまった事を後悔した。
聞かずにいる方がいいことだってある……。
やってしまったーー!!
すみません!! 答えなくていいですよ!!
そう言おうとした時、向井さんは少しびっくりした様な、でも聞かれて不快な感じはなく笑って答えてくれた。
「違います、違います!! あれはいとこなんですよ。 2つ下のいとこであの日、スーパーの近くで会ってスーパーまで着いてきたんですよ……。 そんな風に見えました? 笑ってしまいました!」
「そうだったんですね。 仲が良さそうだったのでてっきり彼女なのかと……」
と、言った後に気が付いた。
店内では気付いてない事になっている……。
駐車場で声をかけられて、それとなく話しただけなのに、仲良さそうなんてどこで見たんだ……って思われたかな……。
一人でアタフタしてしまい、けれど今更弁解する訳にもいかず、どうぞ聞き流して下さい……と心から願った……。
「いとこ、明美っていうんですけど、幼なじみみたいな感じなんです。 早くに両親が他界したのもありますけど、明美の家でいる事も多かったんですよ。 歳も近いからいろんな話したりします」
いとこと聞いて、何だかホッとしている自分がいた。
私がイメージしていた通りの人だった事に安心した。
彼女じゃなかったんだ…‥。
「あの日も、早く家に帰れって言ってたんです。 おばさんたちも待ってるだろうから……。 でも、僕に世話を焼くのが昔から染み付いてて……この歳になっても説教とかもよくされますよ」
そう話してくれた。
いい関係なんだなと思ったが、あの日の冷たい視線をふと思い出した。
けれど彼女ではなかったという話を聞いて、あれは気のせいだったんだと思った。
なぜ、冷たく感じたのかわからないけれど、そう思ってしまった事を申し訳なく思った。
「そうだ! 綺麗な空の色が撮れたんですよ!」
向井さんが見せてくれた写真には海と空が写っていて、確かに綺麗な青だった。
パキッとしたはっきりとした青。
海との色とは違う青だった。
「ほんとだ。 綺麗な青ですね。 ほとんど雲もなくて一色って感じで。 お天気いい日だったんですね」
「ふと、ドライブがしたくなって行ってきました。 天気がよくて気持ちいい日だったから空の色も綺麗でしたよ」
私は、お天気の日、綺麗な青の空を撮った事があった様な気がした。
そう思うと急に気になりその写真を見たくなって自分のスマホの写真フォルダを見直してみた。
やっぱりあった!
そこには自分が思っていた青い空の写真が残っていた。
もう随分前の写真。
なかなか見直す事もなかったが、見ると何となくその時の事を思い出す。
「向井さんの青には負けますけど、私もこんな青を撮った事がありますよ。 これはもう随分前の写真ですけど……」
そう言って私は自分のスマホを見せた。
「ほんとだ! 綺麗な青ですね。 これ、随分前の写真なんですか?」
「そうなんです。 私、空の写真を毎日撮っている時期があって、これは空だけの写真フォルダの中に入ってるものなんです。 ほら、こんな感じで……」
そう言って、私はパラパラとその空の写真のフォルダをゆっくりとめくっていった。
「ほんとだわー。 随分前からたくさん撮ってたんですね」
と、パラパラとめくる手が一瞬止まった様な気がした。
何か気になった空があったかな……?
そう思ったが、もう小休憩も終わりで席に戻る時間になっていた。
気になったら聞くだろうけど、聞いてこないって事は気になったとしてもさほどじゃなかったんだろうな……。
それくらいに捉えていた。
「さ! あと少し頑張りますか!! 席に戻ります」
「……あ、はい! じゃあまた!」
あともう少し。
今日は定時までバタバタして忙しそう。
定時後に米田さんに延長の事を忘れずに報告しないと。
私は小走りで席に戻った。




