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窓越しの空  作者:
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希望しかない

 夫が言っていた20時を過ぎた頃、玄関が開いた。



「ただいま」



 夫が帰ってきた。

 今回は四国へ行っていたらしい。


 持って帰ったキャリーバッグは玄関に置いたままでリビングへ入ってきた。



「おかえり。 洗濯物は?」



「え? 玄関置いてる」



「また玄関? いつも言ってるけどそれだけは出しといてよ……」



「ユウがやってよ。 オレ、よくわかんないし……」



 キャリーバッグから洗濯物を取り出して洗濯機へ入れるだけなんだけど、それでもやった事がない。


 私もやらないとわかっていながら小言を言う。


 私はため息をつきながら、夜ごはんの準備を進める。


 夫は1年くらい前から更に出張が多くなった。


 最初の頃は出張に行くごとに行った先のお土産を買って帰って来ていたが、これだけ出張が多いとお土産も買って帰ってこなくなる。


 それに夫婦二人。


 お土産を買って帰っても食べきれなかったり、お菓子なんかは小さいものを選んで買ってきても飽きてしまう事もある。

 自然と買って帰らなくなった。


 四国とは聞いても四国のどこまでは聞かないし夫も詳しく話さない。

 お互い、それでよかった。

 そんな感じがいつの間にか当たり前になっていたのだ。


 デーブルに少しずつ夜ごはんを並べていく。

 普段着に着替えた夫がテーブルにつき、


「ユウ、お箸」


 そう言った。



 『お箸くらい取りにきてよ……』



 そう思うけれどもう諦めている。


 お箸を夫に渡し、全て並べ終えて私も先についた。


 テーブルに並べられたごはんを淡々と食べ、四国の天気はどうだったとか、そんな話をして夜ごはんを終える。



 食器の片付けをしていて思い出した。

 仕事に出たいという話……。

 私は、お風呂の準備に入る夫に話しかけた。



「あ、亮輔、私さ、仕事しようかと思ってるんだけど……、してもいい??」



 それを聞いた夫は少しびっくりしていたが、反対はしなかった。



「別にいいけど……、急にどうしたの?」



「いつも家にいるのもなぁって思い出して仕事でもしてみようかな……と思って……。 亮輔も出張も多くなったし、前みたいに毎日帰らなくなったでしょ? それもあるかなーー……」



「ユウがそうしたいならいいよ。 でも、大丈夫? できるの?」



「とりあえず、派遣に登録してみる。 少しずつやれる事を見つけてやってみようかな……」



 ちょっと意外と思ってる顔をしていたけれど、とりあえず許しはもらえた。


 明日にでも派遣の登録に行ってみよう……。


 こうなったら早い方がいい。


 私はワクワクする気持ちをめいいっぱい感じていた。

 久しぶりの仕事。

 不安もあるけど、間違いなくこれまでの環境とはガラリと変わる。

 これまでとは違ったところに存在する自分がどんなものなのか経験するのが楽しみだった。



 『さぁ……、洗濯物を取ってくるか……』



 私は玄関に置かれたキャリーバッグを取りに行き、洗濯物の仕分けを始めた。

 今回は二泊三日分。

 洗濯物の全てを取り出し、洗濯機へ放り込む。


 洗濯機を置いてある洗面所では、夫が鼻歌を歌いながらシャワーを浴びているのが聞こえてきた。


 何だかごきげんで……。

 まぁ、機嫌が悪いよりはマシかな……。



「亮輔、バスタオル、置いとくよーー」


 そう言って洗面所から出た。



 二人ともお風呂に入り、夫はソファに座りテレビを観て、私はテーブルでスマホを見たり、時には本を読んだり……。


 やっぱりお互いを干渉せず各々の時間を過ごしていた。



「亮輔、明日はこっちで出社でいいんだよねーー?」



「あ、そうそう。 でも、明日夜、ごはんいらない。 部長とお客さんのところに行かなきゃいけなくて、その後そのままお客さんとごはんに行くと思うから」



「わかったーー。 じゃあ、先、寝るねーー」



 明日の仕事の予定を聞いて、まだリビングでテレビを観ている夫より先に就寝。


 これが私たちの普通。


 子供がいたらこんな感じじゃなかったかも知れない。


 でも特にこれを不満とも思わず、ただ当たり前なだけだった。


 先に寝室に入った私は、スマホを開いた。


 毎日見ているSNS。

 そこにはいろんな人がいる。


 どんな生活をしてるんだろう……と思う程セレブな人、凄い上手な書を書く人、商品の紹介をしてる人、収納上手な人……。


 みんな、何か得意な事があって発信してるんだろうな……。


 私には得意な事なんて、人に誇れる様なものも持ってない。


 けれど、そんな私も最近投稿し始めた空の写真。


 それに初めてコメントがついている事に気付いた。

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