疲れた夫婦
「ユウ? ……ねぇ、ユウ!」
夫に呼ばれてハッとした……。
私、何やってたっけ……??
「……あ、ごめん……、何?」
「何?じゃないよ! さっきから呼んでるのに。 明後日急に出張になったから、明日退社後そのまま行くから帰らないよ」
「あ、そうなの? わかった」
「疲れてるの? 早く寝なよ」
「そうだね」
私は洗面で歯磨きをしながら自分の顔を見た。
私って悲しそうに見えるのかな……。
明るく振る舞ってるつもりだけど……。
そういや、空の写真、約束しちゃったな……。
明日朝一応撮っておこうかな……。
撮ってれば何でもいいかな……。
向井さんに言われた事をいろいろと思い出して、また、どっと疲れを感じた。
私はいつもより短いお風呂時間を済ませ、いち早く寝た。
現実から逃げるには寝る事が一番手っ取り早い。
……でも、こんな時でも、スカイさんを思ってしまう。
何やってるのかな……?
元気なのかな……?
私は気持ちをかき消し、寝る事に集中した。
私は昨日は本当に疲れていたのか、眠りが深かった。
夫がベットに入ってきた事も知らなかった。
いつもなら気付くものを昨日は全く気付かなかったのだ。
最近の中ではすっきりと起きれた朝だった。
リビングのカーテンを開け向井さんとの約束を思い出した。
「そうだ……。 空の写真……」
私の目の前に映る空はもうすぐ太陽が昇り明るくなる前で、薄暗い、寂しさの残る色をしていた。
太陽に照らされ明るさを取り戻す空の様に私の気持ちも同じだったらどんなに楽だろう……。
私の気持ちはこの空の様にはまだ明るさを取り戻せないでいる。
スマホを空に向け一枚撮った。
何の思い入れもない一枚。
何でもいいと思っていた空の写真。
けれど、私の気持ちを表すかの様な空の色だった。
「さ、朝の準備をするとしますか……」
私はまた始まる1日の活力になる朝ごはんを作ろうとキッチンへ向かった。
食べなきゃ、ちょっとでも食べなきゃ、元気がない上に更に元気が出ない。
自分でもわかっている。
このまま落ちたままではいけないと。
少しずつ、少しずつ切り替えよう……。
その術を今、模索中だけど、なかなか探さないでいるけれど……。
どうにもならない事と自分がちゃんと受け入れるしかないんだろうな……。
目の前に出来上がっていく目玉焼きの焼ける音を聞きながらそんな事を考えていた。
寝室から夫が出てきた。
今日夜出張の移動日なのに、寝室のウォークインクローゼットの中にあるキャリーケースを持って出てこなかった。
「亮輔、キャリーケース持ってくるの忘れてるよ」
「……あ! ほんとだ……!」
そう言って急いで取りに行った。
出張がこれだけ多いと、必要なものも頭に入っていて、探さないでもすぐ準備できる。
出張期間によってシャツや下着などの衣類の数が変わるだけ。
各都道府県、いろんなホテルに泊るのでホテル慣れもしている。
いろんなホテルに泊まれるのは羨ましい。
非日常な訳だから、楽しいはず!
そう思って一度聞いた事があるが、客先との接待後の遅い時間にホテルに戻る事が多いから楽しむ余裕も時間もない、と言っていた。
それはそれでもったいないなぁと思う。
夫にとってはそれが当たり前になっているらしい。
朝の時間が終わり、私も夫も出勤時間が近付いた。
「じゃあ、行ってきます」
「あ、行ってらっしゃい。 気を付けて。 帰るのって明後日だっけ?」
「……、あ、そうだね。 明後日! お客さんと飲みに行く予定にしてないからそのまま帰ってくる。 時間はいつものの退社時間と同じくらいになると思う」
「わかった……。 ……大丈夫? 亮輔こそ疲れてるんじゃないの?」
キャリーケースといい帰る日といい…‥。
「ほんとだ! まぁ、行ってきます!」
そう言って夫は出社した。
静かになった部屋に残り、残された時間で部屋の整頓をする。
クッションを所定の位置に戻し、夫が読んでいた新聞を片付ける。
「これでよし!」
私も急いで家を出た。




